第20話 シエナの冒険者登録へ! その1

 次の日。

 今日は、シエナの冒険者登録をするというわけで朝日が昇ると共に起床し、道中でミラさんへのお土産として果物の詰め合わせを買ってギルドへと向った。


 ギルドの中に入ると、流石にまだ冒険者達は来ておらず、建物内はガラガラだった。

 受付場まで行くが……まだソフィアたちも来ていないらしい。

 というわけで許可なしでギルド長室のところまで一気に来た。

 お詫びの品は持ってきたし、ちょっと朝は早いがいつもならミラさんはすでにギルドに来ているので今日も部屋の中にいるだろう。

 というわけでドアをノックする。

 しばらくの沈黙の後。『あーい』というような寝ぼけ声と共にドアが開かれてミラさんと対峙する格好となった。


「ミラさん、おはようございます! 今日はお詫びの品を渡しに来たのととシエナの――」


 シエナの冒険者登録をお願いしに来ました、と言いかけたのだが……ミラさんの格好を見て口が止まってしまった。

 なんと、彼女の服装がスケスケのエロエロの寝間着だったのだ。

 ……ふむ。身長は小さく胸も小さい。ただし、顔とスタイルは小さいなりにもいいのでなんともエロい。点数としては……おっと。顔を真っ赤にしてプルプルとしだしたので可愛さも付け加えて九十点で――

 ――バタンッ! 

 ミラさんが扉を勢いよく閉めて部屋の中に閉じこもってしまう。

 いつものミラさんなら、こんなことになったら殴りかかって記憶を消しにかかるだろうにこの反応。乙女の反応ですねぇ〜。

 良き良き!



 三十分後。ノックしても反応がなかったのでずっと扉の前でシエナとお喋りをしながら待っていたら、時間差でミラさんが殴りかかってきて驚いたが、なんとか無事に部屋の中へと入れてもらった。


「エリック。さっきのことは忘れなさい。あと、あのことは今後一切触れないで。分かったわね?」

「……ふぁい……」

「エリック様……大丈夫ですか……?」


 殴られて顔がボコボコになってしまった俺をシエナが心底心配してくれる。

 ……優しさで涙が……って傷口に染みる染みる!

 でも、怪我を負ったのは丁度良かったかも知れない。シエナのヒーラーとしての能力とキャロの能力が実感できるだろうし。


「ふぉれで……みらふぁん、お詫びふぉ品ふぇす」(それで、ミラさん、お詫びの品です)


 手元に持っていた果物の詰め合わせをミラさんに手渡す。


「…………エリック、あんたわざわざこれを渡すためだけにこんな朝早くに私のところに来てくれたの……?」


 いや、朝早く来た理由は、シエナの冒険者登録をいち早くして試しに簡単なクエストを受けたいと思ったからなんだけど……なんかミラさんが感動したような顔をしているからこのまま流れに身を任せよう。


「ふぁい。でふぉ、俺ふぉきふぅかいふぁ足りふぇいなかっふぁみふぁいでふ。ふぎからふぁ気ふぉつけるふぉで許しふぇくれまふんか?」(はい、でも俺の気遣いが足りていなかったみたいです。次からは気をつけるので許してくれませんか?)


 頭を下げてミラさんに謝る。

 まあ、俺をこんなになるまでボコボコにしてきたのは流石にどうかとは思うが、あんなエッチな服を着ていたと男にバレたら女性はこうしたくなるのかも知れないし。それに俺にも非があったし……


「……なんて言っているのか全く分からなかったけど……エリックの気持ちは伝わってきたわ。私もその……ごめんさい。こんなになるまでボコボコにしてしまって……」


 ミラさんが俺に近づいて、俺の顔を涙ぐみながら優しく、優しく撫でてくれた。

 ……気持ちは嬉しいのですが……痛っ! 痛いので……なでるのは……いたぁい! 辞めて欲しい……あぁッ!


 痛みでビクンビクンなりながらミラさんに撫でられること十分。

 ようやく解放、ではなく。いや、解放という表現が一番ふさわしいな。解放してもらって本題に入る。


「ふぃふぉつ目のふぉうけんが済んふぁところふぇ、ふぎの――」(一つ目の要件が済んだところで、次の――)

「エリック、ごめんなさい。私が殴ったのが悪いのだけど、何を言っているのか全く理解できないわ。だから筆談で話してくれるかしら?」


 ……まあ、大事な要件だし、そうするのが一番だろうな。

 というわけで渡された紙とペンを使って文字を書く。


<一つ目の要件が済んだところで、次の要件に移りたいと思うのですがいいですか?>

「ええ。あ、後からヒーラーを呼んでくるわね。そのままでいられると私の罪悪感が凄いことになるから」

<いえ、その必要はないです。この傷は冒険者登録をしてヒーラになったシエナに癒してもらうので。で、要件というのはシエナの冒険者登録をしてもらいたいんです>

「あぁ……なるほどね。良いわよ。もうそろそろ鑑定師もーー」


 ミラさんが言いかけた瞬間、コンコンとドアがノックされた。


「どうぞ」


 ミラさんが返事をすると……ガチャリと扉が開いてメガネを掛けた高身長で如何にも学者っぽい男性が部屋に入ってきた。


「ミラさん。おはようございます。鑑定師ダニエル、定時に――って大丈夫ですか!?」


 俺を見るなりその男性はまさに『びっくり仰天』という顔をした。

 ……時間が経って腫れがひどくなってきたのか、顔の皮膚もパンパンになってきたし、見た目が凄いことになってそう。

 シエナは先程からずっと『もう少しの辛抱ですから! 私が冒険者になったらすぐに治して差し上げますから!』と俺を元気づけるように囁いてくれている。ありがてぇ……

 俺は紙にペンを走らせて文字を書く。


<滑って転んでこうなりました。>

「いや、その見た目だと誰かに殴られたようにしか見えないのですが……」

<『滑って転んでこうなりました。』>

「……そ、そうですか。あなたが言うならそれが事実なのでしょう。疑ってしまい申し訳ありませんでした。お名前はなんと呼べばいいのでしょうか」

<エリックです。>

「そうですか。エリックさん、お大事にして……ん? エリック……?」


 ダニエルさんが何かを考えるような仕草をして……固まる。

 彼がミラさんの顔を見る。ミラさんはコクリと頷く。

 彼は目を見開く。


「――エリックさんってあのエリックさんですか!? 奴隷市場で金貨三千枚を叩いてとんでもなく美人な奴隷を買ったという! あのエリックさん!?」

「ふぉっちふぁい!」(そっちかい!)

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