第13話 いざ秘湯へ! その3

 コシュ……コシュ……コシュ……


 シエナは俺の左腕を丁寧に、往復運動をさせながら洗う。

 それにしたがって、俺の息子の仰角も丁寧に、丁寧に上がっていく。


 ……シエナから俺のアソコの様子も見えているはずだよな……でも、何も反応を示してこない。つまりは、まだバレていない……?

 彼女の方をちらりと見てみると……俺の股間を凝視して顔を真っ赤にしながら腕を洗ってくれていた。

 ……ふむ。バレてますね、これは。

 しかし、黙っているということは弁明をまだするべきではないだろう。

 シエナも気を使って黙っているのかも知れないし。


「で、では……次は前を洗いますね」

「よろしく頼む」


 俺の前に移動する時も彼女は片時も俺の股間から視線を外さない。

 ……なんかこれ、まずくね? え? 今更?


 ペタっと背中を洗うときみたいに優しく両手を胸板に置き、優しく円を描きながら彼女は俺の体を洗い出した。

 おほっ……これは……刺激がやばいですよ……

 息子の仰角が最大の八割を超える。

 

「どう……ですか……」


 シエナが質問してきたが……目線がアレだから俺の息子に話しかけている、みたいな感じになってしまっている。


「うん……すごく良いけど……大丈夫……なのか……?」


 何が、とは言わない。しかし、シエナはそれが何を指しているのか分かってくれたようで


「その……こういうのを見るのは初めてだったんですけど……嫌な感じとかそういうのは……ないです。どちらかと言えば……エリック様のユニークスキルの副作用みたいな……そんな気持ちに……なります……」


 太ももをもじもじとしながら答えてくる。

 ……あ、今、仰角が最大になったわ。

 俺の体を洗うという運動をしたせいか、少し息が上がっており、俺のアソコを見たせいか顔を真っ赤にし、太ももをもじもじさせている。一言で言うのであれば、エッチだった。

 並の男であれば、ここで襲っていてもおかしくはないのだが、俺は鋼の心を持つ男。それに、彼女の嫌がることはしないと決めているのだ。許可が降りない限り絶対にそういうことはしない! 


 胸から腹、腹から一旦足へと行き、足から太ももへという感じでシエナは優しく、優しく洗ってくれる。片時もアソコから目を離さず、モジモジしたままだが。


「あの……ここは……洗っても……?」


 アソコに目線を固定させたまま、何がとは言わないがそこも洗っていいですか? と聞いてきた。

 ……息子の意見としては、是非とも洗ってもらいたいのだが……それをされると自制が効かなくなる自信があった。

 たとえシエナが『いいですよ』と言ったとしても、ここが例え人が来ない秘湯だとしても……空の下、そういう行為は良くない。変な性癖が付きそうだ。

 

「ここは……駄目だ。もう十分だから、先に温泉に入っていいぞ。これ以上はシエナが本当に風邪を引いてしまう」

「……分かりました。では、お先に失礼しますね」


 名残惜しそうにしながらも俺の息子に別れを告げて、一度お湯を体にかけてから温泉にようやく入ってくれた。ふぅ……なんとか一線は越えずに済んだ……よくやったぞ、俺!


 俺も手早く残りの箇所を洗い、お湯をいっぱいかけて体の泡を流す。

 

 一通りきれいになったので。俺も温泉に浸かることにする。

 シエナと少し離れた場所のお湯に足の指につけると……ああ……体が勝手に……

 あれよあれよという間に体が温泉の中に入ってしまった。

 いやー、ぬるいはぬるいんだが、気持ちがいいぬるさなんだよなぁ……

 長時間入ってものぼせないし、周りは木ばっかりだが……それもそれでいい感じだし……


「どうだ? この温泉は」

「すごく良いと思います。それに、なんだか浸かっているだけで体が元気になっていくような、そんな気がしますね」


 ……ほう、そういう感覚がシエナにもあるのか。


「鋭いな。この温泉のお湯、なんと体力回復、怪我を直してくれる効果があるらしいんだ」

「そうなんですね! すごい温泉に連れてきて下さりありがとうございます!」


 お湯に浸かりながらシエナが頭を下げてくる。

 まあ、偉そうに言っているけど、俺はこの温泉に浸かった時は何も感じなかったのだがな。

 シエナと同じようなことをミラさんが言って、気になるからってギルドでこの温泉のお湯を調べて……判明したっていう流れだ。

 え? ミラさんと一緒に温泉に入ったのかって?

 俺は一緒に入りたかったのだが、冗談でそういうことを言ったら張り倒された。


 チャプン……チャプン……


 お湯が揺れて縁に当たる音がする。

 なんか、いいな。こういう雰囲気。ずっと浸かっていたい。

 シエナの方をちらりと見ると、彼女と視線があった。

 彼女は髪の毛がお湯に浸からないように上手いこと髪を結って、お団子ヘアみたいな感じにしている。

 ……なんか色っぽいな……

 目線が釘付けになっていると


「あの……エリック様。近くに行っても……よろしいですか……?」


 なんともいじらしい事を聞いてきた。


「いいぞ」


 俺が拒否するわけがないだろうに、わざわざ聞いてくるなんて……こういうのすっごく良い!


 シエナはお湯に使ったまま、俺の傍に寄ってきて腰をおろした。

 これは、ちょっとしたことで肩が触れ合ってしまうような距離だな……少し近すぎるような気がするが……まあ、いいか。


 邪念を振り払うために赤くなってきた空を眺めていると、シエナが話を振ってきた。


「その……さっきは申し訳ありませんでした。エリック様が止めてくれと言っていたのに我を押し通してしまって……それに、その……アソコを凝視してしまって……」


 ……シエナが謝る必要なんてないのに……というか、俺が謝るべきことだろう。


「俺の方こそ……シエナを見ていると……その……抑えきれなくて……申し訳ない!」


 彼女の方を向いて、頭を下げる。

 主人としては中々に畜生かも知れない。

 襲いはしないし、犯してもいないが……ある意味、それに類する行為しているようなものだったし……

 やらかしたな……と思っていると、シエナが慌てたように頭を上げるように言ってくる。


「そんな! エリック様が謝る必要なんてないんです! その……実は……さっきのは……エリック様が興奮してくださるように、わざと胸を見せたり……そういうようなことをしていた……のです」


 頭を上げると、少し怯えたような感じでシエナがおずおずと口を開いていた。

 ……ん? ……わざと……? どういうことだ?


「なんでそういうことをしたんだ? いや、これは責めているわけじゃなくて、俺にとってはメリットしか無かったんだけど……」

「…………私は……奴隷です。ですが……エリック様は私にとても優しく接してくれます。まるで普通の人と接するみたいに……」


 ……確かにシエナは奴隷だ。昨日、俺が酔っ払った勢いで買った奴隷だ。

 でも、俺はシエナを奴隷だとは思っていない。対等な人として接している。まあ、若干『本当に……?』となるようなところもあるとは思うが……

 話を遮ること無く、シエナの言葉を待つ。


「そのことは本当に嬉しいです。エリック様が私を奴隷としてではなく、一人の女性として見てくださるのであれば、私も自分の事は奴隷だとは言いません。思いません。女性として……エリック様の女性としてこれから生きていきます」


 シエナは本当に嬉しそうな顔で俺に話をする。

 昨日の今日でそんなことを思ってくれるなんて……嬉しい話だ。

 というか、『俺の女性として』ってことは、彼女とか妻としてこれから一緒に暮らしてくれる、ということか……?

 くそッ、確認したい。そういうことなのかと確認したいが……もし『いえ……ものの例えで……』なんて言われたらと思うと……聞けない……!

 度胸が欲しい……と思いながらも、シエナに耳を傾ける。


「ですが……これではエリック様が私に与えてくださるばかりで、私からは何もお返しができません。ただ、私は財産も力も何もありません。ですから、その……ありきたりな結論ですが……体で……お返ししようかと……」


 シエナは段々としゅん……としたような感じになっていった。

 個人的には、シエナは俺のユニークスキルの弊害を知ってもなお傍を離れないでくれたし、俺の事を嫌わないでくれたし……一緒にいてくれるだけで十分俺が彼女に捧げたものを返してもらっているんだが……

 ただ、ここで『そんなことないぞ。一緒にいてくれるだけで十分だ』と言っても、優しい彼女のことだから表では『ありがとうございます』と言ってくれるだろうが……今後そのことをずっと気にするかもしれない。

 となると……なにかシエナが俺に『お返しができた!』と思えるような、そんなことをしてもらう必要がある。

 シエナは体で支払うと言っていたが、それは駄目だ。そんなことをしたら、主人と奴隷の関係から何時まで経っても抜け出せなくなると思う。

 となると……家に帰ってから彼女に提案しようとしていたアレが一番良いだろう。よし、タイミングも良さそうだし、今言っちゃうか!


「シエナの気持ちは分かった。俺も、『気にしないでいいから』とかは言わない。というわけで、そういうことを気に病んでいるシエナに俺からのお願いなんだが……俺と一緒に冒険者をしてくれないか? まあ、発情してしまうからまともに戦えないかも知れないが……もしかしたらシエナのユニークスキルが『発情無効化!』みたいな奴かもしれないだろ? それに、一緒にクエストとか受けてくれるだけで嬉しいし……」


 正気を疑われるかも知れない提案をする。

 そんな都合が良いユニークスキルが彼女にあるわけがない? いやいや、自慰を知らなさそうなシエナだったら分からないぞ。それに、見てる感じ少し自分の性欲に対して耐性があるっぽいし。

 それに、もしそんな便利なスキルがなかったとしても、彼女とユニークスキルを使わなくて済むような、例えばモンスターを討伐する以外のクエストを一緒に受ければいいだけの話だ。収入はガクンと減るが……貯金はある程度あるし、当分の間は過ごしていけるだろう。

 どうだろうか……? とシエナの顔を見てみると……満面の笑みをしながら目に少し涙を浮かべていた。


「何から何までありがとうございます! 少しでもエリック様の思いに答えられるように頑張りますね!」


 うんうん! 期待しているぞ!



 いい感じに話がまとまった後。

 時間もちょうど良かったので温泉から上がり、街に戻ることにした。

 このままもうちょっとここにいて、シエナが奴隷になった経緯について聞くのも良かったのだが……まだ空が明るいうちに街まで戻っておきたかったのでやめた。それに、夜に出てくるモンスターは昼と違って強力で、もし会敵してしまうと非常にややこしい事態になる。

 空が完全に赤くなる前に余裕をもって街に戻る。これは初心者の冒険者が一番最初に学ぶことでもあるのだ。

 あと……彼女のデリケートな部分の話になるだろうから、どうせなら彼女が自分から俺に話をするのを待つ方がいいと思ったというのもある。急いで聞く必要性もいまのところないしな。



 服を着て、再び温泉に大きな葉っぱを編んだ被せものをし、荷物を持ってシエナと共に帰路につく。

 どこから襲ってこられてもいいように警戒をしていたが、帰り道もモンスターに会敵することなく街へと無事に戻ることが出来た。


 一息ついて、さあ服を見て回ろうと思ったのだが……空が赤くなり始めた。

 今から見て回ることも出来なくはないが……明日に回すか。

 日が落ちきったら店は閉まってしまうし、出来ることならじっくりとシエナに似合う服を選んであげたい。

 それに、今日は朝からギルドに寄って、クエストを受けて、温泉に入るという、シエナにとっては忙しくて初めてのことばっかりだっただろうし、疲れているかも知れない。

 そうと決まれば……帰るか。

 というわけで、俺とシエナの今日一日の活動はこれにて終了した。

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