第310話 対抗する力
人間と魔人族のハーフ。
魔族六将のひとりで、今は新たな魔王として君臨した氷雨のシューヴァルには、信じがたい過去が隠されていた。
どちらの世界でも、その存在は認められず、唯一の味方であるはずの両親とも早くに死別した。それから、実力主義の魔王軍へ見を寄せた。
そして、死に物狂いで強くなり――今の地位を得る。
ヤツにとって、それまで不幸の火種でしかなかった「人間と魔人族のハーフ」という事実は、魔剣と聖剣の両方を扱えるという恩恵を与えたのも大きかった。
「聖剣の持ち主は枢機卿が決めるというので、てっきり君の師匠に与えられるものとばかり思っていたが……まさか、よりにもよってあの出来損ないに与えるとは」
ため息をつきながら語るシューヴァル。
それは、ヤツにとって大きな誤算であった。
というか……聖剣の持ち主を枢機卿が選ぶってことは、あの剣は扱おうと思えば誰でも扱えたというわけか。それを、国からの信頼が厚い枢機卿クラスの人間が管理し、相応しい人物に与える、と。
だが、ベシデル枢機卿は、純粋に実力を見て聖剣の持ち主を選んだのではなく、自らの利益を考慮してガナードを選んだ。となると、ガナードは元々教会関係者だったのかもしれないな。
――って、今はそんな考察どうでもいい。
肝心なのは、どうやってヤツを倒すか、だ。
「魔剣一本で立ち向かうか……」
シューヴァルは、俺の戦意が失われていないことをすぐさま察知した。ここであきらめるようなら、最初から魔界なんて物騒なところへ足を運んだりはしないからな。
ここが正念場なんだ。
ヤツを食い止めなければ、すべてが終わる。
それを胸に刻み込み、俺は魔剣を構えた。
「《焔剣》――フレイム・ブレイド」
魔剣によって生みだされた炎は、真っすぐシューヴァルを目指して飛んでいく――が、
「小賢しい」
左手に持った聖剣から水魔法が発動し、俺の炎魔法を消し去る。さらに、それと同時に右手の魔剣から雷魔法が俺に向かって放たれる。
向こうは、俺と同じ動作をしながらも、一度に二度の攻撃を放たれる。
それだけでこちらは圧倒的に不利な状況へと陥る。
「!?」
ヤツの放つ雷魔法――ダメだ。
よけきれない。
無駄な抵抗とは分かっていながらも、俺は両手をクロスさせて防ごうとする。
その時だった。
バチッ!
激しく何かがぶつかり合う音。
ひとつはシューヴァルの雷魔法で、もうひとつは――
「大丈夫ですか、アルヴィン様!」
「シェルニ!?」
シェルニの防御魔法によって発動した、魔力の込められた半透明のシールド。これがシューヴァルの雷魔法を防いだのだ。
さらに、
「なかなかおやりになるようですが――御三家一の魔法使いとしては、あなたを放っておけませんね」
「事情には同情できる部分もあるけど……だからって、あたしたちの住む世界を好き放題にされちゃ困るからね」
「みんなが安心して暮らしていくために!」
「私も微力ながらお手伝いします」
フラヴィアが、レクシーが、ザラが、ハリエッタが――強い眼差しでシューヴァルを睨む。
……そうだ。
俺にあって、シューヴァルにないもの。
これが――切り札となり得る!
…………………………………………………………………………………………………
新作を投稿しました!
「風竜の力を宿した少年は世界最強の風魔法使いとなる。」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/559352328/573593304
https://kakuyomu.jp/works/16816927860199657582
コンテスト用なので5~6万文字ほどの中編を予定しています。
よろしくお願いいたします!<(_ _)>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます