第288話 戦う意志
ギルドの応接室で、今後の方針を話し合うことになった。
――その前に、ブライス王子がローグスク王国の騎士であり、今回助っ人として駆けつけてくれたコナーさんへ感謝の言葉を述べた。
「ありがとうございました。あなた方がいらっしゃらなければ、どうなっていたか」
「いえ、こちらにはシェルニ姫様もお世話になっていますし、魔王討伐について何かお力になれればと思ってこちらへ来たわけですが……まさかあのような状況になっているとは夢にも思いませんでした」
そう語るコナーさんだが、あのタイミングでの増援は本当にありがたかったよ。
なんとか窮地を脱することができたダビンクだが、気になるのは騎士団からの応援がなかったことだ。特にブライス王子はその点を気にかけていた。
「リシャールが何を企んでいるのか分からないが……この町が窮地に陥っているという事態は耳に届いているはずなのだが」
戦いが終わった今も、エルドゥーク騎士団がダビンクに顔を出すことはない。
廃墟と化したこの町は放置されたままだった。
「魔界への総攻撃が近いとはいえ、ここが占拠されてしまえば戦況は大きく不利になるというのに」
ザイケルさんも表情を歪めながら言う。
もし、魔界への総攻撃を優先したとなれば、このダビンクは騎士団に見捨てられたということになる。この事実は、実際にダビンクで暮らしている俺たちにとっては大きな衝撃となるだろう。
その王国騎士団は、各国の主力を中心に編制された連合軍として魔界へ乗り込もうとしている。ブライス王子は、それについて自身の考えを述べた。
「俺は……リシャールとは違った戦力で魔王に挑もうと考えている」
「「「「「!?」」」」」
緊張感が応接室を包んだ。
ブライス王子が考えている、連合軍とは違った戦力――その中枢を担う戦力は、
「アルヴィン……君には主力として加わってもらいたい」
「! お、俺がですか?」
驚きの声をあげるも、予想はついていた。
しかし……リシャール王子にも同じようなことを言われたが、あの時のような嫌な予感めいたものはない。むしろ、彼とともに戦いという意欲があった。それはきっと、短い間とはいえ同じ店で働き、人となりをよく知っているからだろう。
ブライス王子は真面目な人だ。
裏表がない。
王家の関係者はそれを気に入らないとする者が少なくないようだが、俺としてはそういった人間の方が信頼できる。
それに――俺だけじゃない。
シェルニ、フラヴィア、レクシー、ザラ、ケーニル、そしてザイケルさんやコナーさんたちまで、みんながブライス王子とともに戦いたいという気持ちを抱いている――それを背中で感じ取った。
だから、答えは決まっている。
「分かりました。戦います――この世界のために」
静かに、だけど力強く。
俺はブライス王子に結論を告げた。
「!? ありがとう、アルヴィン」
ブライス王子は涙を流して喜んだ。
大袈裟だなと思いつつ、身は引き締まった。
とりあえず、魔界へ乗り込むための方法を考えないといけないな。
まずはその課題に挑むとしよう。
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