第224話 新たなトラブル
リシャール王子の衝撃的な告白から二週間。
あれから、騎士団にこれといった動きは見られない。
恐らく、挙兵のためにいろいろと準備をしているのだろう。あれからもう一度仕事で王都を訪ねたザイケルさん曰く、平常通りに見える一方、騎士たちが慌ただしく動き回っていたらしい。
魔王討伐に向けて本格的な動きを見せつつあるエルドゥーク王国騎士団。
聖剣の力に頼ってすぐにでも飛び出すかと思ったが……リシャール王子は意外と慎重に事を運んでいるようだ。
「大体、王子がわざわざ前線に出る必要があるのか疑問にゃ」
その日、俺は所用でギルドを訪れていた。
看板娘であるリサに用件を伝えようとしたのだが、こちらが語るよりも先に王子と聖剣について愚痴り始めた。
「パパも言っていたけど、やっぱり政治利用する気しかないように思えるにゃ」
「それでも本当に魔王を倒してくれるなら、これ以上に喜ばしいことはないよ」
「確かに……そのおかげでアルヴィンが危険な目に遭うこともなくなるわけだし……でもなんだか納得いかないにゃ!」
リサは理屈では分かっていても、気持ちがついていかない様子だ。
――それは俺も同じだった。
リシャール王子は魔人族との対戦経験はない。
デザンタ、レティル、アイアレン――これまで戦い、勝利してきた魔族六将たちは、いずれも強敵だった。魔剣の力でなんとか退けてきたが……魔王を討伐する前に、実戦経験の乏しいリシャール王子に残り三人となった魔族六将が倒せるのだろうか。
とはいえ、その魔族六将にも動きが見える。
いわゆる内乱の可能性が浮上してきたってことだ。
事の発端はお宝アイテムが出現する新しいダンジョンの調査中。
魔族六将のひとりである《焔掌のガルガレム》の側近であり、ケーニルにとっては魔王軍時代に世話になった幹部・ザイーガが同じ魔人族によって殺された。
魔人族同士での殺し合い。
これはまさに内部で易々とは解決しない、かなり大規模なもめ事が起きたことを示唆していた。
リシャール王子たち王国騎士団は、この隙をつくことで、魔王軍を一気に崩壊させようと考えている。
その作戦自体は悪くないと思う。
魔王軍がこちら側を誘いだそうとしている罠って線も考えられなくはないが、直接ザイーガの死に遭遇した者の目から見るに、あれは到底演技とは思えない。
いずれにせよ、様子見をしながら事態を把握しようとしているリシャール王子は、ガナードよりやれそうかなって気はしている。
「そういえば、今日他のみんなは?」
「女子会だ」
「女子会? それって、女の子たちだけで集まってワイワイやるっていう?」
「それだ」
「へぇ、いいなぁ……私も参加したいにゃ!」
「場所はダンジョンだぞ?」
「えぇ~……それ女子会って言うのかにゃ?」
「レクシーは豪語してたぞ」
「女子絡みおけるレクシー基準は信用ならんにゃ!」
レクシーの女子力に対する信頼度低いな。
――と、その時、
バン!!
ギルド入口にあるドアが物凄い勢いで開け放たれた。
そこに立っていたのはおよそこの場には似つかわしくないドレス姿の小太りマダム。
「だ、誰にゃ?」
「……冒険者でないことは確かだな」
そんな言葉が聞こえたのか、マダムと目が合った。
そして、優雅さも気品さも感じられない大股でこちらへと近づくと、手にしていたバッグを近くのテーブルに叩きつけた。
「一体何なのよ、これは!!」
かなりお怒りのマダムだが……それはむしろこっちのセリフだ。
「えっ、えっと、一体どうされたんですにゃ?」
「この店で購入したというこのバッグについてよ!!」
必死に対応しようとしているリサへ、マダムは怒りをぶちまけている。
どうやら、マダムの怒りの原因は叩きつけたバッグにあるらしい。
一体、何があったんだ?
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