第208話 周囲の評価

 新たに発見されたお宝ダンジョン。 

 その真相を確かめるべく、あと、差し入れをプレゼントするため、俺はうちでダンジョン絡みの案件を担当しているレクシーとケーニルを連れて調査を行っているザイケルさんのもとを訪ねることにした。


 確か、昨日店に来た冒険者の話だと、ダビンク近くの森にある滝の裏側がダンジョンにつながっているらしいが――

 

「おっ? あったぞ! きっとあれだ!」


 レクシー、ケーニルと共に森へ入ってから三十分後。

 ようやく目的の滝を発見する。

 周囲には同じような目的で集まったと思われる冒険者っぽい連中もいたことから、まず間違いなくあの滝が件のダンジョンの入口で間違いなさそうだ。

 すると、

 

「お、おい、あいつ」

「おぉ……例の魔剣使いの商人か」

「あの男が動くってことは、やはりここは噂になっているお宝ダンジョンか?」


 俺たちの姿を発見した冒険者たちは、何やらヒソヒソと話し始めた。

 

「やれやれ、有名人は辛いわねぇ」


 そう言って肩をすくめるレクシーだが、


「でも、なんだか嬉しそうだよ、レクシー」

「は、はあ!?」


 ケーニルからの指摘に、大きく取り乱すレクシー。分かりやすすぎるぞ。

 しかし、あまり浮かれてもいられない状況だ。

 下手にマークされても困る。

 ――とはいえ、デメリットばかりでもない。

 何より、店のいい宣伝になっている。

 これに尽きるな。


「さあ、そろそろ行こうか、ふたりとも」

「「はーい」」


 周りの視線を気にしつつ、俺たちは滝へと近づいた。


「け、結構大きいわね……」

「ああ……それに、水の勢いも強いな」


 改めて滝を間近から眺めると、その迫力に思わず閉口してしまう。至近距離から、大自然の驚異ってものを味わえるな。

 意外だったのが、ケーニルの反応だった。


「…………」


 特に言葉を発することなく、ジッと滝を見つめるケーニル。


「どうかしたのか、ケーニル」

「えっ? あ、う、うぅん。ただ……凄いなって」

「凄い?」

「だって、これって自然に作られたものなんでしょ? 誰の手も加えられていないのにこんな凄い物が勝手にできるなんて……」


 俺たち人間には見慣れた滝であっても、魔人族であるケーニルにとっては衝撃的な光景だったようだ。魔界には、こうした自然物はないのだろうか。行ったことがないのでなんともいえないが……別の意味で、その存在に興味を持ったよ。


 俺たちがしばらく滝を眺めていると、


「お待ちしていましたよ」


 突如、背後から声をかけられた。

 振り返ると、そこには見知った顔が。


「ネモ!」

「へへへ、ザイケルさんに頼まれて旦那たちを迎えに来たんですよ」


 俺たちと親交の深い商人ネモであった。


「まさか君まで絡んでいるとはね」

「それだけ、ザイケルさんは本気ということですよ」


 さらに言えば、ザイケルさんにとって相当魅力あるダンジョンなのだろう。

 いや、あの人が魅力的と認めたのなら、俺たちにとってもきっと同じくらいの価値を見出せるダンジョンだと思う。

 これは楽しみが増えたな。


「ダンジョンですが、この滝の裏にある洞穴の先にあります」

「なんだ、この滝の裏が入口というわけじゃないのか」

「えぇ。もう一段階あるんですよ。そろそろ、ダンジョンからザイケルさんが戻ってくるはずです」


 タイミングバッチリだな。

 俺たち四人は滝の裏へと回り、そこにポッカリと開いた穴を通ってダンジョンの入口があるという場所へとたどり着いた。


 四方を高い岩壁に囲まれた狭い空間。

 そこに、遠征用のテントが三つ並んでおり、冒険者たちが何やら打ち合わせを行っていた。


 ここが……新たなダンジョンの玄関口ってわけか。

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