第192話 お風呂で大騒動【シェルニSide】
シェルニが部屋に戻ってくる数十分前。
共同浴場(女湯)にて。
「っは~♪ 最高ぉ♪」
頭に手ぬぐいを乗せてビージャン村名物の温泉を堪能するレクシー。
その後から、シェルニとザラ、そしてフィーユが入って来た。
「あれ? フラヴィアさんは?」
「フラヴィアなら、あそこで体を洗っているわよ。あなたたちも、こういった共同浴場では――」
「湯船に浸かる前に体を洗うのがマナーなんですよね」
「正解♪ ――うん?」
シェルニたちに体を洗うよう言った直後、レクシーは何かに気づいて湯船から立ち上がる。
「? レクシーさん?」
無言のまま、レクシーはシェルニたちの横を通過し、向かった先は――フラヴィアのもとだった。
そのフラヴィアは体を洗っていて、背後にレクシーが立っていることにまるで気づいていない。
そして、次の瞬間、
「フラヴィア、また大きくなった?」
「ひゃあっ!?」
レクシーは後ろからフラヴィアの胸を鷲掴みにする。
「な、何ですの!?」
「まあまあ♪ いつか誰かにこうされるんだから、
「だ、誰かにって……」
「あっ! 今アルヴィンを想像したでしょ!?」
「な、なぜそれを――い、いえ! 断じてそのようなことは!」
「安心して、フラヴィア。今度それとなくアルヴィンに伝えておくから。フラヴィアが後ろから胸を鷲掴みにされたがっているって」
「そんなこと思っていませんわ! というか、指を動かさないでください!」
「「…………」」
レクシーの唐突なセクハラ攻撃に、フィーユは呆然自失。
一方、シェルニは以前被害に遭っているので、今は幼いザラの目に触れないよう手で目隠しを行う冷静な対応をとっていた。
「あ、あの、何も見えないのですが……」
「ザラちゃんにはまだちょっと早いかなぁって」
苦笑いを浮かべながらそう告げたシェルニ――が、その話がレクシーの耳に入り、次のターゲットとして狙われることに。
が、
「っと、シェルニはこれからなんだから、先に私が傷物にするわけにはいかないわね」
そう言って、ワキワキと動かしていた指を止めて湯船に浸かる。
「あ、あの、これからというのは……」
恐る恐るシェルニが尋ねると、レクシーはニヤリと笑う。
「決まっているじゃない! せっかくアルヴィンと一夜を共にする権利を引き当てたんだもの。やることやっちゃいなさい!」
「や、やることって!?」
一瞬にして顔が真っ赤になるシェルニ。
そこへ、ふらつきながらもなんとかセクハラ攻撃から復活したフラヴィアが、湯船に入りながらフォローを入れる。
「まったく……適当なことを言って。シェルニさんが困っているでしょう?」
「私は割と本気だったけどなぁ」
「ともかく! シェルニさん」
「は、はい」
フラヴィアは優しい目つきと口調でシェルニへと語りかけた。
「このメンバーの中では、あなたが一番アルヴィンさんとの付き合いが長い――昔はふたりきりで過ごすことが多かったのに、今はゆっくりお話しする機会もないでしょう?」
「フ、フラヴィアさん……」
フラヴィアは気づいていた――いや、からかってこそいたが、レクシーもシェルニの気持ちを分かっている。
「まあ、今日くらいはアルヴィンを独占してもいいんじゃない?」
「シ、シェルニさんって……そうだったんですね……」
フィーユはふたりとのやりとりを通じて、シェルニのアルヴィンに対する想いを知る。
「フラヴィアさん……レクシーさん……」
シェルニはふたりの配慮が嬉しかった。
ふたりだって、本当はアルヴィンと一緒にいたいはずなのに――そう思うと、なんだか申し訳ない気持ちが出てきて、たまらず涙が浮かんでくる。
「もう、何泣いているのよ」
「そうですわ。せっかくの可愛い顔が台無しですわよ?」
当のふたりは穏やかな表情で涙を拭うシェルニを見つめる――と、
「わあっ! すっごい大きいお風呂!」
遅れてケーニルがやってきた。
「「「「「!?」」」」」
その場にいた女性陣は魔人族ケーニルのスタイルに釘付けとなる。
「あ、あれ? あの子って、あんなに物凄いスタイルだったかしら?」
「わ、私よりも胸が大きく……それでいて腰回りのお肉が……」
「! フラヴィア!? しっかり!」
その規格外に整ったスタイルを目の当たりにしたフラヴィアは湯に浸かりながら気絶してしまい、レクシーによって救出されたのだった。
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