第119話 激戦! そして……
炎をエサとする火食い草。
それが全部で五つ。
完全な炎属性対策――だからといって、こいつらに意識を向けていると、レティル自身が攻撃に参加してくるってわけか。
自らが積極的に戦闘へ参加するデザンタとは違い、レティルはプラント・ゴーレムや火食い草など、従者を率いて戦うタイプらしい。
だからといって、決して本体の実力が劣るとは言えないだろう。
現に、今もレティルからは凄まじい魔力が迸っている――が、どういうわけだろう……デザンタの時のような、張り詰めた息苦しさのようなものは感じない。
「アルヴィンさん! あの植物はわたくしが対処しますわ!」
それはフラヴィアも同じだった。
デザンタ戦はまともに体が動かなかったフラヴィアだが、今は自ら進んで戦闘に参加できている。
「はあっ!」
フラヴィアは火食い草に対して氷魔法を発動。
何本もの氷の矢が、一体の火食い草をズタズタに切り裂いた。
その活躍を見届けてから、俺はレティルへと突っ込む。
「っ! こいつ!」
レティルは棘のついた蔓を手にすると、それを鞭のように扱う。これがヤツの主戦武器らしい。
厄介な武器だが、動作も大きく隙が生じやすいという側面もある。そもそも、動きがぎこちないというか……
「!?」
相手の動きの不自然さに疑問を感じた俺は一旦足を止めて後退。
……いくらなんでも隙が大きすぎる。
まるで、こちらを誘い込もうという動きに見えた。
「へぇ……さすがに慎重ね」
俺が退いたことに不満げな声を漏らすレティル。……やはり、罠だったか。
「さすがといっておくわ。――けど、それも無駄な足掻きよ」
「何?」
レティルは先ほどまでと違って自信に溢れた表情をしていた。
……いや、ちょっと違う。
恐らく、本来の実力を発揮しているからこそ、あそこまで自信たっぷりなのだろう。さっきまでは俺たちを見下していたからな。意識が変わったってことか。
「いけっ!」
カッと目を見開いた瞬間、強烈な魔力が弾け、前方に大きな魔法陣が現れた。
そして、
ゴゴゴゴ――
地鳴りのごとき不気味な音が響き渡る。
「これは……」
「ふふふ、後悔しても遅いわよ。でも、こんなところでこの子を呼び起こすことになるなんて夢にも思っていなかったわ――褒めてあげる」
相手はすでに勝った気でいるが……一体なんだ?
やがて、その自信の根拠ともいうべきモンスターが姿を現した。
「キシャアアアアアアア!!!!」
デカい。
プラント・ゴーレムなんて比じゃないぞ。
植物で構成された巨人。
そいつは握り拳を作ると、真っ直ぐ俺へと振り下ろす。
「うおっ!?」
ズシン、と重量感のある音と衝撃が周囲に轟く。見た目通り、パワーは十分だが、それに加えてスピードもある。力でゴリ押ししていくタイプではないらしいな。
「さあ、ここからが本番よ!」
呼びだした植物巨人の肩に立ち、腕を組んでこちらを見下ろすレティル。すっかり気をよくしているな。
「アルヴィンさん!」
火食い草の処理を終えたフラヴィアが駆けつける。
これで二対二――仕切り直しだな。
「たったふたりでここまで戦えたことは称賛に値するけど――デザンタの仇であるあなたたちは絶対に許さないわ!」
「その口ぶりですと……砂塵のデザンタとは恋仲だったようですわね?」
「…………」
レティル、沈黙。
あれ?
てっきりそうなのだと思ったけど……もしかして、違うのか? 少なくとも、レティルの方は特別な意識があったようだが。
「そんなことはあなたたちに関係ないわ!」
無理やり誤魔化したな。
なんだか変な空気になったが、気を取り直していこう――と、魔剣へ再び魔力を込めている時だった。
突如、俺たちとレティルの間で爆発が起きる。
どうやら、階下から「何か」が突き破ってこの部屋まで来たらしい。
待てよ。
階下って言ったら、ケーニルとカンナが戦闘している場所じゃないか。
「ケーニルなのか!?」
叫ぶも、返答はない。
だが、よく見ると、床に誰かが倒れている――それは、
「うぅ……」
カンナだった。
ということは――ケーニルが勝ったのか?
直後、俺たちは倒れているカンナから少し離れた位置に立つケーニルの姿を発見する――だが、
「…………」
明らかに、ケーニルの様子がおかしい。
一体、何があったんだ?
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