第109話 対策
「新しい魔族六将か……」
これはまた、ややこしい展開になってきた。
つい先日、砂漠のデザンタを倒したばかりだっていうのに……もう次のヤツが来たっていうのか。
ダンジョンであの植物に触れてから懸念はしていたので、派手に驚くことこそなかったが、精神的にぐったり来る案件ではある。
「もしかしたら、六将のうちのふたりが同時に来ていたのではなくて?」
「そうだよ」
フラヴィアが尋ねると、ケーニルはあっさりとそれを肯定。
「魔王様に命じられて、デザンタ様とレティル様のふたりが人間界へ送り込まれてきたんだよ」
「他に六将がいたなら教えなさいな!」
「聞かれなかったからね~」
まあ、その点はケーニルの言う通りだな。
……その情報の信憑性は定かでないが、ケーニルの態度は俺たちを騙そうとしているようには思えなかった。今となっては魔族に未練はないようで、これから人間との生活を楽しみにしているケーニルだから、きっと正確なものだろう。
だとすると、
「魔族六将が来ているなら、騎士団に知らせた方がいいな」
「それは確かに――って、どこへ行くんですか!?」
シェルニに呼び止められて、別荘の玄関に向かっていた俺の足は止まる。
「今からダビンクへ戻る。ネモに知らせて、すぐに騎士団へ連絡を取らないと」
魔族六将が相手となる可能性があるなら、本来は救世主――ガナードの出番だ。
デザンタの件で騎士団のモチベーションは上がっているだろうし、今ならより大規模な軍勢を率いて深緑のレティルに挑めるはず。
「それがいいですわね。相手の本拠地がどこにあるかはまだ分かりませんが、少なくとも異変のあったあのダンジョンはここからすぐ近く……わたくしたちの生活圏内ですものね」
フラヴィアの言う通り、あの植物がその深緑のレティルってヤツの仕業なら、あの砂漠の村のように、ダビンクが狙われる可能性が高い。
「……もしかしたら、また戦うかもしれないわね」
「た、戦うって、魔族六将とですか!?」
驚いていたのはザラだ。
そういえば、ザラには俺たちが砂塵のデザンタと戦っていたことを知らなったな。
――というわけで、ザラに砂塵のデザンタとの戦果報告をすると、あまりにも想像を超えた内容だったらしく、しばらく口をパクパクしながら驚愕していた。
復活するまで時間がかかりそうなので、とりあえず俺とレクシーのふたりでダビンクへと戻り、騎士団へ報告をすることになった。
「みんなはここにいてくれ。フラヴィア、頼んだぞ」
「任されましたわ」
シェルニやザラをフラヴィアへ預け、俺とレクシーはランプを手に馬車へと走った。ここにはエリンさんもいるし、心配はないだろう。
外で御者と打ち合わせをし、荷台に最低限の荷物を積んでいると、
「また……戦うことになるのかな」
不安そうに、レクシーがそう呟いた。
「本職は商人でいきたいが……仮に、ケーニルの言う通り、デザンタと共にこの人間界へ来たもうひとりの六将の仕業だとしたら、俺は戦おうと思う。ダビンクは俺の――いや、俺たちの家がある場所だからな」
「……そうだね」
小さな声で答えたレクシーだが、そこに不安は感じさせない。
むしろ「やるしかない」という決意の強さが伝わってくる。
……頼もしくなったな。
これなら、新しい六将と戦うことになっても、心配はなさそうだ。
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