――二幕 心の陰


 諸事情で中学の時の友達が居ないオレは、高校で仲良くなったクラスメイトが唯一の遊び仲間であった。


 その一人がゲイザー。初対面で星を見るのが趣味と言い、スターゲイザーと呼んでくれと言ったのが切っ掛けだ。こんなあだ名だが、神奈川生まれの日本人だ。


 もう一人がジャッカス。こんなあだ名だけど、東京生まれの日本人。


 おまけにクラスで一位二位を争うイケメンだ。オレみたいな腕の太い筋肉と違って、中学の時にバスケで鍛えたアイツは細マッチョだ。


 身長だって百八十近くて、顔つきもバンドマンのようなワイルド系の二枚目だ。性格はお調子者で自己中心的なきらいはあるが、芯は熱くて自分を曲げないイイ男である。


 去年のバレンタインなんか、演劇部に紙袋を貰いに行く羽目になった程、プレゼントをもらっていた。


 何故、演劇部に紙袋があることを知っていたのかというと。文化祭の時にその面を生かされて、部員でもないのに主役を張らされた経験がある。


 まるで少女漫画の主人公のような奴だから、クラスの女子にも上級生にも人気がある。


 そんな主人公をジャッカス呼ばわりし始めたのは、当たり前だがオレとゲイザーだけだった。


 切っ掛けはゲイザー以上に下らないもので、「ゲイザーとかいうカッコイイあだ名を俺にもつけろ」と言ったので、オレが思いつきでつけただけだ。


 ゲイザーがその意味を知らなかったように、ジャッカスも同様だった。ただ、響きが気に入ったのだろう。意味を知った今でも、ジャッカスを呼ばれるのをお気に召していた。


 ただ、仕返しはあった。


 ジャッカスがその理由を知った次の日から、ミナユキであるオレのあだ名は「みいなチャン」となった。


 クラス一のイケメンがそう言うもんだから、その日から他のクラスメイトからも呼ばれるようになってしまったのであった。


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