第489話 創作物の正しい在り方

 創作物の正しい在り方とは、現実とリンクした形だと思います。


 たとえば、映画館に映画を観に行って、面白くて、それで、ああ、束の間の現実逃避ができた、明日からまた現実と向き合わなくては、と感じるようであれば、それは映画の正しい在り方ではないということになります。正しい、正しくないというのは、個人的な判断にすぎませんが、自分の考えとしては、創作の世界と現実の世界が切り離されている点に問題がある。創作がそれだけで完結してしまっているのです。


 創作の世界と現実の世界を混同しろ、といっているのではありません。創作の世界と、現実の世界を、リンクさせるのです。だから、上記の例でいえば、たった今観た映画を現実の一部として認識するのでなくてはならない。そこで得られた発見や感動を、所詮作り話だから、と投げ捨てるのではなく、丁寧に両手で掬っておいて、自分にもこういうことができるかもしれない、ああいうふうになれるかもしれないと、そう考えるための勇気を与えてくれるものとして、丁寧に梱包された状態で保存しておくべきなのです。


 映画に限らず、創作物であれば何でもそうだと思います。作り物だから、と切り捨てずに、作り物でも、と包容する勇気がまずは必要になりますが、それができる人は少ないかもしれません。

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