第444話 生きたいから生きている

 なぜ生きているのか、という問いの答えは、生きたいから、である。しかし、この問いに答えても、何にもならないし、問うことは素晴らしいが、答えることにはあまり意味がない。


 なぜ生きているのか、と考える前までも、我々は生きていた。それは、生きていた方が良い、という前提があったからである。つまり、生物に施されたプログラムとして、無意識的にそう考えていた。少なくとも、生きている方がポテンシャルは高いと、生き物は皆信じているのである。そうでなければ、とっくの昔に死んでいて良いはずである。


 正確には、生きたいからというよりも、死にたくないから、と言った方が正しいかもしれない。もっと正確に言うと、死にたくないからではなく、死ぬ際の恐怖が嫌だからということになる。ここからも、生きている方がポテンシャルが高いことが分かる。生きていなければ、そもそも恐怖を感じることすらできない。


 死んだらどうなるのか、生きている者には分からない。分からない方向にあえて進む必要はない。死んだら、死んだことにも気がつけない可能性が高いので、意図的に死ぬようなことはせず、毎日を生きながら、大人しく死ぬのを待つのが良い。

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