第398話 数式は言語に置き換えられる?

 数式には決まった読み方がないので、普通、その人が母語としている言語で読み上げる。少なくとも日本人の場合はそうで、たとえば、「2 + 3 = 5」という数式は、「二足す三は五(だ/である)。」と読む。これは母語の文法に則って読んでいるわけだから、当然、そこに登場する具体的な単語をほかのものに置き換えても、文法的に正しい文になる。上記の例でいえば、「二足す三」を太郎に、五を「学生」に置き換えると、「太郎は学生(だ/である)。」という正しい文になる。


 しかしながら、数式の場合と、それを文法に則って読み上げた文の場合とでは、意味が異なる部分がある。それはイコールが意味することで、数式の「2 + 3 = 5」の場合、この前後関係を逆転させて「5 = 2 + 3」としても正しいが、日本語の「五は二足す三(だ/である)。」という文は正しいとはいえない。たしかに、五は二と三を足すことで求められる数ではあるが、一と四を足しても五になるし、〇と五を足しても五になる。太郎と学生の例で考えるともっと分かりやすい。「太郎は学生(だ/である)。」は正しいが、「学生は太郎(だ/である)。」は正しいとはいえない。


 数式と言語の構造は、似ているようで異なる部分があるようである。

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