第378話 「天才」は侮辱

 「あなたは天才です」と言うことは、最大の侮辱だと考えられる。


 「天才」というのは、生まれつき優れた才能を持っている人のことだから、それ自体は褒め言葉だといえる。しかし、それ故にその人の今までの努力を完全に無視してしまう。「天才」の一言ですべて片づけてしまうわけである。


 現代では、「天才科学者」とか、「天才ランナー」のように使われることで、「天才」という言葉に良いイメージが定着しているが、だからこそあまり意味を考えずに使われているように思える。何も考えずに「可愛い」と連呼するのと同じである。


 すべての人間を調査したわけではないので、あくまで経験則だが、いくら天才といえど、必ず努力はしているし、結局のところは一人の人間であることに変わりはない。上記の例でいえば、いくら科学者の素質を持ち合わせていたところで、そのための勉強をしなければ、そもそも「天才科学者」になることはない。努力なくして成功はありえないというのは、その通りだろう(本人に努力している自覚があるかどうかは別として)。


 したがって、褒めるときは、「あなたは天才です」と言うのではなく、「あなたは秀才です」と言うようにしたい。

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