第218話 傷が優しさを生む

 傷ついたことがある人ほど他人に優しくできるという主張が、理解し難いとする意見がネット上にあった(まるで常時ネットサーフィンをしているかのような発言)。


 個人的には、理解し難くはない。自分は、優しさとは自分を殺して相手に尽くすこと、つまり愛と同じようなものだと考えているが、その優しさを持つためには、優しさがない場合にどれくらい傷つくのかを、経験的に知っている必要があると思う。さらには、相手に優しさがなかったために過去の自分は傷ついたのだから、今の自分が他者に優しくすれば、それが循環して未来の自分にも返ってくると容易に考えられるようにもなる。要するに、自分にとっての利益が生まれる状況を、想定しやすくなるということである。


 生まれつき優しい人というのは、おそらくこの世にいない。性格が温厚とか、柔和な人はいるかもしれないが、それは諍いを好まないというだけで、優しさとは少し違う。先に定義したように、優しさとは自分を殺して相手に尽くすことなのだから、諍いを好まないというのは、自分にとって不利益な状況になるのを避けているだけでしかない。つまり、相手にとってのプラスを考慮しているわけではないということである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る