第217話 意味による効果

 それっぽい服を着ると、気分もそれっぽくなるらしい。たとえば、ネクタイも締めて革靴を履いて、きちんとスーツを身につければ、社会的に安定した地位にあるように思える、ということである。


 最近の研究結果によると、そのような効果が発揮されるのは、その服の持つ意味を知っている場合に限られるらしい。陸上競技の選手が着るユニフォームだということを知っている状態でそれを着れば、走ることに対するモチベーションが上がるし、作家とはこういう服を着るものだと思って、独自にイメージする通りの服を着れば、創作に対する気力が上がる。


 そうすると、その逆もいえる、つまり服装がきちんとしていなければ、当然やる気も出ないということになるが、個人的にはそんなことはないと思う。ある程度標準的な服装をしていれば、モチベーションは一定に保たれる。そもそも、モチベーションを上げたいとか、やる気を入れたいなどと思わなければ良いわけで、そういう人はどんな服を着ようと、最早関係がないと思う。


 葬式のときに喪服を着たり、結婚式のときにドレスを着たりするのは、意味がないことではない。ただし、だからといって、それを絶対的なルールのように扱うのは、如何だろうか。

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