第205話 言葉から生じる能力

 魔法使いが魔法を使うときに、その魔法の名前を口にしたり、ヒーローが必殺技の名前を口に出したりするのは、どうしてだろうか、と疑問に思うことがある。そういうシーンは限りなく格好良いもので、自分も幼い頃そうした台詞を真似てよく口にしていたが、口にしなくても魔法や技は使えるのではないだろうか。


 魔法や必殺技の名前を口にするのは、それらの言葉に何らかの力が込められていると考えられているからかもしれない。ヒーローの必殺技はともかくとして、魔法はその言葉によってこの世界の理に干渉するわけだから、それを実際に何らかの形で示さなくてはならない。文字で書いたりする魔法もあるかもしれないが、人間はコミュニケションの手段を主に音声に頼るから、口から言葉を発するというのが、最も簡単な方法だということである。


 魔法といったら一番有名といっても過言ではないあの作品でも、登場人物は例外なく杖を持って魔法の言葉を口にする。そうした言葉を世界に示すことで、世界はそれに反応して対応する能力を貸し与える。能力は意味と置き換えられるから、言葉、つまり形によって意味を示すという意味で、魔法は言語の性質をよく表しているといえる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る