第57話 神様との戦い

 天災や病原菌は神様の使いであり、それらとの戦いは人間と神様との戦いと同義である。


 多くの場合、神様は入念に準備を行っていて、それらの使いは命令通りにきちんと役割を果たす。どれくらいの生命が失われるか、といった計算が予め密に成されており、人間には到底太刀打ちできない。人間が解決方法を編み出すのは、それらの使いが現れて行動し始めてからなので、当然、対応が遅れる。しかも、そういう理由で遅れるのはまだ分かるとしても、それ以外のくだらない柵に捕らわれて、余計に判断が遅れ、より一層多くの生命が失われることが多い。


 生命を作ったのは神様だから、それらの生命を失わせるのも神様だというのも納得できる。何もなかったところから生命を作った、その緻密な計算と同じように、生命を失わせる際にもそれと匹敵する計算を行い、確実に一定数の生命を失わせる。どちらの場合でも、入念に準備を行っていることに変わりはない。それに比べて、人間の準備は全然足りない。


 こんなことでは、人間はいつまで経っても神様にはなれない(なお、以上の文中で用いた「神様」や「使い」などとという表現すべて比喩であり、宗教的な意味は一切含まれていない)。

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