第55話 過度の拡大・縮小は要注意

 拡大と縮小をしすぎると大変なことになる。


 拡大というのは、微視的に見るということだが、その代表例が原子である。世の中に存在する様々な物質は、原子が組み合わさってできているが、その原子は、陽子と電子と中性子が組み合わさってできている。では、陽子や電子や中性子は何が組み合わさってできているのかというと、素粒子が組み合わさってできている、ということになるが、それでは、素粒子は何が組み合わさってできているのかというと、これ以上答えられなくなる。


 一方で、縮小というのは、巨視的に見るということだが、その代表例が宇宙である。私はとある都道府県に住んでおり、とある都道府県は日本という国の一部であり、日本は地球という星の一部であり、そして、地球は太陽系という惑星集団の一部だが、そうやってどこまでもスケールを大きくしていくと、やがて宇宙という単位に辿り着く。そして、では、宇宙はどのようなものに所属しているのか、という問いに至るわけだが、この場合もこれ以上答えられなくなる。


 このように、拡大や縮小を過度に行うと、それ以上考えられなくなる、といった事態に直面する。これは原因を辿る行為にも同じことがいえる。自分がコーヒーを零した原因を辿り続けると、ひいては地球が誕生した事実に至りかねない。


 今のところ、拡大・縮小の極地に至ったという例は報告されていない。

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