第53話 根源的に存在する矛盾
何でもできるのなら、何もできないこともできなくてはならない。これはどう考えても矛盾しているが、言葉を使って述べるとこのような矛盾に直面する。
矛盾といえば自己言及というものがある。自分で自分について述べると矛盾が生じる、というものだが、このように、人間そのものや人間が扱うものにはほとんどの場合矛盾が含まれている。
口で言っていることと、実際にやっていることが、まったく違っている、というのはその最たる例だが、それ以外にももっとレベルの高い矛盾が存在する。たとえば、自分自身を客観的に見てみよう、と考えたとき、自分で自分を俯瞰して見てみるわけだが、このとき、客観的に、つまり俯瞰して自分を見ているのは、結局は自分ではないか、ということに気づくわけで、客観的に見ているのは主体の自分だ、ということになり、矛盾する結果になる。もちろん、あくまで客観「的」に見ようとしているだけだから、完全なる客体になるわけではないが、この例は、人間が主体から逸脱することが不可能であることを示唆している。
矛盾しているのが良くないという話ではない。人間が生まれながらにして持ってしまった矛盾というものと、如何にして付き合っていくか、という話である。
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