第145話『ミリーの頼まれごと・1』


オフステージ(こちら空堀高校演劇部)145


『ミリーの頼まれごと・1』ミリー    






 わたしの日本語は基本的に大阪弁。




 シカゴの実家の隣がタナカさんという日系のお婆ちゃんで、大阪出身。


 もう100歳目前という年齢なので、喋る日本語はコテコテの大阪弁。


 物心ついた時からタナカのお婆ちゃんとは大の仲良し。だから自然に身に着いた日本語は大阪弁で、それも70年ほど昔のね。


 お尻のことを「オイド」と言って、ホームステイ先の千代子に通じなかったし。夕べの事を「ゆんべ」と発音して「お婆ちゃんみたい(* ´艸`)」と笑われたり。半神巨人戦を観に行って「うわあ、さすが阪神ファンはしこっとるなあ!」と感激して千代のパパさんにまで「年寄りみたい」笑われてしまう。


 それからは、どうも「うちの大阪弁は古いらしい」と自覚して、テレビやYouTubeなんかで勉強して、高校二年の現在では現代大阪弁を喋れるだけでなくて、標準語もマスターした。


 その甲斐あってか、今年で五年目になる大阪では、ご近所でも学校でも、みなさんと仲良くやれている。


 心がけているのは――つかず離れず――人には親切にするし、親切にされたら、キチンと感謝の気持ちを伝える。だけど、感謝以上には人の心には踏み込まない。


 まあ、アメリカ人だし、日本に居る限りは『外人さん』で『お客さん』だしね。


 アメリカからやってきた交換留学生のミッキーには油断した。どいう油断かは、まあ、バックナンバー読んでちょうだいな。


 


 なんで、こんな前振りしてるかって言うと。同時に二人から同じ頼まれごとをしたからなのよ。




 一人は一年のSさん。もう一人は二年のT君。


 二人の頼み事は、表面的には同じだった。


 演劇部に入りたいということだった。


 普通ならね「わ、嬉しい! 今日からでも部室に来てよ!」てことになるんだろうけど、わたしは一歩引いてしまった。


 だってさ、うちの演劇部って演劇しない演劇部なんだよ(;^_^A。


 今までの物語を読んでくれた人には分かると思うんだけど、うちの演劇部って演劇しないことで有名な演劇部なんだよ!


 文化祭で『夕鶴』やったけど、あれは例外的事情からだし(どんな事情かは、これもバックナンバー読んで)、みんな仲良しだけど、放課後マッタリ過ごしたいってだけの、生徒会には絶対内緒のグータラ志向からなんだからね。


 だから、入部希望って聞いて「嬉しい!」じゃなくて「え、どうして!?」になるわけなのよ。


 二人とも、かなりドラマチックの予感だから、次回から改めて経緯(いきさつ)を語ることにするわ。


 次回は。SさんとT君が、どうやってわたしに接近してきたか、その真の狙いはなにかを語るわ!


 乞うご期待! 刮目して次回を待て!




 ヘヘ、むつかしい日本語知ってるでしょ(^▽^)/


 


 

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