第99話『女子に関わるとろくなことは無い』
オフステージ(こちら空堀高校演劇部)
99『女子に関わるとろくなことは無い』
女子に関わるとろくなことは無い。
かといって世の中の半分は女なんだから、まるっきりの無視もできない。
だから程よく付き合っていけばいいと思ってるし、そうしてきた。
程よくというのは、ま、日ごろの挨拶はする。「おはよう」とか「さいなら」とか「ありがとう」とか。ま、この三つの言葉を適宜使っていればもめ事は起きない。
女子が、なにか悩んでいたらそっとしておく。へたに感想とかアドバイスとかしたら上手くいかなかった時に「あんたのせいだ!」と思われる。面と向かって「あんたのせい!」と言われることは少ないが、根に持たれ、時には仲間内に言いふらされ総スカンを食うことになる。
文化祭で『夕鶴』をやることになって、八重桜(敷島先生)の押しで千歳が主役を張ることになった。
なったんだけど、千歳の顔は浮かない。
だけど、俺は「どないしたんや?」と声をかけたりしない。
声をかけないのは以上の理由による。
その他にも、須磨先輩やミリーが気にかけてくれているのが分かってる。下校時に迎えに来たお姉さんと車の中で話しているのも見かけた。
それに、最大の問題は『夕鶴』を押してきたのは八重桜自身やということ。
八重桜は組合のバリバリで党員やという噂もある。パソコンで空堀高校をググってると八重桜にヒットして、その写真が北摂の女野党議員とのツーショット。これは理屈の通る人種やないと怖気をふるてしもた。
まあ、その、俺の女子一般への認識と八重桜への怖気が、千歳の放置プレイになってしもたんやけど。
そやけど、俺の良心は「このままでええんか?」と責めてくる。
ちょっと千歳の顔を見られへんなあと思たとき、須磨先輩から提案があった。
「啓介、ミリーとミッキーを主役に据えたらいいんじゃない!?」
ミリーもミッキーも交換留学生。国際交流とか異文化交流とかのキャプションを付けたら、すごく前向きな取り組みに見えるやんけ!
「あ、そやけど、ミリーは足イワシてるるで」
ミリーは捻挫をこじらして車いすになってる。
「かえっていいわよ、もともと八重桜は千歳に振ったんだよ。これは、千歳が車いすなんで、きっとアピールできると踏んだからなんだから、ミリーの条件なら宗旨替えしてくれると思うわよ」
「なるほど……あとは……」
「ミリーとミッキーには話した、めっちゃ喜んでたわよ。あとは八重桜の首に鈴をつけることだけさ♡」
「え……なに? そのキラキラお目めは?」
どうも苦手らしい、先輩が八重桜を、又は八重桜が先輩を。
で、俺が提案しに行くと総選挙で支持政党が勝利したように喜んでくれて、どさくさで「演出とかもお願いできますか!」もあっさり引き受けてもらった。
明日から演劇部初の演劇の稽古が始まる。
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