第81話『捨てる神あれば拾う神あり』
オフステージ(こちら空堀高校演劇部)81
『捨てる神あれば拾う神あり』
小泉八雲を知っているかい?
ラフカディオ・ハーンというのが元の名前で、明治時代に日本に帰化したアイルランド系イギリス人さ。
『怪談奇談』というのを書いている。
日本人の奥さんにせがんで聞いた昔話を英語に翻訳したものだ。
有名な『耳なし芳一』は、あの中に出てくる一つのエピソードなんだよ。
ボクはミラー先生の『日本文化』で習ったよ。
キャシーも『宗教論』をとっていたから、ひょっとして聞いているかもしれないね。
『怪談奇談』に出てくる幽霊とか化け物やモンスターは、日本が多神教だから成立するんだ。
幽霊も化け物もモンスターも神さまの一種さ。
アイルランド風に言えばトロルとかエルフとかドワーフだね。ざっくり言えばティンカーベルとかの妖精やピーターパンもこの中に入ってしまう。元々はヨーロッパのどこにでもいた神さまだった。
そうそう、キャシーが絶賛していた『となりのトトロ』はトロルのことなんだよね。めいもさつきも小さいころに読んだから「トトロ」って訛ってしまったんだよね。
こういう神々はキリスト教が浸透してくるに従って森や山の奥に追いやられて妖精やらモンスターに変わっていった。アイルランドには、こういう落剝した神さまが残っていて、ハーンは子どものころに聞かされたまま心に残っていたんだよね。
たとえば、人の悪口を言うと「妖精が聞いてるよ、告げ口されたくなかったら悪口はよしなさい」とお祖母ちゃんに言われた。
その落剝した神さまが日本ではまだ生きているんだ!
ハーンが住んでいた島根は、その日本の中でも神さまたちのメッカなんだ。
日本は十月のことを神無月というんだ。つまり、神さまたちが居なくなってしまう月だという意味。
で、神さまたちは島根の出雲大社に集まるんだぜ。知らなっかろ?
だから、島根だけは十月のことを神有月(かみありづき)って言うんだ。
とてもファンタスティックだろ!?
なんで、こんなことを書いたかというと、ボクも神さまを実感したからなんだ!
ホームステイ先のタナカさんちが火事になって、行き場所が無いって書いたよね。
訪日そうそうの不幸にガックリきたよ。
でもね、三日目には代わりのホームステイ先が決まったんだ!
日本語でこういうのを「捨てる神あれば拾う神あり」って言うんだ。
そう、だから、改めて日本は神々の国なんだと思ったわけさ。
小泉八雲の気持ちがよく分かるよ。
そして、日本の「拾う神」は偉大だよ!
なんと、新しいホームステイ先は美晴の家だったんだ!
思い通り美晴と同じ空堀高校に留学できて、でも、美晴の方が学年が上なもんで、同じ学校に居ても口を利くどころか、一週間顔も見ないときだってあるんだぜ! ボクのバディーに指名されたのもシカゴのミリーで、ミリーはよくやってくれるけど、よくやってくれればくれるほど美晴との接点が無くなっていく。
そんなパラダイスの門の前で足止めを食ったような状況。
それが一気に解消、なんと美晴と同じ屋根の下で暮らせるんだ!
本当に「捨てる神あれば拾う神あり」だよ!
次は、美晴が副会長をやっている生徒会に潜り込むこと!
元々、美晴とは生徒会の世界高校生生徒会会議が縁だったんだからね、いっしょに生徒会をやるのが自然だろ?
じゃね。
スクールポリスについては、次の手紙で書くよ。
親愛なるキャシーへ ミッキー・ドナルド
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