第20話「ウグ……」


オフステージ(こちら空堀高校演劇部)20

「ウグ……」                   







 須磨の姿が二回りほど大きく見えた。


 啓介はアクション映画で、こんなシュチュエーションがあったような気がしたが、タイトルは思い出せない。

 その映画では、次の瞬間に部屋に居た者は女が持っていたマシンガンで皆殺しになった。


「部員が5人以上いなければ部活としては認めない……いったい、いつの規約よ!?」


 書記の眼鏡少女が律儀に生徒手帳を繰り始めた。

「……昭和21年に新制高校に移行したときに、生徒会規約第28条第3項として作られました」

「そうね、日本国憲法と同じくらい古いの」

「それがなにか? 古いからダメと言うんじゃ話にならないわ」

「そうね……でも、考えてみてよ。その時代って生徒数は今の倍よ、ざっと1300。今は580あまりしかいないの。1300で5人が存立条件なら、580では3人が順当な水準じゃないかしら。国会議員の定数配置だって見直されているわ、生徒定数を頭に入れないで存立条件を70年にわたって放置してきたのは怠慢じゃないかしら」


「「「「「「「「ウ……」」」」」」」」」


 生徒会役員たちが顧問の松平とともに息をのんだ。




「松平先生が支持してらっしゃる政党は、議員定数改善の急先鋒でしょ、足元の生徒会の規約をほったらかしにしているのは本末転倒よ」

「ウグ……」

「以上のことは、学校名を伏せた上でSNSに挙げて置いたわ。演劇部はこのまま部室を使用する。いいわね」

「待って」

 美晴が手を広げ、須磨たちの前に立ちふさがった。

「なによ」

「たとえ理屈がそうであっても、規約は規約。守ってもらうわ」

「リスクを考えなさいよ、追い出されたら黙ってはいないわよ。全校生徒にこのことを訴えかけていくわ、同時にネットを通じて同じような目に遭っている日本中のクラブにも働きかける」

「そ、そこまでしなくても。な、瀬戸内も……」

 松平が割って入った。

「先生!」

「これ以上言うのなら弁護士に入ってもらいます。本気です……伊達に5回目の3年生をやってないわ」

「「「「「「「「「……………」」」」」」」」」」

「じゃ、行こうか小山内君。最後は君が締めてよ、部長なんだからさ」


「えと……今のが演劇部としての申し入れです。えと……きちんと規約が改正されるまでは、現状のまま部室を使います」


 演劇部の3人は、揚々と部室に引き上げて行った。


 

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