第96話 エデンの東

1954年のアメリカ映画です。


心に傷を負った情緒不安定な若者が、父親に認めてもらいたくて様々な努力と彷徨の末、ようやく父の理解を得るまでを描いたヒューマンドラマである。



ひとつには、ジェームズ・ディーンの存在がなければ、これほど有名な、息の長いドラマにはならなかっただろう。


ジェームズ・ディーンは、この作品の他は「理由なき反抗」と「ジャイアンツ」に主演したのみで、自動車事故で急逝したのはよく知られている。


しかしそのジェームズ・ディーンも、今は遥か遠い昔の俳優、いよいよ時とともに忘れられつつある気がする。

残念だが。



そしてもうひとつは、この映画の主題である親と子、特に父と息子の問題について触れたい。

というのも、私も父親とはうまくいかなかったほうだから。


私はこの映画で主人公の青年の、父のために何かしたい、父に理解されたいという強い願望がよく分からなかった。


私なぞは、父親に俺のことが分かってたまるか、と思ってきたし、病気の父の介護を頼まれて、この主人公のように喜ぶことはまずあり得ない。

逆に、そんなの嫌で、辟易しただろう。


私の場合、父が存命中に心が通じ合うことはなかった。父が息を引き取る時も、私は病院の入口でタバコをふかしていた。


しかし私も血も涙もない冷血漢ではない。

父が亡くなって、ちょっと時間を置いてから、ある日大泣きに泣いた。

そういう瞬間が、突然やってきた。

それ以降、私は小説の中で父と和解することを目指した。


「エデンの東」について語るところが、自分語りになってしまって本当に申し訳ない。


私が言いたいのは、ギリシャ神話の頃から、人間同士の葛藤は永遠のテーマであり、その中でも父と子、母と子のテーマは重要で,この映画はそうしたテーマを描いた秀作のひとつだろうということだ。


主題曲も有名だが、やっぱりもう忘れられつつあるのだろう。


しかし私に言わせれば、主題曲は勿論、映画のテーマも内容も、まだまだいつまでも鑑賞に耐えるものであると思うのです。

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