第88話 老人と海

1958年のアメリカ映画です。


ノーベル文学賞を受賞した、ヘミングウェイの同名小説の映画化なのだが、ある解説によると、この映画のヒットがノーベル文学賞受賞のきっかけになったとある。


話はシンプルで、登場人物も基本的には老人を慕う少年と老人の2人だけなのだが、この老人の自然との闘い、そして見事な獲物を誰にも見せることができなかった喪失感は、逆に静かな感動となって観客の心を満たす。


自然の中の小さな人間の姿、見事に3日間闘った老人のけなげさ、それでも獲物をサメに喰われてしまう残酷さ、自然との命をかけた孤独な闘い、そして全てを失った老人を迎えてくれる少年の友情。


この映画は、シンプルな作りの中に、人間というものと、自然への讃歌がみちみちている。


以前私は「自転車泥棒」のところで、名作は時にとてもシンプルだ、と書いたのだが、それはチャン・イー・マオの「初恋のきた道」や、この「老人と海」などを念頭に置いて書いた言葉でもある。


実はこの映画、ここで取り上げるかどうか大分迷った。

というのは今の映画を見慣れている方は、この古いカラー映像にしらけてしまうのではないか、という危惧があったからだ。


しかしもちろん原作は素晴らしかったが、私は子供の頃この映画を見て、大人になっても忘れられない感動を覚えたので、ここに残しておきたいと考えた。


監督はジョン・スタージェス。過去に「OK牧場の決闘」を、のちに「荒野の七人」や「大脱走」を監督した。


老人は名優スペンサー・トレイシーである。


スペンサー・トレイシーは老人の役がよく似合っていた。

何の獲物も持たずに帰ってきた老人はうつ伏せになって寝る。

老人はライオンの夢を見ていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る