第33話 さよなら子供たち

1987年、フランス、西ドイツ合作映画です。


かつてヌーベル・ヴァーグを代表する監督の1人だったルイ・マルが、ちょっと肩の力を抜いて撮った珠玉の一作。

そんな言い方がピッタリくる。


テーマは使い古されたユダヤ人迫害と、反戦とでもいったところなのだが、天才ルイ・マルの健在ぶりが印象的だ。



カトリック系の寄宿舎に預けられているジュリアンは、ある日やってきた新しい生徒、ジャン・ボネの、人に心を閉ざしたような態度がやけに気になる。でも、2人は次第に親しくなり、やがてかけがえのない友情が育まれていく。


しかしジャン・ボネはユダヤ人で、神父さまから密かにかくまってもらっていることをジュリアンは知る。


でもまだまだ無邪気な年頃で、寄宿舎の中ではユダヤ人も生粋のフランス人も関係なかったのだが、ある日思いもよらずゲシュタポがやってきて、子供たちは庭に集められる。


彼らの目の前で、ジャン・ボネも神父さまも連行されていく。どこへ行くのか。


子供たちは口々に「さよなら、神父さま!」

と叫ぶ。神父さまは姿を消す時、最後に振り返って言う。


「さよなら、さよなら子供たち!」


ルイ・マルの自伝的要素の濃い作品だと聞いているが、12歳の少年ルイ・マルは、数十年の時を経て、その経験を一編の名作に結実させた。


「死刑台のエレベーター」も、「恋人たち」も、「地下鉄のザジ」も、そして「鬼火」も、あまりに旧作とはいえ、ルイ・マルの天才ぶりを伝える作品として、いつか取り上げたいと思っている。


ちなみにこの「さよなら子供たち」は、ベネチア映画祭でグランプリを獲得している。

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