第57話 金髪少女のしはい的ふくしゅうたん!



 ◇◇◇



「イヤだ……こわい……こないで……たす……けてぇ…………」


 ティアの声がアラスたちの耳に届き、ティアを見ると彼らは目を大きく見開いた。


「ティアッ!?」


 とても強い闇の魔力がティアを包み込み、ティアの持つ白銀の髪が瞬く間に金色へと変化したのだ。


「ティア様! 大丈夫ですか!?」


 リアムが駆け寄るとティアは突然刀を引き抜き、リアムに目掛けて振った。


「コロス……キサマだけはゼッタイ……コロス!!!」

「「「っ!?」」」


 そのティアの瞳を見た者たちは瞬時に理解した。


 ティアは目には見えないと――――――


「その髪と瞳……っ!?」

「30年も経てば忘れるよな!?」


 リアムは剣を引き抜き、何者かに取り憑かれているティアからの攻撃を弾く。


「この素早い剣捌きに加えてこの重さ……」


 しかし、連続で迫り来るティアの攻撃はその幼き見た目に反してとても重く、リアムは受け流すことで精一杯だった。


 リアムは過去に同じような少女と戦った過去があった。

 しかし、彼はまだ未熟だった頃の話で卑怯な手を使って勝利した過去を封じたのだ。

 リアムにとっては触れられても欲しくない過去。


 それが現在いま、彼の目の前に立ちはだかっている。

 彼のその迷いが彼の判断を送らせていた。


「はあッ!!」


 リアムの剣が弾かれ、ティアに刀を突きつけられる。


「……私の負けだ。思いっきりやるがいい」

「地獄で後悔しろ」


 ティアは刀を持ち上げ、リアムに目掛けて振り下ろす。


「ティア!」


 リアムに当たる直前でアラスがティアの刀を受け止めた。


「何をする! そこをどけッ! アラス!」

「お前、俺の名前を……っ!」

「知っている。私はお前たちとずっと共に過ごしていたんだからな」


 ティアの持つ刀を見て確信を持ったリアムは口を開いた。


か。その刀は見たくないのだがな……王女殿下」

「ようやく思い出したか。でもそれも無意味だ。地獄の底で後悔するがいい!」


 ティナはアラスを蹴飛ばし、リアムに刀を振り下ろす。


「グッ!? ティア、私の邪魔をするな!」




 ◇◇◇



 俺が意識を取り戻すとアラスが目の前にいた。

 少しドキリとしたが、俺は身体の制御が聞かなかった。


「ようやく思い出したか。でもそれも無意味だ。地獄の底で後悔するがいい!」


 勝手に口が動き、アラスを蹴飛ばし、リアムに刀を振り下ろそうとする俺に必死に抵抗しようとする。


 今こんな所で人殺しなんてしたら! 取り返しがつかない! そんなこと……絶対にさせるわけにはいかないッ!!


『【聖光】よ! 今ここにッ!!!』



 心の底から温もりを持つ不思議な光が周囲を包み込んだ。






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