NEVER・END・STORY

 ソロは一度話を区切ると「こんなところで良いか?」と正樹を見つめ、尋ねる。

 タビが大天使の頃からだが、ソロはあくまでアドバイスをするだけで最終判断はいつも議長であるダビに任せていた。

 それがソロの役割でもあった。

 それにこう言った場合の最終判断するのは自分の身には余る。

 そのくらいの分は弁えていた。

 それに正樹には今後、重大な選択を迫られる事も多くなる。

 少しくらい経験させておかないと後で差し支えると一応、魂的な兄として弟の育てる意味も込めての事だ。




「確かにそれが一番妥当だろうな……なら、あとは地球側に対するアプローチを検討しないとな」




 ソロは首を傾げ「アプローチ?」と訝しげに問う。




「100年~300年待つにしても潜在集合無意識や擬似サタンが大人しく待ってくれるとは限らない。もしかすると60年くらいで救える魂諸共葬るかも知れない。だから、こちらからも部隊を派遣する。まずは100年〜300年経つまでの治安維持と候補者探しを任とする先攻部隊とその遊撃隊となる部隊、後は裁き未来の分かれ、目を選択する際に英雄などの妨害を受ける可能性を加味した殲滅部隊。後は人間に言い訳させないために100年~300年後に滅ぼす旨を伝える預言者を立てないとならないな。地球の問題もあるが外宇宙にも問題があるそれにも対処しないとな」




 正樹はソロの考えに同調する事はなくそれを自分の意志で受け入れた上で自分の考えを口にして、考えていた。

 弟が自分の心配を他所に堂々としている様を見てソロは「余計なお節介だったか……」と誰にも聞き取れない声で呟く。

 こうして、ソロの案と正樹の案を軸に使徒救出計画が立案された。

 なお、部隊編成についても決まり、それは以下の通りである。




 先攻部隊


 第1部隊 総司令 繭香・ボンドフ上級准将


 遊撃部隊


 第2部隊 総司令 上田・美香上級准将


 殲滅部隊


 第3部隊 総司令 フィオナ・オコーネル上級准将


 第4部隊 総司令 リテラ・エスポシスト上級准将


 第5部隊 総司令 神代・シン上級准将


 第6部隊 総司令 橘・千鶴上級准将


 国土防衛部隊 第7部隊 総司令 ソロ・モンテスト上級准将


 近衛部隊 第8部隊 総司令 ギザス・ボンドフ上級准将 副司令ブリュンヒルデ准将


 外宇宙部隊 第9部隊 総司令 御刀・天音上級准将 副司令 ウィーダル・ガスタ准将


 副総統総統代理 滝川・正樹少将


 総統 アリシア・アイ中将(暫定)




 この様な位置付けを決め、アーリア国内の軍属や志願兵を募り、部隊を再編した。

 民はあの戦いからの罪悪感からか意外の志願兵の数も多く、反逆した全ての天使も何らかの形で軍属になってくれたお陰で必要以上の定数を確保、なんとか部隊編成を完了出来た。




 ◇◇◇




 こうして、惑星規模の国家”アーリア王国”の建国が発布された。

 神の力で観測した生命体が居住する惑星へのコンタクトと並行して自分達と近しい関係にある並行宇宙の地球を計画完遂後の将来的な橋頭堡とすべく各世界に進行を開始した。

 これからネクシレイター達の長い戦いが始まるのだった。

 これは長い戦いになる事は彼等は当然、分かっており、出来る事なら争い合いたくはない。

 だが、争い合いたくないと考える者程、生き難いのがこの世界だ。


 どれだけ敬虔な旧世代宗教を謳った所で中身が羊の皮を被った獰猛な狼の可能性もある。

 歴史を見れば、強姦を働く教徒や民族浄化を唄い、争いを仕掛け敬虔さとは、かけ離れた行いをする事が多い。

 仮にそんな事件を起こさない過激さが無いにしてもそこに人を救う愛がある宗派は地球にどれだけだろうか?

 ただ宗教を拝み、信じただけで天国に入れると本気で思っていたらシン辺りが激怒するだろう。


 創造主の信じて御心を行わないにも関わらず、楽園に入れるほど世界は甘くはない。

 これを真面目にやっていたネクシレイターからすれば、仏壇を拝んでいるだけの者や十字架にひれ伏しているだけの者は完全に舐めているようにしか認識されない。

 しかも、誤解しているだろうが、仏教と言うのは自分が悟りを得て、自分が救われる宗派だ。

 仏壇拝んだだけで救いを得るモノではない。


 なんの為に拝んでいるのかも懐疑になり、物見遊山で教徒をやっているようにしか見えない。

 少なくとも彼等にネクシレイターのように自分が迫害される事も厭わず、他人を救おうとするような愛はない。


 それを「そう言う事を言うと嫌われるよ」とか「そう言う事を言うと奇異な目で見られるからやらない」と自分の保身を優先するならその者にも愛は無い。

 無計画に無謀でかつ強要されてやるくらいならやらなくて良いとアリシアなら言うであろう。

 また、その事を叱りはしないが、少なくとも自分の保身ばかり考える者は天国に入っても上手くはやっていけないので仮に天国に入ってもすぐに追い出される。


 ネクシレイターの教えは聖典を基にしている為、キリスト教に近いが3大宗派とは違うカテゴリーだ。

 GG隊のその特性上、異端キリスト教会等と言うレッテルを貼られ、迫害された程であり「それとは違います」と説明しても多くの人は頑なで誰も聴こうとはせず、動物的な衝動で理性的に考えず否定だけをして迫害した。

 当然、そのような人間がいるのでネクシレイターを宗派的に信じないと言う者も今後よく現れるだろう。


 だが、宗派が違うにしてもどの宗派も神を信じ、死後に楽園に預かりたいのは同じはずだ。

 それにも関わらず、自分だけが楽園に預かる喜びを享受、それを誰かに伝えず、喜びを誰とも享受しようとしないならそこに愛など無い。

 その愛が無い……故に争い事が絶えないのだ。

 仮に今、犯罪をしなくても未来に犯罪をするような可能性があり”潜在集合無意識”下で人を排斥する。


 そもそも、本当にかのうせいを信じているなら神を畏れて悪事は出来ない筈だ。

 悪事をする時点でその宗派に果たして神がいるのだろうか?

 神がいるならその強大さを畏れ、高慢や争いの素となる感情を抱けない……況して、愛を抱かない筈はない。

 聖典の十戒には、姦淫を戒める記載があるにも関わらず、過去の歴史を見れば旧制代宗教でも強姦と言う名の姦淫をした教徒はいる。

 神を畏れているなら出来ない筈だ。

 人間に本当に綺麗で明るい可能性があるのか?と懐疑的になり、ネクシレイターを基準にすれば、それはまるで口先だけの中身のない可能性と同じだった。

 ネクシレイターに言わせれば、人の理で出来たモノは脆く……そこに可能性かみは通わない。

 ネクシレイターは人間に問いたいだろう。




 あなた達は本当に可能性や希望、平和を抱いているのか?




 昔から様々な戦いを起こし殺し合い、罵り合い、排斥して来た人類の未来の可能性は本当にあるのだろうか?

 少なくとも人間に可能性があるなら、それを口先ではなく証して欲しいとネクシレイターは切に思うだろう。

 だが、人間は決してそうはしない。

「人間は平和を愛する生き物です」と口では言うが、それを証はしない。

 証しない証明はいつか崩れる。

 万有引力の法則が証明されなければ、仮に存在したとしてもそれは誰にとっても無いモノと同じだ。


 だからこそ、ネクシレイターは人間を信じはしない。

 今までも今回も欺かれ、大きな被害を受けたのだから……そして、罪の意識とは、被害者の方がその重みを感じると言う。

 果たして、人間は被害者の立場になり、考えられる生き物なのだろうか?

 それより自分の意見ばかりを欲深く語り、証もせず、欺瞞を振り撒かないと言えるだろうか。


 少なくとも「いつか、いつか」と明日を誇る者にはその証は永遠に出来ず、その答えを見つける事は出来ない。

 悔い改めない者は永遠に死の鎖に繋がれ、悪魔の奴隷になるしかないのだ。

 こうして、悪魔により”破界はかい”された世界はアリシアにより”再世さいせい”を果たし神すら予測しなかった未来へと歩み始める。

 永遠に終わる事のない未来物語『NEVER・END・STORY』を掴む為に……。

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