今後の世界について
ネクシレイター達は138億光年大銀河の中心に太陽系と同じ構造の惑星帯を創り出し、そこにある地球型惑星に“アーリア”と名付けた。
この名前は自分達の象徴となる人物に因んだ名だ。
地球と全く同じ大陸構造を持つこの惑星だが、その生態系は地球とは違う。
まず、地球にはいない宇宙霊物が棲んでいる事だ。
高次元が消滅した事で高次元にいられなくなった高次元の動物達はそれぞれ肉の器を宛がわれ、受肉する。
彼らは元々、アリシア内に内包された宇宙で一時的に保管されていたが、アリシアの負担を考え、一定数以上を管理下から離し、アリシアの負担を軽減させている。
更に惑星内には疑似4次元空間である3.9次元空間を形成、大量にいる霊物達が棲める空間を確保、同時にネクシレイターが住める空間も確保した。
惑星アーリアの首都はアリシアの所縁の地として東京があった場所に構える事にした。
生まれ育ったサランスクにすれば良いのではないかと言う考えもあったが、リテラとフィオナの強い反対でそれを棄却された。
もうあそこはわたし達所縁の地でもなんでもない
そのようなリテラ達の意見で却下された。
街の建築物は積み木の様なブロックパーツを組み合わせ、組み換え可能なモノに規格を統一、そこでまず、この惑星の政府にあたる”アーリア中央庁”を建造した。
位置で言えば、円形の山手線があった場所の中央あたりに巨大な純白のビルと言う名の塔が立っている。
ただ、地球の物とは違い、見た目はかなり大きいが、それよりも中は3.9次元化されているので内部空間は更に広く、会議室だけではなくアリシアの保護を目的とした神殿まで内蔵されている。
このビルは後世に“アーリアの塔”と言う名前で広く知られる事となる。
そんなアーリアの塔の中の会議室で第1回目の会議が行われようとしていた。
出席者は以下の通り
滝川・正樹
神代・シン
リテラ・エスポシスト
フィオナ・オコーネル
ソロ・モンテスト
ギザス・ボンドフ
繭香・ボンドフ
上田・美香
橘・千鶴
この戦いでネクシレイターとして神域に達したネクシレイター9人(ブリュンヒルデやマリナも神になったが、会議に参加する程の幹部になるのを辞退した)による初の会議が行われた。
形式的ではあるが正樹を議長に据え、会議が話し合われた。
全員がGG隊時の蒼い軍服を着込み、円卓の席に着く。
全員の顔は晴れやかではない。
世界を救ったとは言え、ここのいる全員にとって大切な女がこの場におらず、深い傷を負ったのは誰もが知っているからだ。
だが、沈んでばかりもいられない。
正樹は重苦しい空気を斬り裂くように口を開く。
「建物の進捗具合はどうだ?ソロ?」
「滞りなく進んでいる。綾や万高生達の協力もあって思った以上の進捗だ。首都の区画や整備に特に変更はない」
首都建造並びに惑星防衛の責任者はソロに決まっていた。
なにせ彼は王様だった時代にエルサレム神殿作れるほど建築に精通している。
更にアリシアから戦闘技術まで習得しているので2つの知識を併せ持ち、彼に首都建築と惑星防衛に関連した首都防衛力の強化を一任された。
ここは銀河の中心であり、”過越”を受けていない者が容易に立ち入る事は出来ないが、人間とは戦争をする為なら、如何なる手段を講じて戦いを仕掛けると知った。
例えば、全世界規模で神を迫害、悪魔の力を借りて、世界構造そのものを創り替える等だ。
何事も先の事を読んで行動した方が良い。
その時、慌ててからでは遅い事があるのだ。
例えば、世界滅亡まで1時間しかないのに慌てて、神に懇願する人間とかだ。
確かに人間とネクシレイターには能力差が大きいが……だからと言って見下す訳にはいかない。
あの戦いでそれがよく分かった。
1人の力は小さくても集まれば、大きな力となる。
あの戦いはそれを体現して神に反逆した悪例だ。
「なら、当面は問題なさそうだな。だとしたら、問題はこっちか……」
正樹は円卓の中央にディスプレイを投影した。
そこにはRA値と書かれた円グラムが浮き上がっていた。
直訳は”法則変質値”だ。
「10%か。流石にあの戦いの影響としては妥当な数字なのかも知れないが……」
ギザスは席に持たれ腕を組み項垂れる。
仕方がない事とは言え、流石に気が滅入る装置で思わず、溜息も漏れる。
この数値が何を現しているかと言うと世界に存在する法則の本来の値を0%とした時の変質率だ。
神が宇宙の法則を整備した時、何を基準に使ったかと言えばその1つが”順理”だ。
川の流れが上から下に流れるのが自然な事であるようにその様に行えば、何事も上手く行くと言う御心から法則を整備したのだ。
だが、その順理に逆らい破壊する者がいた。
それがサンディスタールだ。
”順理”を破壊した方がサタンの新世界を創造し易かった都合上、その”順理”を破壊し易くする為、”順理”の法則に背き、法則に過負荷をかけ、機能不全を起こそうと創り出したのが”英雄因子”であり、悪魔の奇跡や超能力、異能の力や術、人間が目を惹き易い新人類的な者の力等、世を乱す魔の法則“魔法”を使う者達が現れた。
何故なら“天の元で特別な人間などいるはずがない”のだ。
何か“特別”を人間は作れば、その軋轢で簡単に争い合い、特別な力に自惚れ、高慢になり自分こそは正義であると人の上に君臨する。
まさに悪魔が好物とするSWNが大量に放出され、それが”順理”の破壊に繋がる。
今回の戦いも悪魔が新世界構築の為に”順理”を破壊していたが、アリシアが世界規模で”再世の書”の力を主として発動した”
だが、サンディスタールとアリシアの剣の打ち合いの際にサンディスタールが使用した”始剣・アルファ”と”終剣・オメガ”がぶつかり合った余波が次元に残り、破壊と創造の力が空間に対流、干渉し合い秩序を狂わせ、概念に強く干渉する強力な力を秘められている。
あの2本の剣はあまりに強大な力であり、下手な使い方次第で宇宙の法則すら歪め、変質させ、今あるあらゆる宇宙、異世界、並行世界すら破壊する事もあり得たのだ。
サンディスタールはあの戦いでアリシアを葬る為に一切加減せず、剣の力を乱暴に扱った。
その結果、現在宇宙の法則は本来の法則よりも10%ほど変異しており、その分だけ全ての世界には”順理”に背向いた異能の力を行使する“魔法士”が現れている。
”魔法士”が”魔法”を行使すれば、その度に”順理”が乱れ、いずれサンディスタールのような存在が現れた時、あの戦いのような世界破滅の危機に陥る危険性があった。
正樹達はその事を懸念していた。
尤も”魔法”の行使が絶対悪とまでは思っていない。
”魔法”をサタンが好む戦等で使わないならその影響は極めて低い。
”魔法””魔術”を使う事の何が弊害かと言えば、それらを使うと人間が高慢になり易く、それによりSWNが世界に溢れ、高慢な意志は”順理”を嫌う為、世界に満ちたSWNで”順理”を破壊する事が問題なのだ。
”魔法””魔術”を使っても高慢にならないならその事を咎める気はない。
「一応、確認するが人間に魔法を行使させても良いと思うか?」
正樹は全員の意志を言葉で確認しようと全員に目を配り、見つめる。
だが、誰も首を縦には振らない。
黙して首を横に振るだけだ。
当然の結果と言えば、その通りだ。
少なくとも、人の意志は善行には向いていない。
善行に向いているとしたら何故、世界崩壊の危機が訪れねばならないのか逆に問いたいくらいだ。
「じゃあ、今後の方針について何か意見はあるか?」
正樹が意見も求めるとリテラが右手で挙手した。
「このまま無意味に人間を野放しにするのは危険過ぎる。ミダレの様な例外がいる以上、すぐに殲滅はしないにしても……少なくなくとも何処かで人類を見限る指標は必要だと思う」
リテラの意見に皆が首肯する。
確かに人類は“明日を誇る”生き物だ。
今すぐにでもやらねばならない事を「明日」「いつか」「将来」と言う言葉で流し、問題を先送りにする怠惰な生き物だ。
人間はネクシレイター以上に明日の事等、分からないのだから、すぐに行うべきだ。
実行すれば、可能性はあるが、永遠に先送りにして実行しないなら可能性は0のままなのだ。
そんな怠惰な連中の為に必死に明日を生きようとしている人間の邪魔をさせる訳にはいかない。
リテラの意見は当然の意見とも言えた。
そこで千鶴が手を上げた。
「なら、丁度、良い指標があるわ」
千鶴は何か悪巧みでもしそうな不敵な笑みを浮かべ、笑っている。
なんとも頼もしい気もするが、なんとも不気味な雰囲気に全員が苦笑いする。
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