神と悪魔の戦い1
最後の決戦の火蓋が切って落とされた。
アリシアは機体のスラスターを点火したと思うとすぐに姿を消した。
サンディスタールは消えたアリシアを追うように視線を左右に向けて探す。
だが、アリシアの気配も姿すら見えない。
「くそ、どこに消えた!」
サンディスタールは更にサンディスタール・ヴァァイカフリを増殖させ、それをレーダー代わりに感度を上げ、アリシアの存在を探る。
加えて、棒立ちにならないように自身も光速移動をかけ、アリシアの一撃に備える。
翼を操り光速で動くサンディスタールの滑走が明鏡止水の水鏡から飛沫をあげる。
サタンは注意深く敵の気配を探る。
すると、微かに背後から揺らぎを感じた。
「そこか!」
サンディスタールは最後を振り返り、翼から複数のレーザーを放ち、捉えた敵を追尾する。
レーザーの着弾と同時にこちらに飛び出る一機の機影が光速で接近、”来の蒼陽”を振り翳した。
一気に間合いに入り、サンディスタールの心臓に刃を袈裟懸ける。
サタンは翼で一撃をガードするが、アリシアは翼から伝わる感触で翼にかかる力を見切り払い退ける。
翼の加減が強すぎた事で姿勢が僅かに姿勢を崩したサンディスタールに容赦ない追撃をアリシアは加える。
サンディスタールは距離を離そうと後方に下がるが、アリシアの速度の方が速く間合いを維持したまま連撃を加えてくる。
一撃一撃が鋭利で鈍器の様に重くサタンの翼を軋ませる。
一振り一振りを翳す毎にその直線状に衝撃波が奔り、地平線の彼方まで水柱が上がる。
剣劇がお見舞いされる度に地を割かんばかりの太刀筋が重く圧し掛かる。
「くそ、なんという重い一撃!だが、接近しなければ良いだけの話だ!貴様の速度を超えれば良いだけだ!」
サンディスタールは外にいる”潜在集合無意識”の協力もあり、この世界でもある程度の魔術を行使できるようになった。
サタンは自身の速度をアリシアと同等以上になるように設定、加え、アリシアの気配を追えるように各世界の”潜在集合無意識”の認識力を直結、アリシアの存在を認識できるようにした。
サタンは魔術の補正で一気に距離を取った。
アリシア以上の速度で距離を取り、翼と口、角から無数のレーザーを発射した。
それら全てがアリシアを自動追尾するが、アリシアはその動きを具に観察、”来の蒼陽”を右腰に納刀、”空間収納”から”
敵のレーザーに干渉するように神術を調節、「”
追尾するホーミングレーザーの1つにレーザーが直撃するとその瞬間、複数のレーザーが現れ、ホーミングレーザーを撃墜した。
だが、口から放たれたレーザーは威力が高く減衰せず、回避したが、それでも背後から再び迫ってくる。
サンディスタールは口、角、翼、指先全てをアリシアに向け、レーザーを放つ。
アリシアはその度に精確な狙いでレーザーを撃墜する。
だが、やはり口のレーザー出力が高く迎撃できない。
アリシアの背後と正面から高出力レーザーが接近する。
サンディスタールも挟撃出来たと思い透かさず、アリシアの左右と上の道を塞ぐように口から高出力レーザーを乱射する。
レーザーはカーブを描きながら、アリシアの前後左右上の全てを封じた。
如何に高機動とは言え、移動する隙間が無ければ、意味を為さない。
高機動と高運動戦闘を得意とするアリシアには致命的な弱点に成り得る。
「
彼女の詠唱と呼応して”空間収納”からネクシアリアの全身を包む球形の蒼い光の障壁型の盾が展開される。
レーザーは”障壁”により防がれ、消滅した。
その守りは例え、宇宙が吹き飛ぼうとアリシアを守る強固な城壁だ。
サンディスタールはあまりに強固な障壁に一瞬、驚いたが、アリシアは驚く間を与えぬ間に次の手を打つ。
「
アステリスが鍛え創り上げた
この剣の召喚と共に周囲の空気が電撃の様に疾る。
この剣、そのものに”英雄因子”や”サタン因子”を中和するネクシレイターの因子が組み組まれ、増幅も行う。
サタンや英雄に対して恐ろしい斬れ味を発揮、対象となる者は本来の力を発揮出来ず……また、関連した品すら容易に破壊する。
「な、なんなのだ!あの剣は!」
サンディスタールも自分の起きた違和感を覚える。
自然と自分の速力が落ちている事にも気づいた。
アリシアは再び、左手に”来の蒼陽”、右手に”サタン・アック・バルムンク”を手にして、サタンに一気に近づく。
激しい連撃の応酬で地面が抉れ、大地が裂け、サタンに重い一撃が入る。
サタンも必死で翼や腕でガードするが、その一撃はあまりに重く悶えそうになる。
一撃一撃が体に芯にまで響き軋ませる。
アリシアは天高く右腕を上げ、”サタン・アック・バルムンク”斬りつけ、サタンは左腕でガードする。
アリシアは続け、左脇構えで”来の蒼陽”を振った。
サタンはそれを左脇でガードしようとした。
だが、その瞬間、サンディスタールの目の前に何かが落下していた。
それをよく見るとサンディスタールの左腕だった。
だが、気づいた時にはアリシアの斬撃がサンディスタールの胴体に鋭い一閃を奔らせる。
「がぁぁぁぁぁ!」
サンディスタールは”潜在集合無意識”の力を借り、腕を再生させる。
だが、その間にアリシアの右腕の”サタン・アック・バルムンク”からの3太刀目の袈裟懸けが放たれる。
サタンは思わず、右腕でガードするが、その紙でも斬られたように宙に舞う。
サタンは更に悶絶、腕を回復させる。
だが、まるで呪いでも付与されたように斬られた箇所の痛みが尋常ではなく……その部分の魔術の行使が封じられたと確信した。
「おのれ!おのれ!おのれ!調子に乗るなよ!小娘!」
サンディスタールは口から細い無数のレーザーを放ち、牽制する。
更には”概念魔術”である”プライド・バイト”と言う””自身の高慢を具現化して、物理ダメージと精神ダメージにする概念”を具現化した無数の断末魔を上げる骸の軍団がアリシアに迫り、更に”魂魄魔術”である”ソウルダガー”と言われる”対象の魂にダメージを与え、与えたダメージ分、WNに変換する”蒼白い光の短剣が無数に発射され、”破壊魔術”である”対消滅砲”と言う光線を無数に発射した。
「ザ・キング・ワールド!!!我、以外の全ての行動は赦さん!」
更には周囲の空間に”時空魔術””概念魔術””因果魔術””破壊魔術”の”世界展開”系の複合魔術である”ザ・キング・ワールド”を発動、時間を止め、アリシアとサンディスタールとの間に無限の空間を形成、敵が絶対時間に対して、何らかの意志の情動を見せた場合、敵は一方的に破壊、更には意志や行動を0に戻し、サンディスタールへの攻撃もこの”世界展開”への干渉も全て0にして、こちらが攻撃する間、アリシアはこの空間で起きた出来事を記憶と認識ができない様に”世界展開”を展開した。
アリシアが止まった世界でサンディスタールの攻撃が無情にも迫り……しかも、アリシアが何をしても干渉を受けない鉄壁の守備も完備されていた。
「そんな事は無駄です」
アリシアはそれを宣言した瞬間にその術を一蹴して、即座に”神破壊術”と”神概念術”の複合魔術である”世界破壊”を行使して、即座にその世界を破壊した。
本来、どんな術であっても干渉されるはずのない世界をアリシアは容易に砕いた。
更にアリシアは一度距離を取り、鋭敏な機動などを宙を駆けながら回避を取り、アリシアに向かって、飛翔する全ての攻撃を”
「馬鹿な!あの世界から抜け出す等!」
「次元が低いんです。当然でしょう」
確かにアリシア以外が相手なら、通じていたかも知れない。
しかし、あの技が通じるのは格下だけだ。
3次元の存在に使ったなら最強、100次元の存在に使っても最強だろうが、アリシアの前では”世界展開”していると見做せない……ただの路肩の石だ。
邪魔なら、蹴り飛ばせば良いだけなのだ。
アリシアが回避している隙にサンディスタールは仁王立ちして、4枚の翼を円形に変形させた。
すると、サンディスタールの周りから紫色の光が放たれた。
「ならば!これはどうだ!かつて、人間が開発した。人の意志を集中させる接点となる兵器。今、貴様にもう一度、あの絶望を味あわせてくれる!」
サンディスタールは”潜在集合無意識”を介して世界中の人の意志を収束させる。
人の根源的な意志に触れれば、神は再びに闇に堕ちると踏んだからだ。
オクスタンを思わせる巨大な突撃槍が左右の円形内に1本ずつ形成され、それが因果魔術”である”因果逆転”により、絶対命中するように魔術を行使する。
「喰らえ!」
2槍のオクスタンが発射された瞬間、”因果逆転”が起き、オクスタンの2槍がアリシアに直撃、ネクシアリア周辺に眩い紫光を放つ。
機体にはダメージは少ないだろうが、それを主には置いてはいない。
要はアリシア・アイという神の魂を破壊できれば、それで良い。
あれだけの悪意なき悪意を持った人間達の本質に触れれば、心はタダでは済まない。
かつて、世界の意志をこの装置と”英雄”が使い、地球壊滅寸前の攻撃を人々の意志を集め、物理エネルギーに変換した。
本来は世界中の人間の意志等、集めてもそんな事は起きない。
何故なら、世界中の人間の意志と装置の共振を起動キーにサンディスタールの力も借りた”潜在集合無意識”が人間の感情を煽り”奇跡”を意図的に起こしただけなのだ。
人間でも”奇跡”が起こせると高慢にさせ、”奇跡”を起こした”英雄”とそうでない者との確執を植え付ける為にしただけだ。
今回も同じだ。
”潜在集合無意識”が人間の感情を大きな起爆剤代わりに利用、人間の感情を爆発的に煽り増幅、それをサンディスタールに渡しているのだ。
この瞬間の世界のどこかで”英雄”がサンディスタールの高慢に踊らされ”奇跡”を行使、”理不尽”を現出させ、サンディスタールに力を与え、人理を愛する人間達は平和の為と喜んで神に反逆、サンディスタールに加担、今のように神を殺す為に力を貸した。
本当に平和が欲しいなら神に付き従えば良かっただけの話であり、本当に平和を望んでいる者達が世界の因果で地球壊滅の危機等、呼び寄せはしない。
ただ、自分の命が危機に瀕して慌てて非常食を用意するような愚か者と同じであり、サンディスタールにとって人間は扱い易い神を殺す為の道具に過ぎない。
そんな人間が常日頃から平和の事など考えているはずもない「暖かい人の心の光」が”奇跡”を起こしたと思い上がった”英雄”がそんな事を言っていたが、そんなモノは口先だけで誰もそんなモノは持ってはいない。
自分が不利になったから慌てて「暖かい人の意志」と言う仮面を被っただけで本心はそんな事を思っていない。
”英雄”がそう感じるのはただの錯覚であり、自分の意見を合理化する為の言い訳に過ぎないのだから、サンディスタールからすれば滑稽な話だ。
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