ジュネーブの動向
地球圏
観測していた移動型ブラックホールが消え、次々と人々が軍人の誘導でシェルターから出て来る。
ジュネーブ本部を基軸に情報を1本化して何故、移動型ブラックホールが消えたか原因を調べていた……というのもシェルターには軍事要塞ではないので外の様子を窺い知る術が限られていた。
移動型ブラックホールが迫って来た時点で世界中の人間がシェルターに篭った為に消えるまでの間に何があったか誰も確認出来ていなかったのだ。
唯一分かったのは光すら湾曲するブラックホールが蒼い光の柱に引き裂かれた事しか分からなかった。
そこで本部は最後にブラックホールが確認された宙域の情報を集める事に専念していた。
人工衛星の画像やセンサーの計測値、地上天体観測所などの情報資料が本部に集められ臨時編成された分析チームにより精度を持った情報へと徐々に昇華していく。
ブラックホールの影響で荒くなっていた衛星の画像が各種情報により研磨され、鮮明な動画に変わっていく。
そして、彼等は1つの動画を見た。
そこにはADの艦隊が列を成しブラックホールを形成しながら迫り、それに立ちはだかる様に1機のAPが刀を装備して待ち構えていた。
その姿はGG隊の隊長であるアリシア・アイ中将の隊長機ネクシルと識別信号から把握出来た。
すると、ネクシルが天高く刀を上げると蒼い光が迸り、莫大なエネルギー刀と化した刀を艦隊に対して振り翳した。
それによりブラックホールは両断され、生き残ったADは地球圏に向かい……その後を追う様にネクシルの大気圏に突入、カメラ越しにインドネシア群島上空で何かが爆発する様な発光を最後に動画が止まる。
ジュネーブにいる将官達はしばらく口を開けたまま呆然とした。
徐々に理性を取り戻すと頭を抱え込む。
「この件についてどう思う?」
ジュネーブの本部の総司令となった3均衡代理のグール元帥はあまりの非現実的な出来事疑問を部下に尋ねる。
見た限り明らかに自分の領分を超えている節があったからだ。
彼には一体何が起きたのか理解出来なかった。
だが、それは皆も同じだった。
誰もが俯き加減に頭を悩ませており皆、同じ心境だった。
それでも知恵を絞り、全員で状況を整理するとこうだ。
ADが大群で来た。
ブラックホールがAD艦隊によるもの
それにGG隊が迎撃行動をした。
その後だ。
GG隊の隊長機はAPではあり得ない様な攻撃でAD艦隊を撃墜した。
なんで?
ブラックホールの謎は解明出来たが更なる謎という名の脅威に突き当たっていた。
敵のADがケルビムタイプである事から相手が宇宙統合軍である事は自明であり、そのADには高度な重力制御技術を有している事は彼等でも知られていた。
それが地球軍の予測を超えていただけの話だ。
だが、GG隊のAPに関しては全く理解出来なかった。
カイロ武装局のサーバーに検索をかけたが、明らかにスペック上のネクシルのスペックを大きく超えている。
コリアス少将が口を開く。
「これを見る限り、GG隊で配備されているネクシルは登録された機体の改良機とされているが明らかに性能が逸脱している」
続けてベクトル少将が顎に手を当てながら、項垂れつつ口を開く。
「まるでADや核兵器を超える超兵器にしか見えない。GG隊にはそんな機体が少なくとも4機以上存在する。GG隊のネクシルは最早、戦術的な兵器ではない。ADに迫る程の戦略的兵器だ」
そこでグール元帥は思い詰めたように今の状況を整理した。。
「つまり、GG隊という1部隊は現在、地球統合軍に迫るほどの軍事力を抱えた国家と位置付ける事も可能か……」
グール元帥と2人の将官の中である懸念が過ぎる。
彼等が何を考えているのかにもよるが、この部隊がもし、政府に反旗を翻した場合、勝てるのかと言う考えだ。
ここまで軍に秘匿した技術を持ち、かなり独自の行動を取る彼等の行動をジュネーブですら全て把握はしていない。
外部独立部隊と言う名目上、ジュネーブすら監視対象にされているからだ。
逆に外部独立部隊と言う立場を名目に好き放題やっている様にも見える。
確かにGG隊登場後、世界のテロ行為は右肩下がりで沈静化傾向にある。
調査では武力だけではなく復興や治安維持、秩序維持などの為にメンタルセミナーなどを開くなど多方面で活躍を見せている。
特に人の精神教育とも言える新しい着眼点をつき、治安維持の一環として柔和や謙虚や謙りなどを人々に教育し人々を変える事で治安が向上したデータもあった。
だが、逆にその善なる行いに隠れ、悪業を仕出かすのではないか?と不安からなる疑心がGG隊の行いを彼らの目に悪のように見せる。
精神教育も民衆誘導とも思え、誘導した民を先導し巨大武力を背景に何か大きなテロ行為を働くのではないか?と彼等の中でGG隊の得体の知れなさからなる疑念がコリアス、ベクトルとグール元帥の中で湧き上がる。
「やはり、これだけの武力を開示しないのはおかしい。そもそもどこから調達したのかも定かではない」
「これだけの戦力を持って何もしないのは考えられない。数ヶ月前の第2次宇宙軍侵攻戦役ではその勲功の所為でそこまで疑念を抱かなかったが、やはり戦力が過剰すぎる」
「これだけの戦力で何もしない筈がない。況して、この短期間で力をつけ過ぎている。何か戦略的な災害を起こすに違いない」
彼等の中では不安からなる疑念でGG隊に対する偏見から成る犯罪シナリオを作り始めていた。
証拠は後で犯罪シナリオに沿って集め、それらしい調書を作れば良いと考えている。
彼等が今、一番求めている情報はGG隊が何者で何を目的としているかだ。
それを調べようとオペレーターにGG隊の目的について調べる様に指示を出す。
具体的にはGG隊関係者がテロ行為を思わせる言動やGG隊関連の計画、特に戦略的な意味合いの強い作戦などをネットワークを駆使して探す。
人工知能やオペレーターを駆使して情報資料を集めていると、オペレーターの1人がネットからある論文を拾いモニターにその論文が表示した。
<<タイトルは「ネクシレイターの脅威仮説とオメガノアの齎らす未来」著作名ユウキ・ユズ・ココ>>
そのように書かれた論文だった。
どうやら、人工知能が論文内に「GG隊」「計画」「破壊」「行為」と言うワードからこの論文を見つけた様だ。
彼等はその論文の内容を読んだ。
その論文は科学的な推論に基づいた論文で彼等でも理解出来た。
読めば読むほど彼等のGG隊に対する畏怖心が増していく。
しかも、それを裏付ける様にアリシア・アイの肉声入りの動画と音声データまで論文には添えてあった。
オメガノアが発動せずとも世界の余命は1時間しかない
その発言の意図は分からなかったが、アリシア・アイがネクシレイターと呼ばれる存在で人間と争い会うしかないと断言している事から彼等は異形の怪物が人間を攻撃してくると不安からなる先走る気持ちにその様に判断してしまった。
今の彼等は無意識化でアリシアは敵と固執に囚われ、思考が誘導された事でアリシアと争い会う道を取ってしまった。
もし、本当に和平を望む者ならアリシアがオメガノアが発動せずとも世界の余命は1時間しかないの真意を問いただすだろう。
だが、彼等は目先の不安と固執に囚われ「アリシア・アイと触れ合わなくても分かる!あいつは危険だ!そのくらい察しないと」と一般人並みの理性的思考しか出来なかった。
自分達の見えているモノが全てと判断する人間の高慢さ、故にこの僅か2時間もしない間に3均衡承諾の元にGG隊討伐隊が編成されたのであった。
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