子供達への謝罪
「あなた達の気持ちは分かるよ。わたしが活躍し過ぎて戦いに感化されてしまう。だから、自分達の身を守らないといけないって思えた。あなた達はいざって時に自分の身を自分で守らないといけないと思った」
子供達は黙って聞く。
その通りで何も言い返せない。
自分達は無力な子供だ。
いつか、悪い大人にまた、何かされた時に自分の身を守らねばならないと生存本能が訴えたのだ。
加えて、アリシア・アイと言う強い女性に対する憧れ彼、戦いに対する感情が根差してしまうのだ。
「今の時代、平和に怠けて逃げ遅れるのは良い事ではないからその気持ちは間違ってない。それにあなた達は私の為にもそうしようとしたんでしょう?」
子供達はその言葉に力無く頷いた。
その通りではあった。
自分達がアリシアの脚を引っ張る足手纏いになりたくない。
だから、強く成って彼女を楽にさせたいと彼らの中にはアリシアへの恩情、故に先走ってしまった節があった。
「私の足枷にならない為に……私の助けになる為に……強くなろうとしたんでしょう?その想いは悪い事じゃない。寧ろ、嬉しいよ。わたしには勿体ないよ……ごめんなさい」
アリシアは頭を下げた。
子供達はアリシアの態度に困惑する。
寧ろ、謝るべきはこちらなのは彼らでも理解できたからだ。
「わたしがあなた達を不安な思いをさせたからあなた達が不安だったんだよね。ごめんなさい」
子供達の間で周知の事実だったのは「アリシアは悪くない」という事だ。
彼女がいなければ自分達はどんな悲惨な目に会っていたかわかるからだ。
寧ろ、感謝する覚えるほどだ。
「今のわたしにあなた達に想いを止める権利はない。そうだね。少しだけ遊ぼうか。戦い方はまだ早いけど基本となる事なら教えてあげる」
子供達は戸惑いながらも彼女に尋ねる。
「本当に良いの?」
「ただし、お姉ちゃんの言う事を今後ちゃんと守る事だよ。それと何か尋ねたい事があったら「天使さーん」って叫びなさい。天使さんが来たらその人の言う事を私だと思ってよく聞くこと。もう守れるよね?」
アリシアはそっと微笑みかける。
子供達は「うん!」と力強く答えた。
彼等にとってアリシアとは強くて優しいお姉さんの様な憧れの存在だ。
そんな人から直々に教えて貰える事を彼等は心から喜んだ。
「なら、まずはしっかり朝ごはん食べる事だよ。食べないと強くはなれないよ。ほら。そうと決まれば大人しく席で待ってるんだよ」
子供達は元気を取り戻した様に食堂に入っていく。
アリシアはその後ろ姿を見送る。
そこへ隠れていたクラリスが顔を出す。
「ごめんなさい。つい聞き入ってしまいました」
「良いよ。あそこで割り込まなかったのは正しいよ」
「その、すいません。昨日からあの子達「強くなるんだ!」だから訓練すると言い始めて、わたしは止めようとしたんですが、止めきれなくて……」
「仕方ないです。あの子達は純情だから……一度決めたらそう簡単に止まりません」
「それよりは右手の怪我は……」
そう言われてアリシアは右手をクラリスに翳すともう既に傷は治っており、血が止まっていた。
「本当に凄いですね」
「大したモノでありありません。少し鍛えれば誰でもできます」
「でも、痛いのでは?」
「本当はあの程度では傷は付かないんだけど、彼等にはアレが覿面でしたからね」
(それにしても少しやり過ぎたかな?子供に血の描写を見せるべきではない気もしたが彼等にはあのくらいやらないと熱情止められそうにはなかったからな……次があるならもっと上手い手を考えるべきかな?)
などと考えているとクラリスが何か納得したように微かに微笑んだ。
「やはり、あなたはこの世界に来た神なのですね……」
クラリスは突然、確信をついたような一言を発した。
そのように言えると言うのは見込みがあると言う証拠だ。
「傷の治りもそうですが、わたしなりにGG団体を調べてあなたの行いやさっきの子供達への接し方で確信が持てました。あなたは生ける神なのですね」
「中々の慧眼ですね。その通りです。それであなたのわたしに何を望みますか?」
「願わくば、あなたの救いに参加したい。永遠の命を受けたと思います」
彼女の心は清く、とても澄んでいる。
子供達を丁寧に育てていた事もあり、子供達の為に貪欲を捨てて子供達の為になるように諭す言葉を投げ掛けていた事を全て知っている。
そんなクラリスなら自分の命をあげても良いと思えるのだ。
「ならば、あなたの言葉通りになるようにあなたに永遠の命を……」
こうして、アリシアの”神言術”でクラリスもまた、永遠の命を得る事になった。
クラリスには教徒として今後とも子供達の養育に励む様に言伝手、アリシアは子供達を食事を取らせてから一度、シオンに戻った。
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