3神の戦い
3神は与えられたAPを駆り、ユースティティアは襲い来る敵を剣で切り倒し、ロキとアフロディーテを守る。
ロキとアフロディーテはユースティティアやワルキューレ、アリシアに補助系神術をかけながら契約により高度に上がったロキの”幻術”とアフロディーテの”歌”で彼らを支援する。
「一斉に羽ばたけ、空を駆け、海を駆け、
アフロディーテの”神言術”から派生した”神歌術”で味方にはバフが付き、敵にはデバフが加算される。
味方は体が熱くなるような感覚に襲われ、敵は耳障りなのか耳を塞ぎ、アフロディーテを殺そうと迫る。
”神歌術”は全ての”術”やそこから派生した"スキル”の原点である”神言術”に最も近い術であり、歌に限定した”言葉”と言う万物創造を駆使する高度な術であり、安定性が他の術より低いが、”神言術”よりも高く、万能性は”神言術”に次ぐ性能なので、効果は絶大だ。
その分、敵に狙われ易い関係上、複数の剣がアフロディーテを突き刺したように見えたが、その瞬間、アフロディーテの姿は霞のように消える。
困惑する偽神達の真横にはまだ、歌い続けるアフロディーテの姿があり、別の偽神達がそれに突貫……だが、刺してもまた霞のように消える。
そして、それがまるで起爆合図だったように地面に刻印された術式が起動、爆発と共に偽神達を焼き殺す。
「こいつ、確かに攻撃性は偽神以上だが、その分、理性に欠けるな。なら、罠に嵌めるのはそう難しくはないな」
ロキはアフロディーテの幻を複数体用意しながら、足から走らせる。
”神刻術”で罠を張り、偽神達を巻き込んでいく。
偽神達は確かに強いが、知性的な面が欠如しているのか、全く学習せず、馬鹿の一つ覚えに突貫を繰り返し、爆散していく。
中には耐久力に優れた個体もいたが、だいぶ弱り果てていたのでロキの”神火炎術”でも焼き殺す事が出来た。
ただ、ロキも苦悶な表情を浮かべていた。
ただ、敵は馬鹿でも敵将は馬鹿ではないらしい。
新たに”偽神召喚”を行ったらしく。
今度はギガントと言うオーディンが創った人工神まで召喚した。
それも100体だ。
空は飛べないらしく地上を地響きを奏でながらアフロディーテを消そうと進軍してくる。
ロキは例の如く罠を仕掛け、爆散させる。
だが、爆炎の中から相も変わらず、その巨体を震わせこちらに進軍してきた。
「チッ!硬すぎるだろう!」
ロキが知っているギガントは確かに強いが、ロキの”神火炎術”を2発分を耐える耐久力しかなかった。
今はあの時よりもスタータスが上がっているので一撃で倒せるはずだが、どうやらギガントの強化だけは通常よりも強めに設定されているらしい。
これも”ヘルドラゴン”とかいう奴のエネルギー供給だろうか?などと考えているとギガントは一斉に目からレーザーの様なモノを照射し始めた。
”幻術”に対する対抗策だろう。
姿が見えないなら手当たり次第に周囲を焼き払えば良いと言う力技だが、今までの奴らよりは知恵が回っている。
その一撃で洋館は炎上、使用人達は決められた避難経路から逃げていく。
だが、それでもレーザーの留まる事を知らず、辺りを焼き払う。
アフロディーテの”幻術”に目掛けて手当たり次第に攻撃していく。
「きゃあ!」
そのレーザーがアフロディーテのワイバーンTYPE W MkⅡの胸部コックピットを掠め、彼女は思わず、膝をつく。
「くそ、馬鹿力で手当たり次第に……」
ロキは恨めしく思っている反面、本当に合理的なやり方だと思っていた。
手当たり次第に乱雑に撃つのでこちらは動きを読み難く、こちらは3人の為、少人数を面制圧するのはオーバーキルだが、確実に殺せる。
「だが、わたしには関係がない事だ!」
そう宣言して仁王立ちしたまま剣の柄を握り、地面に突き立てるユースティティアの姿があった。
「まだ、ここで倒れるわけにはいかんのだ!友の残した想いに報いる為にもな!」
アフロディーテの歌に気を惹かれているギガント達はユースティティアの接近に緩慢になり肉迫を許す。
ユースティティアは一気に踏み込み剣を舞うように剣を振り抜いた。
ギガントはその耐久力がまるで無かったかのように断面から切断された。
「どうやら、魔剣アストライアの効果は効いているようだな」
”魔剣アストライア”はユースティティアの裁きの化身だ。
あらゆる罪人のあらゆる抵抗を無に帰して断罪する為の剣。
防御無視、バフ効果無効など相手のありとあらゆる守りも守りに付随した付与も全て無効にして歯牙にもかけず、斬り捨てる。
例え、どれだけの耐久力、防御力があろうとその一撃の前では全ては裁かれ、即死する。
仮にも格上そうな相手には通じないとも思ったがどうやら、ユースティティアの力も上がっている事もあり、通じているようだ。
「さて、まともに戦えるのはわたしだけか……なら、なんとかしてみせるさ」
ユースティティアはワイバーンTYPE W MkⅡのスラスターを噴かせて突貫する。
ギガント達は流石に接近してくるユースティティアを警戒してレーザーを照射する。
ユースティティアは単調なそのレーザーを見切り、右に左に避けながらギガントに肉迫する。
「まずは1つ!」
目の前にいるギガントに向けて飛び上がりながら、上段から勢いよく斬りつけ両断する。
動作が一瞬止まったのを見逃さず、背後から自分を殴りかかろうとする左右の敵を振り返り様に胴体と下半身を両断する。
「2つ!」
至近距離になった事でギガントが包囲しながら一斉に殴りかかる。
だが、ユースティティアはその全てを見て機体を一回転させ、胴体を両断する。
ギガントの死体が重厚な音を立てて地面に落ちる。
「3つ!」
そのまま流れるように襲い来るギガントに突貫、刃を胴体に突き刺す。
「ジャッジメント・レイ!」
ユースティティアが剣に神力を流すと”剣技”と合わさった”裁き”の”神概念術”で構成された光が直線状に展開され、ギガントの体を穿ち、絶命する。
”神概念術”は以前に剣などの道具として用意する事で自らのイメージを現実の事象として反映する術だ。
仮に”死”の概念ならその者が抱く”死”の価値観、過程、経緯と言ったその者が心証を大きく反映する術とも言える。
仮に”魂”を消す事を”死”と定めるなら、そのようになる。
”肉体”と”魂”と”意志”を消す事が”死”と定めるなら、そのようにもなるが、要素が多くなると複雑さを増すので難易度は高い。
反面、戦闘中の即時構築が難しいので事前の用意が必須となり易い系統の術でもある。
とは言え、ユースティティアのそれは”どんな相手でも自分が定めたなら確実な絶命を与える”と言うかなり高度かつ”神概念術”に対する妨害すら無効かつ貫通すると言う反則的な域にまで達している。
そして、そのまま剣を薙ぎ払いギガントの一団を両断する。
「凄いな……アイツ、あんなに強かったか?」
「明らかにわたし達の中で一番力の上がり方が顕著ね」
ネクシレイターとなる者は”過越”や”浸礼”によって一度、霊魂的な意味合いで殺される。
新たな魂へと書き換わり、並行世界の同一人物がいたとしてもそれとすら隔絶された存在となる。
その際、生前の行いに応じてネクシレイターとしての能力に還元されるのだ。
繭香のように忍耐が多かった人生なら忍耐を繰り返した分、膨大な神力に還元されるなどだ。
ユースティティアは3人の中でのその上がり幅がかなり顕著であり、ギガント相手なら最早、無双と言って良い力を発揮している。
「4つ!」
薙ぎ払った光線を更に1回転させ、周りから詰め寄るギガントを光に呑み込み一掃していく。
気づけばギガントの群れは一掃されていた。
「終わったのか?」
「いや、まだだ」
ユースティティアのそれが合図だったようにギガントの破片が揺れ動き、宙に集まり始める。
破片同士が集まり合いそれが巨大な人型を形作る。
「おいおい、まさか……」
「ジャイアントギガント……とでも言えば良いのか?」
そう呼ぶに相応しい巨大なギガントが彼らの目の前に現れていた。
「ジャッジメント・レイ!」
ユースティティアが剣先から”裁き”の光を放ち、敵のギガントに光線を放つ。
だが、敵のギガントの力が強大化した所為なのか、反則域に達したユースティティアと”剣技”と”神概念術”の合わせ技は抵抗され、”裁き”の光が胴体で弾かれてしまう。
「硬いか……」
アフロティーテの歌やロキの”幻術”とデバフは効いているはずだが、敵のギガントはそれでもなお、強大な力を秘めていた。
「生半可な攻撃は効かないか……」
なら、やる事は決まっている。
最大の技をぶつけて倒すしかない。
「アフロ、ロキ!時間を稼げ!」
「アレをやるのね」
「あぁ、アレをやる!」
それでアフロディーテとユースティティアが首肯した。
アフロディーテは「アレ」が分からないロキに対して、時間を稼ぐように促した。
ユースティティアはその場で動きを止め、神力は溜め始める。
ロキもそれを見て大技を放つ事だけは分かった。
ギガントもそれが理解できるようで動きを止めたユースティティアにレーザーを放つ。
だが、ユースティティアは霞のように消えたと思うとさっきよりも多くの分身が現れ、その中を視覚などを偽装してアフロディーテがユースティティアをお姫様抱っこして連れて行く。
「まさか、わたしがお姫様抱っこするとは思わなかったわ。今までされた事もないのに……」
アフロディーテは頬を膨らませ、可愛らしく憤慨してみせた。
そんな風にされたいと思っても上位神である自分を高嶺の花として敬遠され、そう言う事をしてくれる男性はいなかった。
いや、男性でなくても惹かれる相手なら誰でも良いのだが、そうしてくれる人はいなかった。
ユースティティアに頼むと言う手もあったが友人にやって貰うのも何か違うので頼みはしなかった。
まさか、自分が彼女にやるとは思いもしなかった。
しかも、歌いながら逃げると言うのがインドア派のアフロディーテにはかなりキツイ労働でもある。
「第14段階……解除開始。第1拘束解除、第2拘束解除……」
ユースティティアが機械になったように呪文を唱える。
これはアストライアにかけられた封印を解く為の呪文。
かつて、制御を誤りとある太陽系を丸ごと1つ滅ぼしてしまった事から2度と使わない為に14の封印を施し、力を制限したアストライアの真の力を解放している。
その時の彼女の敵を倒す事にのみ力を注ぐ断罪の機械と成り果てるが、その力はかのオーディンやウラヌスが束になっても勝てないと言われるほどの力を秘めている。
「そろそろね」
ユースティティアは既に第8拘束まで解除している。
14拘束まで解除した瞬間に問答無用で手敵に攻撃する分、発動まで使い勝手が悪い。
まず、ほとんど動けない。
しかも、意識もこの世にないようで、敵が目の前にいても避けたりもしない。
仲間が死んでも何も感じず、ただ淡々と機械のように振る舞う。
アフロディーテはユースティティアを立たせながら待機させる。
あと、5秒しない内に発射される。
それでギガントとの勝負はつく。
だが、アフロディーテは戦士ではない。
これがアリシアなら5秒だろうと油断しないが、5秒で全てが覆る事があるのをアフロディーテは知らないのだ。
すると、ギガントの力が高まり確実にユースティティアを見つめていた。
”幻術”などに目もくれず、その正眼はユースティティアを見つめていた。
ギガントは右腕を振り翳すとその右腕が延長線上に伸び、ユースティティア目掛け、飛翔する。
アフロディーテは思いがけたい行動に体が強張り身動きが取れなかった。
訓練されていれば、咄嗟にユースティティアを突き飛ばして回避させる事もできただろうが、戦士ではない彼女にはそれが出来なかった。
それが歯痒くて仕方がなかった。
目の前に友人がいるのに何も出来ずただ、呆然と眺める事しか出来ない。
ようやく、手を伸ばした時にはすでにギガントの拳がユースティティアの目の前まで来ていた。
(間に合わない!)
だが、そんな彼女の願いを聞き届けたのか、ユースティティアにロキが身を挺して飛び込んだ。
ロキのワイバーンTYPE W MkⅡは左下半身が破損しながらユースティティア諸共、洋館に激突しながらユースティティアの機体を無理矢理、自立させる。
そして、丁度その時、14拘束までの解除が完了、ユースティティアの目が力強く開き、ギガントの目から赤いレーザーが放たれようとした瞬間、アストライアが神々しく輝きユースティティアが叫んだ。
「ジャッジメント・アストライアァァァァァァァァ!」
敵のレーザーが放たれたと同時にアストライアの光がレーザーと干渉し合い激突する。
だが、ネクシレイター化した彼女の強大な力に圧され、レーザーが押し負けながらギガントの上半身を抉り、下半身にも莫大なエネルギーが流れ込み下半身が燃える。
ギガントの体は焼かれていき蒸発、消滅していく。
そして、この技は裁きを行う技であり、ギガントと定義される存在は存在そのモノを消され、この宇宙に限ってはもう2度と現れる事はない。
仮にミトラであってもこの宇宙にいる限りは2度とギガントを複製する事は出来ない。
こうして、ユースティティア達の戦いは終結した。
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