同盟締結
「ふ……」
ロキは椅子に深く持たれる。
彼も流石に疲れたのだろう。
彼からすれば、駄々をこねる大きな体をした子供に1から懇切丁寧に教えたのだ。
これがユリアやユマリア、ネロくらいの歳なら仕方がないが、流石に大きくなっても駄々をこねる子供に教えるのはアリシアでも疲れる。
例えば、ロア ムーイとか言う正義の味方気取りの馬鹿とかだ。
「そう言うわけだ嬢ちゃん。同盟の話、引き受けてくれるか?」
「それは別に良いけど、具体的に何をすれば良いの?」
「そうだな。一度、本国に顔を出して欲しいな。友好的なところを見せたい」
「良いけど、大丈夫なの?わたしの事をよく思ってない人もいるんじゃない?」
「何故、そう思う?」
「だって、わたしはオーディン殺してるし……」
ロキはアリシアが何を言いたいのか、合点がいったようで「あぁ、そう言う事か」と頷いた。
「オーディンの事なら恨んでいる者は僅かだ。お前やオレに危害が及ぶ事はない。それで争いになるリスクもない」
どうやら、彼なりにアリシアと言う人間を理解しているようだ。
アリシアはともかく、ロキに迷惑がかかったりせっかく、平和になった世界に自分が入る事で争いになるのは御免だったからだ。
「寧ろ、オーディンが消えて清々している奴の方が多いかもな」
「そうなの?」
「オーディンはな。力はあったんだが、性格がお世辞にも良いとは言えなかった。ワルキューレに対する扱いがぞんざいだったり、横柄なところもあった。戦時でなければ奴が代表を務める事もなかっただろうさ」
戦争勝利の為には、多少問題があってもオーディンを頼るしか無かったと言ったところだろう。
言動罪や集合生命因果論の事を考えるとオーディンは社会不適合の部類だった。
それ故に強力な異才があったのかもしれない。
天才ほど頭が壊れているとも言うが多分、その類だったのではないかと思う。
ただ、人間から見ればアリシアも十分壊れているだろうから人の事は言えないとも言える。
「まぁ、とにかく、嬢ちゃんに悪いイメージを持っている奴は少ない。況して、今の嬢ちゃんに歯向かって得する奴もいない。そもそも、歯向かう気すら起きないだろうな」
(それはどうなんだろうね……ポセイドンなんてノリノリでわたしに歯向かってたけど……ロキが入れば確かに歯向かう可能性は薄そうだけど、まぁ……ロキとポセイドンでは生命として本質的に違うからかも知れないね)
神の地位を受け継いでようやく、わかった事だが、ロキとグン、ゲイルスケグルや他のワルキューレとオリュンポスの神達は似ているが僅かに違うところがある。
差異で言えば、2%くらいの差だが、それだけの差があれば猿と人間くらいの差は作れるほどだ。
その差によりラグナロク神はアリシア寄りの生命体であり、オリュンポス神がサタンよりの生命体と言うイメージに近くラグナロクがZWNを使う反面、オリュンポスはSWNを使う傾向にある事も理解した。
尤もオーディンに関しては例外で今、思えばアレはSWNを使っていたと言えるだろう。
覚えている限りロキともワルキューレとも違うと言える。
情報が少ないのでハッキリした事は分からない。
ただ、この差異に気づきアカシックレコードに検索をかけたが、情報が遮断された事から彼らに関してはサタンが何か関与していると考えられた。
ただ、断片的にわかったのはラグナロクの神は偽神に部類されるが、それとは別称で”抑止神”と言うカテゴリーが当てはめられていた事だ。
それ以上の事は分からなかった。
アステリスに聴こうとも思ったが、忙しいらしく問い合わせる間もない。
偽神に関しては謎が多いままだ。
そもそも、どう言う経緯で誕生したのか謎だ。
宇宙で生まれた生命体とは全知全能の神に似せて人型として作られる。
誕生の過程は世界により調整され、違う過程を経るが最終的に人型になるのだ。
異星であろうと地球人と多少差異はあれど殆ど、同一規格の筈なのだ。
宇宙神のように魔術を基本的に使えない。
例外的に悪魔契約でもすれば別だが。
だが、宇宙神は生命体でありながら神のように魔術と言う奇跡の力を行使できる。
しかも、聴いた話では生まれた時からデフォルトで”身体変化”スキルが使えるらしい。
生まれながら魔術が使える生命体は宇宙的にはいないはずだ。
それにより日常生活形態と戦闘形態のサイズ差調整が行えると聴いた。
多くの謎を偽神は抱えているがこれ以上詮索の余地はない。
アカシックレコードが使えない以上、ラグナロクにでも行けば分かるかも知れないが現状は地球圏を落ち着かせてからだ。
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