アリシアの質問
「ねぇ?こっちも聞いて良いですか?」
今度はアリシアが彼等に問う。
2人は「何でしょうか?」と聞いた。
「お二人は何故、軍にいるんですか?動機は何ですか?」
「自分達がいる動機ですか?」
「うん、そう」
前々から聴いては見たかったのだ。
リリーや第2連隊の面々とは色んな話を聴いて見て来たが、彼らの戦う動機とかは聴いた事はなかった。
どうも、アリシアの中では統合軍にはツーベルトのような狂人や正気ではない人間しかいないようなイメージしかない。
ルシファー事変の時も……あの亀を戦った時に邪魔をするし、AD戦でも友軍から攻撃されるし剰え、宇宙神の抑止力とも言える自分を殺すとか正気とは思えない。
指揮する人間もそうだが、一般兵士達がどう思っているのか知りたかった。
アリシアの考えでは正気ではない行動をすると言う事は等しく末端の人間も正気ではない。
どれだけ口先で正常と謳おうと、ぼろが出る。
因果量子力学でもそうなっている。
「自分は大学の奨学金制度を受けた事できっかけでした。キツイですけど、退役後の社会的な地位も保証されますから」
「自分は軍に入る以外に生きる道が無かったのです。軍に入れば生活面が安定してますから」
「それが理由ですか?」
「それだけでは中々、居にくい所ですよ。そうですね。後は身近な何かを守りたいと言う気持ちかも知れません」
「身近な誰か?」
「それは自分も同じです。何度か実戦経験していると軍の仕事が辛くて辞めて別の仕事に就こうとも考えました。でも、自分が居なくなれば周りにも影響が出る。それで仲間の誰かが死ぬのが嫌だ。守りたいと思っていましたね」
「政府の正義とか平和の為とかでは戦っていないと言う事ですか?」
「少なくとも、自分達は違います」
「オレ達は中佐の様に優秀ではありませんから、やれる事なんて高が知れている。だから、手の届く者だけを守るので手一杯なんですよ」
この人達も基本的に自分と変わらない。
アリシアも手の届く者だけを守ろうと足掻いて、その先に唯一無二の力を得た。
自分を守り、シン、フィオナ、リテラ、子供達と届く範囲が広がって、今の自分がいる。
彼等と自分は根本的に変わらない。
統合軍の兵士は皆、頭の可笑しいキチ〇イの集まりと思っていたが、そうでもないようだ。
自分が会った今までの兵士は権利と欲に汚れた軍人ばかりでそれが大多数だと思っていた。
リリーや第2連隊の様な軍人の方が希少であり、大抵の軍人が統合政府の正義を信じて人類の希望や未来とやらを守る事に重点を置いた狂信者達と思っていた。
だが、完全にそうとも言い切れないと思えて来た。
それに彼らはこっそり耳打ちしたのだ。
「永遠なる命を受けたい」と
どうやら、もう1つの目的の為にアリシアに近づいたらしい。
ネットの流れている情報を整理して、アリシアがそう言う事が出来ると理解してくれたから声をかけてきたらしい。
ネットに書かれている噂に流されず、情報の真偽を考えるのは非常に難しい。
大抵の人間はよく知りもしないのにネットの意見や噂で考えを流される。
サタンがそのように仕向けるように画策しているのだが、人間の落ち度ではある。
物事の正当性があっても大衆的な噂などで善を悪とする。
アニメとかで正義の味方が「人々の平和と自由のために戦う者であるオレが正義だ」などと言うだろう。
ただ、それは大衆主義に流された方が楽だからという怠惰な考えから来るものだ。
そう言っておけば、碌な証明もせず、恰も正義の味方のように振る舞えるからだ。
それでは詐欺師と変わらない。
仮にその大衆の心が「争い」「妬み」「恨み」の心が多ければ、その正義の味方はそう言った「平和」と「自由」を守った事になる。
見た目だけの「平和」と「自由」であり、平和を装った欺瞞と欺瞞を横行させる自由を本質的に守った事になるのだ。
人はよく考えず流される。
サタンはそう言う人の習性を利用して、永遠の命とか楽園への切符を阻もうとする。
そうされると神サイドが力をつけてしまうからだ。
その点、この2人はそう言った意見に流されず、情報をよく整理して論理的に判断している。
良い因果を持っていると評価せざるを得ない。
話を聴くとこの後、外出をすると言うのでバビにいるアリシアが据えた司祭の元に向かうように勧めた。
その後、天使達の報告で彼らは契約を果たしたようだ。
その後、色んな人と話してみて分かった。
みんながキチ〇イ的な考えているわけではない。
生きる為に軍に入るしか無かった者もいれば、気弱な自分に打ち勝ちたくて入った者もいる。
中には人類の平和の為と言う者もいた。
だが、その過程でみんな思いが1つになり多くの人が「身近な誰かを守る」に成っているようだ。
アリシアは何処かでホッとした。
自分も含めて人間とは弱い。
出来ることは限られるし、それ以上を求めれば破滅を呼ぶ。
人間とは破滅を呼ぶ者ばかりと思っていたが、こうして自分の手の届く者を守ろうとする姿勢はアリシアの考えを変えた。
その僅かな守りが、全体的に大きな者を守るのだと感じた。
尤も優しい人間である事と魂が綺麗な事はまるで違う。
似ているが違うのだ。
自分と話した彼等の全てが優しさは分かるが、決して穢れていない訳ではない。
少なくとも破滅を望む人間が多くいるからこそ世界が滅びに向かっているのだ。
アリシアの想像よりもそう言った類の人間が少なかっただけで話した人間の大半が破滅主義者だった。
でも、だからこそアリシアは守りたいと欲するのかも知れない。
ほんの僅かでもいる平和を願う者がいるならまだ、闇の中で彷徨う者がいるならかつて、アストリスが自分を救ったように救いたい。
自分が英雄と成ってそれが分かったのなら
尤も好き好んでやりたいとは思わない。
やはり、
この世界の事も気にかけねばならないが、地獄の事も気にかけねばならないし、可能な限り地獄の獣を間引きしないとならない。
ただ、人間は争いが大好きなので地獄を間引きしても殺した魂を地獄に落とし、それが獣となり獣の貪欲と凶暴性は生前以上となり、その意志の影響が巡り巡って3次元に干渉するのだ。
世界は繋がっている。
あまり、言いたくはないが人間の不始末を自分が尻拭いする羽目になるのだ。
辛くて当たり前だが、この仕事を嫌いになった事はない。
それで救える命があるならアリシアは全てを捨てても構わないと思えた。
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