眠る子供.3


「スフィヤ今日は招待してくれてありがとう」

「うん」

「些細だけど誕生日プレゼントだ。僕の家では12の誕生日を迎えた子供にみんなこれを送るらしくて、僕も昼に君と会った後に造ってみた」

そう言って銀細工のピアスを渡すティファン。


「おじさんも持ってるの?」

「ああ、ほら。ここについてるだろう」

「誰から貰ったの?」

「……おじさんのお父さんからだ」


「じゃあ僕のお爺ちゃんだね」

「……そうだね。そうなるね」

「お爺ちゃんは何処にいるの?」

「分からないな。僕らは12で成人して旅立った後は会うことはないんだ。何処にいるのか、何をしてるかもわからないよ」


「じゃあ12歳になったけどお父さんに会えた僕は運がいいね!今日はいいことばっかりだ。おやすみ、お母さん、お父さん」

そう言って笑うと、貰ったピアスを握りしめてスフィヤはさっさと寝床に潜って2人に背中を向けてしまった。


「……あなたが父親だって、認めたのね」

「驚いたよ。夕食前にあったときは、嫌われてると思ったから」


「夕食前にも会ってたって、スフィヤから聞いたわ。何をしてたの?」

「僕をつけてたらしいんだ。やっつけるつもりだったって」


「えぇ!……危ないことはするなと毎日のように言ってるのに…」

「見事だったよ。負けてしまった。真剣勝負なら僕は死んでいたかもね」


「滅相もないこと言わないで。スフィヤはそんな子じゃありません」

「そうだね。最後にとどめを刺せる状況になっても、きっとこの子は優しいんだろうな。負けた時に大人気なく泣いてしまってね。それを見て、スフィヤがむしろ焦って僕を慰めようとするんだ」


「あなたが?泣いたって?」

「ああ。負けて悔しかったとかじゃないよ?ただ……実の子供とここまで分かり合えないのかと、そして君とも。でもきっと全て僕のしてきたことの結果なんだと思ったら、涙が出てしまった」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る