特需.2
しかし市場の女たちの不安はなんのその。その後も都から訪れる人喰い討伐を目的とした男たちの流入は止まることがなかった。
むしろ犠牲がでたことで、それも国の紋章を持った軍人という、一部の人間にとっては大きな価値のある犠牲だったことが影響しているのかもしれない。
「我こそは」という男たちで、村はいつしか溢れかえっていた。村の周辺の平地だった場所は、次々と小屋が建てられて、そんな男たちの新しい村のような形をした宿泊所までできた。
これではもはや軍隊の野営と同じ規模である。軍隊の野営と違うのは、彼らの多くは公人とは限らず、いわゆる夜盗狩りなどを生業にしている者も少なくなかったので、とにかく村に金が落ちたことだ。
軍人でさえも酒や女を求めて村の一本道の繁華街に詰めかけるというのに、これだけ人数がいれば村はもはや小さな町と名乗っても良いのではないかと誰もが思うほどであった。
掘立小屋が並んだ平地の真ん中に、ポツリポツリと大きな布張りの建物が姿を現し始めた。洗濯場で聞いた噂では、近隣の貧しく乾いた村の子女が酌婦として働きに来ているらしい。
もちろん、そういうことも含めてという意味での酌婦なので、噂に興じる女たちの目には蔑みの色が隠せていなかったが、反面、同じくらい面白がっているのも見え透いていた。
この村は幸いというか、古くから続く仕事に従事する家が多いので食いっぱぐれるような者があまりいなかったことと、親を亡くしたり、頼れるもののいない者は元々村の酒場で働いていたので、村の中の何かが大きく変わったということはないが、ラズの家の窓からも見渡せた景色は、ほんの数週間前とは随分と変わってしまった。
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