第71話 バイト先の彼女とデートプラン②
ひとまず斎藤から行きたいところも聞けたことだし、ネットを使ったりしながら色々考えてデートプランが完成したので柊さんに意見をもらうことにした。
柊さんにはデートプランが完成したら教えるよう言われていたので、多分快く相談にはのってもらえるはず。
いつものようにバイトが終わったタイミングで話しかけた。
「柊さん、この前話していたことで、少し相談があるんですけどいいですか?」
「……はい、構いませんよ」
柊さんはスッと真剣な表情を見せ、どこか覚悟を決めたようにこちらを向いた。
「実は、あれから彼女をデートに誘うことに成功して、来週デートをしに行くことになったんです」
「そうなんですね。それはよかったです」
「はい、結構緊張しましたが、誘った甲斐がありました。彼女もすごい嬉しそうにして誘いにのって来てくれたので」
「え、そんなに嬉しそうにしていたんですか?」
少し驚いたように目を丸くして固まる柊さん。何かそんなにびっくりするようなことでもあるのだろうか?
「ええ、まあ。身を乗り出して顔を輝かせていましたから、楽しみにしてくれているんだなーって思いました」
「そ、それは確かに分かりやすいですね」
「はい、流石に俺でも彼女が喜んでくれているのは分かりました」
俺から目を逸らし、身体を縮めるようにして伏し目がちに少しの間俯いてしまう。だが、コホンッと咳払いをしてまたこちらを向いた。
「それにしても随分と嬉しそうですね」
「そりゃあ、好きな人にそこまで一緒に出かけることを楽しみにしてもらえたら嬉しいですよ」
「そうですか」
好きな人が自分と一緒にいることを楽しみにしてもらえている、それはとても嬉しい。ついにやけそうになると、柊さんは何か眩しいものでも見るようにレンズの奥の瞳を細め、クスッとほのかに微笑んだ。
「それで確か相談でしたよね?前に話した積極的にいく際は教えるという件についてですか?」
「あ、はい、そうです。一応デートプランを考えたので、それについて意見を貰いたいなと」
「はい、いいですよ。まず最初はどこに行く予定なんですか?」
「最初は、無難に映画にしようかなって思ってます」
色々考えたが、映画が1番良いと思う。理由としては、その後の話の話題に出来るし、何より今話題の小説原作の映画があるので、興味があったからだ。斎藤も前にちらっと興味があるようなことを言っていたので楽しんでくれるはず。
「映画ですか。いいと思いますよ」
「はい、そこでは積極的に手を繋いでいこうかなって考えています」
「い、いきなりですか!?」
噛みながら普段より大きな声を上げる柊さん。やはり早すぎただろうか?だが、前回成功していることだし、さらに意識してもらうためにはまずは前回と同じラインに立たないといけないと思ったのだが……。柊さんの反応にだんだんと不安になってくる。
「だめ……ですかね?暗いですし、肘掛けのところで手を繋いでみようと思ってたんですが」
「い、いえ、それならいいと思いますよ。そうですか、最初から手を繋ぐんですね……」
ポツリと呟き、きょろきょろと視線を左右に慌ただしく揺らし続ける。だが、急にピタッと固まり、何か気付いたように顔を上げた。心なしか頰がほんのりと朱に染まっているように見える。
「どうしました?」
「ま、まさか、手を繋いだ流れでそのまま暗闇に乗じてキスとか!?」
「いやいやいや!そんなことしないですよ!何言ってるんですか!?」
そんな急展開起こす勇気もないし、そもそもまだそんな仲じゃない。柊さんが変なことを言い始めたので慌てて否定する。
「あ、そ、そうですよね。すみません。積極的にいくと言っていたので。変なことを言いました」
「い、いえ」
流石に妙なことを言った自覚はあったのか、少し恥ずかしそうに顔を伏せてそっぽを向いた。
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