第68話 旅行した。④



 旅行回最後です!


 それではお楽しみください(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾



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 扉を開けると彩が露天風呂に入っていた。もちろんタオルを巻いて。もちろんね……


 俺はさっと身体を流して一緒に風呂に入った。なんだかんだこれで2回目だ。


 露天風呂自体はかなり大きく、数人入れるような広さがあるので家みたいに身体が触れ合うこともない。


 ただ家と違って外であるのと、景色が絶景であるのでこちらの方が俺は好きかもしれない。


『なかなか良い景色だな、東京じゃ見れないから新鮮な感じがする。』


『そうだね、なんか落ち着くね。あ、そうだ。日本酒飲む?』


『ああ、一杯入れてくれる?』


『うん、ちょっと待っててね……』


 彩は俺に日本酒を注いで渡してくれた。お風呂に入りながらお酒を飲んだことはないけれど、中々乙なものだ。酒が進む。


『酒が美味いな…… なんかこういうのも良いな……』


『そうだね…… 日頃の疲れが癒されるよ……』


 こういう非日常だから言えることもある。だから俺は今まで気になっている事を聞いてみようとした。


『そういえば聞きたかったんだけど最近なんかあったか……?入院してから少し様子が変な気がするんだ……』


『え……? そんなことないよ……』


『無いなら良いんだ…… その廣瀬と何かあったとかなら相談に乗ろうと思ってな。』


『…… あの…… 聞いてくれる……?』


『ああ、何でも言ってくれ。俺と彩の仲だし。』


『私康太君が倒れた時実は雄大さんと食事してたの……でも全然楽しく無くて…… それに康太君の事悪く言うし…… もう私雄大さんと別れようと思うの……』


 正直ここまで重い話だとは思っていなかった。廣瀬と別れるなら俺と偽装結婚する意味が無くなる……


『そうだったんだ…… 今まで辛かったな……』


 彩は何も言葉を発さなかった、そして泣いていた。今まで抑えていた感情が溢れ出したみたいだった。


『ちょっと康太君の側に行っても良い……?』


『ああ……』


 彩は俺の側にやってきた。


『ちょっと肩にもたれるね……頭も撫でて欲しい……』


 俺は内心ドギマギしていた。肩は地肌で触れ合っているし、そこに彩の頭がある。それに頭を撫でている状況だ……


 女性経験のない俺からするととてつもない状況だし、相手が相手だ……国民的女優の美川彩だ。


 ただ傷ついている相手に手を出してさらに傷つけるなんて最低だし、俺は冷静になるように努めた。そして暫くの間彩の頭を撫で続けた。


『ありがとう!話してスッキリしたし、元気出た!』


 暫くして彩はそう言った。それから2人で日本酒をちびちびと飲みながら日本庭園を眺めて露天風呂に浸かり続けた。


 それぞれ違うタイミングで風呂から上がり、寝具へと着替えた。風呂上りにはやっぱりコーヒー牛乳だと俺は思うので、彩が着替えている間に俺は売店へ行って2本コーヒー牛乳を買った。フルーツ牛乳も捨てがたいけど。


 そして帰ってきて彩にコーヒー牛乳を渡した。


『あ、やっぱりお風呂上がりはコーヒー牛乳だよね!子供の頃良く飲んだなぁ……』


『彩のはフルーツ牛乳かコーヒー牛乳かで悩んだけど、こっち買ってきて良かったよ、それじゃあ飲もっか。』


 俺はコーヒー牛乳を半分くらい一気飲みした。温泉上がりのコーヒー牛乳ほど美味しいものはないな……


『やっぱりめちゃくちゃ美味しいな。』


『うん、最高!康太君ありがとね!』


 俺達はコーヒー牛乳を飲み終わった後はもう夜も遅くなっていた事だし寝ることにした。


 露天風呂に入っている間に仲居さん達が別室に布団を敷いてくれていたみたいだった。


 ただ俺達は夫婦という設定なので同じ部屋に並べて敷いてあった…… またこれか……ハプニング耐性◎になった。


『まあこれは…… このままで寝ても良いよね……うん。康太君と結構一緒に寝たしね……』


『まあ今更恥ずかしがるほどでも無いな……じゃあ寝るか。』


 俺達はそれぞれ布団に入り寝始めた。俺はもう慣れたのかそこまで緊張せずにすぐ寝ついた。


 そして朝目が覚めると彩に抱きしめられていた……しかも向かい合っている形で……まあこれも少しは慣れたな…


 改めて彩の顔を近くで見ると、化粧もしてないのに凄く綺麗だし、あんなに忙しいのに肌荒れもない。自己管理が徹底しているんだろう。


 とりあえずもう7時過ぎだし起こす事にした。


『彩、おはよう。もう朝だよ。』


『ん? 康太君おはよう…… って私何してるの!ごめん康太君……』


『いや、大丈夫だよ。愛ちゃんにもやられたしな。そろそろ起きようか。』


『そ……そうだね……』


 俺達は起きてから着替えを済ませて、仲居さん達が用意してくれた朝食を食べた。俺は朝は普段洋食だけど、和食も凄く美味しい。今度和食に挑戦してみるか。


 そしてチェックアウトの時間が近づいてきた。


『彩、そろそろ旅館出るよ。用意終わった?』


『ん、終わったよ!それじゃあ受付まだ行こっか。』


 そして俺達はエントランスの受付まで行った。チェックアウトは彩の仕事なので俺は荷物を持って車へ詰め込んだ。そして彩のプレゼントを助手席のグローブボックスの中へ入れた。


 そして車をエントランスの前へ向かった。既に彩はチェックアウトが終わったみたいで待っていた。俺は彩を拾い、そのまま家に向けて出発した。


『箱根旅行楽しかったね、康太君!』


『ああ、ありがとうな。リフレッシュ出来たよ。』


『私の方こそありがとうだよ? 康太君と一緒じゃなかったら楽しくないしね!』


『そう言ってくれて嬉しいよ。あのさ、彩に少しお礼がしたいんだ。』


『ん? 何を?』


『俺が倒れてから色々と面倒見てくれただろ? それに箱根旅行も凄く良かった。だからお礼がしたいなって。』


『そんな…… 』


『まあ気にしないでよ。助手席のグローブボックスを開けてみてよ。』


 彩はグローブボックスを見て、ゆっくり開けた。そして箱を手に取った……


『これは……何?』


『開けてみて。気に入ったら嬉しいんだけどね。』


 彩は包装を外して、箱を開けた。中身は黄色のイヤリングだ。


『えっ……これって……』


『その……凄く欲しそうにしてたからこっそり買っておいたんだ……』


 運転中で余り見えないが彩は涙ぐんだ表情になっていた。


『康太君…… ありがとう!一生大切にするね!ていうか早速つける!』


『そこまで気に入ってくれたら何か嬉しいな。え、今つけるの!?』


『うん!ほら、どう似合ってる?』


 赤信号で止まってから彩を確認した。控え目に言っても凄く似合っている。


『ああ、めちゃくちゃ似合ってる……買って良かったよ。』


『ふふふ、本当にありがとうね!これから毎日つけるから!』


『そんなに!? 確かに似合ってるけど他のやつもつけた方が良いんじゃないかな?』


『私にとってはこれが1番だから…… この旅行は凄く良い思い出になったよ。』


 彩はとびっきりの笑顔でそう言ってくれた。ただ俺にとっても素晴らしい思い出になった。そしてプレゼントを渡した時の彩の表情が俺へのプレゼントだったように思えた……




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