大好きだよ♡
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「ありがとう…! ウルイ、大好きだよ♡」
彼に心から感謝した。
一方、ウルイの方も、大したこともなく済んで心底ホッとしていた。
『やっぱり、元気であることに勝るものはないな……』
そんなことも思ってしまう。もし彼女を喪っていたらと考えると、胃の辺りがギューッと締め付けられる気さえする。
だから、
「いや…イティラが元気でいてくれれば俺はそれでいい……俺の方こそありがとう……」
さすがに改まって『好き』だとは言えなかったものの、正直な気持ちを素直に口にできた。彼女を見ていると、そういうことが当たり前に言葉にできてしまう。
それがお互いの心理に良い影響を与えているようだ。
どちらも相手にとってより良い存在であろうと心掛けているからだろう。これが、どちらか一方が自分にだけ都合のいい関係であろうとしていたら、こんなに上手くはいっていないはずだ。
なにしろ、自分じゃない存在がすべて自分に都合よく動いてくれるなど有り得ないからそれがストレスになるし、都合よい存在であることを望まれている方だっていい気はしないからそれがストレスになる。つまり、互いにストレスを与え合う関係になってしまうと。
人間関係が上手くいかないのは、結局はそういうことなのだ。夫婦でも家族でも、誰か一人だけがいい目を見ようとすれば、その関係は長続きしない。
ただ、やはり、人生経験を積んでいる側が、未熟な者の成長を長い目で見る姿勢は大事だろう。なにしろそれだけ経験を積んでいるのだから、経験が浅い者が自分とまったく同じにできるはずがないことも分かるだろうし。
そして、大人であるウルイが自分をあたたかく見守ってくれている実感があるから、イティラも彼を慕うことができる。
今回のことでイティラはますますウルイのことが好きになっていた。
当然か。身近に他に誰かがいたところで、ウルイほど彼女を労わってくれる者はいない。
そういう意味では、キトゥハはウルイと変わらず彼女を労わってくれるだろうが、あれ以来、顔も合せていないので、ぼんやりとしか覚えていない。
「なんか、男前な人だったってだけは覚えてんだけどね」
なんとなくキトゥハの話になった時、彼女は頭を掻きながらそんな風に言ったりもした。
ただ、同時に、
「あの人がウルイを助けてくれたんだなって思ったら、『ありがとう』って気持ちになる」
とも言った。
イティラには、ちゃんと、他人に感謝する気持ちも育っていることがそれで分かり、ウルイはホッとしたりもした。
こうして、二人の暮らしは、再び平穏なそれに戻ったのだった。
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