空気も文字も読めない世界で皆は笑う

作者 蒼(あおい)

読字障害×かるた! 障害を持つ人々の“生き辛さと希望”を描いた傑作です

  • ★★★ Excellent!!!


 多くの人に是非、読んで欲しくて、レビューさせていただきます。

 この作品は“字の読み書き”や“対人関係”に困難を抱える──“発達障害”を持つ、男の子の物語です。

 発達障害児には、よくある話ですが、この男の子も当然のように……イジメを受けたり、叱責されたり……そんな辛い幼少期を過ごします。
 そんな主人公は、ある日、“競技かるた”と出会い、地獄のようなこの世の中に、自分の居場所を見つけ……といった内容です(その後の展開は是非本文を!)。
 
 この物語は……“発達障害”当事者であれば、誰もが共感出来るようなエピソードに溢れています。

 当たり前の事をどうやっても出来ないもどかしさ! “出来ない”を補うための──いじましいまでの独自の努力…… 親や医者にすら理解されない時の無念と絶望…… そして他者の優しさ、その尊さ…… 

 それら全てが、とてもドラマチックに描かれてゆきます。
 飛び石の上をポン、ポン、ポーンと跳ねて行くような、心地良いリズムの文体で。

 
 この作品の素晴らしい点は1)強く共感出来る内容、2)終盤で語られる前向きなメッセージ、3)躍動感溢れる、テンポ良い独特の文体──圧倒的な読み易さ、だと思います。


 特に3)については、作者さまの障害特性を逆手にとって編み出した技巧、だと思うのですが、2)のメッセージをまさに体現したものであるように感じました。

 生き生きと、手に汗握るような筆致で描かれる“競技かるた”の試合のシーンは、まるでスポーツを題材にした、優れた青春小説のようでもあります。
 簡潔で分かり易い説明が添えられているため、“競技かるた”をまったく知らないわたしでも楽しめました。


 そして、これは主人公が社会に出るまでを描いた、ビルドゥングスロマンでもあります。

 自分を知り、この世の中に居場所を見つける。自分が輝ける方法を探しながら……。


 最後まで読み終わり、あらためてタイトルを眺めると、その表題の意味がすっと心に沁み入る思いがしました。


 発達障害当事者、及びそのご家族に是非、読んで欲しい……──障害者当事者の声を代弁しつつ、同時に障害を持つ、同じ仲間たちにエールを届けるような──優しく温かな光に満ち溢れた──傑作です。

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