第279話 完全な八つ当たりだが知らない。

「ただいま〜」

私はヘロヘロになりながら家の扉を開ける。


「お疲れさん。大変だったのか?」

「うん…?もうヘトヘトだよ」

私はテーブルに居たお父さんにヘトヘトのアピールをする。


「千歳、所でツネノリとメリシアはどうした?セカンドに行ったのか?」

奥から出てきたルルお母さんが2人の事を聞いてきた。


「あー!!」

しまった忘れていた。


「どうした?」

「ドフお爺さんのところに送ったままだった」


「なんでまたドフさん所に2人が居るんだ?

何があったんだよ?」


私は簡単に経緯を話した。


「あぁ…、カーイに軽くあしらわれたメリシアの鎧を直してもらうためにドフさんの所にメリシアを送って」

「それで今度は限界まで鍛えてもらって力尽きたツネノリをガミガミ殿の所に送ったと」


「うん…」


「そんでヘトヘトの千歳は2人を忘れて帰ってきた。

そんなミスをするなんて、一体何があったんだ?」

「うっ…」


「どうした?何か問題か?安心せよ。私達に言うがいい」

ルルお母さんがとても心配そうに私を見てくれる。


言いたいけどさっきの事を思い出すと顔が赤くなる。


「千歳!?どうした!何があったんだ!?」

お父さんも必死になって心配してくれる。


「ツネツギ、ここは女同士の方がいいかも知れん。少し席を外せ」

「むぅ…、まあそれも一理あるか…、千歳。俺は外にいる。

それよりもツネノリを迎えに行くか?」


「…ダメ。やだ。行かないで」

私は下を向いてそう言う。


「…どうした?溜め込まずに言っていいんだぞ」


…言って楽になりたい。


「言って楽になれって」

「ツネツギ!物事には順序と言うものがあるだろう!」

ルルお母さんがお父さんを注意してくれるが、今はお父さんの言葉がありがたい。


「…されたの」


「ん?なんだって?」

「すまん千歳、聞こえなかった。もう一度言ってくれ」


…恥ずかしい。


「ザンネさんとカーイさんに告白されたの!」




………

……………


「「何ぃぃぃっ!?」」

「おい!ザンネって俺と同年代だろ?」

「カーイだって私達とほとんど変わらんぞ?」


「なんだあのクソロリコン共は!?」

「四十の男共が揃って十四の娘に告白だと!?気は確かか!?」


お父さんとお母さんが目の色を変えて驚いている。


「いや、いくらなんでもそれは…、千歳…からかわれたんじゃないのか?」

「…私もそう思って読心の力を使ったら本当の本気だったの」


「おいマジか…」

「いや、そもそもなんでそんな話に?」

ルルお母さんの質問に答える。

私に評価をして欲しいと言われてしたら気に入られた話なんかをする。


「なら年齢を理由に断れば…」

「神如き力で時間制御をすれば若返りで同い年だって可能だし、そもそもカーイさんは神の世界に行って半神半人になっても構わないって言ってくれたよ」


「アイツら…」

「それで?千歳はなんと?」


「人生初めての告白だよ?答えられないよ!

それにあんなに真剣で、私の為なら命なんていらないってあの深い愛情の2人に言われたら軽々しく返事なんて出来ない!」


「…神如き力って不便だな」

「まったくだ、知らなくていい事まで知らなければならんとはな」


「それにあんなイケメンに言われるなんて今後あり得ないかもしれないし…」

「おい」

「落ち着け千歳」


「それで?」

「…今度、ジョマが置いた塊を破壊したら返事を聞かせて欲しいって言われた」


「あー…、大体半年くらいか?」

「え?」


「午後にツネツギとアレコレ試してみたが多分私やツネツギでも半年くらいで破壊は可能だと言う結論に至った」


「嘘…、テツイさんは1年くらいって…」

「アイツはなぁ…過小評価と言うか最初に一番遅くてって時間を言って上方修正を重ねるタイプなんだよ」

「ああ…、だからどんなに手こずっても1年あれば破壊すると言う宣言でうまくコツを見つけたらあっという間に破壊するぞ」


うわー…

まずいなぁ。


「年齢の壁を取り払えるとなると年齢を理由には出来ないし、そもそも誠実な気持ちを見てしまったと…」

「困ったな。まあまだ時間もあるし考えてみろ。それにしてもなんで東もジョマも黙っていたんだ?」


それだ!なんで!?


「ジョマ!!」

「うふふ、ごめんなさいね千歳様。東が千歳様の恋愛を優しく見守ろうって言うの…、だから断腸の思いで我慢してました」

声だけ聞こえてくる。姿を現さないのがなんともズルい。


「ジョマぁぁ…そこは出しゃばってよぉ」

「うふふ、今の真っ赤な千歳様もとても素敵です」

「そうだろジョマ?それにカーイやザンネなら安心して千歳を任せられるよ」


「東さん!!」

「僕は千歳にも千歳を支える存在が必要だとね」


嘘だ。

この含みのある言い方はジョマと…北海道子と東京太郎をくっ付けた事への仕返しだ。


「私にはお父さんにお母さん!金色お父さんにルルお母さん、それに他の皆が支えてくれているから平気だもん!」

「そうかい?でも心変わりってあるかも知れないだろ?」

あってたまるか!

なんで、14歳で結婚を前提としたお付き合いをしなければならないのだ。


「東!洒落で済まないだろう!」

そうだ!いいぞお父さん!もっと言え!


「ツネツギ、良いじゃないか。

千歳に群がる男共をちぎっては投げをしたいんだろ?

早速2人だよ。

ちぎっては投げをしておいでよ」

「バカヤロウ!返り討ちに遭うだろう!」


あ…ダメだ。

そうだよなぁ、お父さんは弱くないけど攻撃パターンが限られているから手数の多いザンネさんとカーイさん相手だと辛いよね。


「千歳!奴らの記憶を消せ!お前への恋心を消し去れ!」

「えぇぇぇ…、なんかそれはそれで重いよ」


「バカヤロウ、俺はアイツらに義理父さんと呼ばれたくない!」

「私も義理母さんとは呼ばれたくないな」


「君達、それは後にしてツネノリとメリシアを迎えに行ってあげなよ…ドフが困っているよ」

「あ!」

「忘れてた」


私はゴメンねと迎えに行くとフィルさんと王様が使ったベッドで2人仲良く手を繋いで寝ていた。

何だ?このベッドで寝るカップルは手を繋がないとダメなのか?


「まったくいきなり来てこれじゃあ起こせねえし、飯も作れねぇし困ったぜ?」とドフお爺さんが言うので「ちょっと待ってね」と言ってお父さんとお母さんにツネノリの外泊を許可して貰って、タツキアのおじさん達に「ちょっと悪戯したい気持ちなの。許して」と言って許可を貰って寝ている2人と、メンテナンスの済んだ鎧をメリシアさんの部屋に転送した。

布団はおばさんが敷いておいてくれたのでそこに2人を突っ込んでおいた。

完全な八つ当たりだが知らない。

今日はそんな気分なのだ。


「恐ろしい事をしやがるな」

「いいの」


そして私は家に連絡を取る。

「ドフお爺さんとお茶してから帰る」

「んあ?」


お父さん達は「あんま迷惑かけんなよ?」と言ってくれた。


「おいおい、嬢ちゃん…」

「千歳。名前で呼んでください。

ツネノリ達の面倒を見てくれたからお昼まだなんでしょ?まだ3時だから向こうはやっているし。ちょっと話聞いて!」


「かぁぁ…、何だよまったくよぅ。こんな爺捕まえて…」

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