第278話 え?え?え?ちょっと待って…え?
2人は私の言葉でちょっと晴れやかな顔をしている。
「じゃあ、僕はザンネが良い人を見つけたら結婚相手を探そうかな」
「お前は王だ。早く跡取りを授からないといけないだろう?」
「そうだね。いや、それにしても残念だな…」
「なんだ、カーイはやはりそう思ったか?」
何だ?2人で何を納得しているんだ?
「不思議そうな顔をしているね千歳」
「うん、何を2人で納得したの?」
「神様でも心は読まないんだね千歳さんは」
「うん、なるべくしたくないからしないようにしているよ」
2人に交互に話しかけられる。
ここの所、心を読んで良かった試しなんてない。
とにかく何を言いたいんだろう?
「ふふ、もしも僕が20歳若かったら千歳さんに交際を申し込んでいたって話さ」
「えぇっ!?」
私?何で今の話から私になるの?
驚いた。カーイさんもザンネさんに似てアイドル顔なのだ。
こんなイケメンに真正面から告白?されるなんて経験はない。
とにかく驚いてしまう。
「ああ、千歳にならカーイをお願いできそうだ。変な話だが勇者の娘となれば血筋に問題もない。それにカーイの事を深く理解してくれている」
「え?え?え?ちょっと待って!」
ザンネさんが追い打ちをかけてくる。
冗談にしては手が込み過ぎている。
「千歳さん、もし良かったらだけど、今すぐにとは言わないから少し考えてみてくれないかい?
もし僕でも君のパートナーになれそうだと思ったら神の力で若返らせるとか神の世界に連れて行ってくれないかな?そうすれば僕は君と同じ半神半人になれるし僕は全力で君を守り抜くよ。
仮に神になっても2人で神になるならそれも悪くないよね?」
「え?え?え?ちょっと待って…え?」
私は恥ずかしさで顔が真っ赤になっていると思う。
いや、カーイさんはお父さんよりちょっと年下なのでアラフォーだ。
アラフォーがティーンエイジャーに告白をするなんて考えられない。
きっと私をからかっているに違いない。
神如き力、読心の力でカーイさんを見て冗談と見抜いてやる!
…本気でした……。
うわわわわ、どうしよう。恥ずかしい。
「千歳さん、真っ赤な髪も素敵だね。それは力を使っている時だよね?
今僕の心を読んだよね?僕は嘘なんかついていないよ。
そうだな、答えは急がないけど、今日置かれた塊が壊れたら返事を聞かせてくれないかな?」
「え?えぇ…、恥ずかしいよう…」
「何も恥ずかしがることはないよ。年の差が気になって嫌だったらそれを理由に断ってくれて構わない」
…いや、時間制御を使えば多分若返らせることは可能なんだ。
大人にしたツネノリを1歳に戻して東さんはお父さんに返していた。
だからそれを理由にするのは何か違う気がするけど、だからってカーイさんを恋愛対象にするって言うのもなんか違う気がするし、そもそも14歳で結婚を申し込まれるってどうなの?
「大丈夫だよ。断ってくれても構わないし、断ってくれたら本気で結婚相手を探すよ。それに僕は断られたからって生涯の友を失いたいとは思わないよ」
「生涯の友?」
「そうだよ。サウス王とドフさんのような仲さ。年の差も関係ない仲だよ。僕は千歳さんの優しさとか心の強さに惹かれたんだ。
自分のパートナーにならないからって切り捨てるような真似はしないさ」
「……うぅ」
「カーイ、あまり千歳を困らせちゃだめだよ」
「ザンネさん!!」
ザンネさんが助け舟を出してくれる。
こういう時にザンネさんの優しさはありがたい。
「千歳はまだ幼いんだ。あまり急に言うと困ってしまうよ」
「ありがとうザンネさん」
「いや、だが若返りが可能なら俺も千歳に交際を申し込んでみるかな?」
「えぇぇぇぇぇっ!?」
「ははは、半分本気で半分冗談さ。カーイと千歳を巡って本気で戦うのは嫌…ああ、千歳の言い分で言えば俺の幸せを掴むためには遠慮は無用なのか…」
やばい。
ザンネさんも本気だ。
待ってよ。お父さんと同い年くらいの人がなんでそういう発想になるの?
「カーイ!正々堂々と勝負だね」
「ああ、ザンネが選ばれても僕は祝福するよ!」
いやいやいや、なんでそんな話になるの?
なんでツネノリはこの一大事にここに居ないの?
あああ、私が送ったんだった…。
そんなニコニコとしている2人とこれ以上いても良い事は無い。
「帰ります…」
「ふふ、別に変に意識しないで普通に人生の可能性として考えてくれればそれでいいよ」
「ああ、別に千歳さんに想いを伝えられただけで十分だからね」
そう言った2人は「気を付けて帰るんだよ」「またね」と見送ってくれた。
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