第276話 千歳を守る事にアンタはお呼びじゃない!!

千歳の光の剣をいなした姿、メリシアとの戦いで見せた姿。

一切の余裕も油断もない。この人は俺が今越えるべき壁だ。


「へぇ、良い眼だね。最初からその眼をすればいいんだ」

「俺は貴方に勝って先に行きます。貴方は俺の壁だ」


「そうだね。さあ、かかってこい」


そう言うとカーイさんは光の剣を精製して向かってくる。

「まずは純粋な速度だ!!」

「くっ」

俺もそのまま光の剣を精製して斬りかかる。

以前、ジョマに見せて貰った乱打戦。

人物が違うがそれと全く同じ絵になる。

一通り撃ちこんだところでひとまず離れる。


「へぇ、追いつくんだ。凄いじゃないか!」

「俺は貴方を超える!」


「じゃあ次だ【アーティファクト】」

「くっ【アーティファクト】」

カーイさんが時のアーティファクトを使う。

俺もそれに合わせて使う。


そのまま乱打戦。

「ツネノリ君、君は複数のアーティファクトを使うんだろ?何でいちいち俺に合わせる?」

「何!?」


「そう言う遠慮とか配慮とかが邪魔だと言っている!」

そのままカーイさんの剣速が跳ね上がる。


「何!?」

「ほら、別に僕は本気になっていなかっただけさ。ちょっと本気を出せばこうだ」


「くそ!【アーティファクト】【アーティファクト】【アーティファクト】」

俺は時のアーティファクトを計4回かける。


「ぐっ!流石にキツい!【アーティファクト】!!」

カーイさんが更に速度を高めてくる。


「【アーティファクト】【アーティファクト】【アーティファクト】【アーティファクト】」

追いつかせるか!このまま斬り刻んでやる!!


「ははは!楽しいよツネノリ君!!」

「くそっ、まだ追い越せない!?」


「このまま戦えば僕の勝ちかな?とりあえずそんなので千歳さんを守るなんて片腹痛いね。千歳さんは僕達が守るよ。僕達はあの塊もそのうち破壊する。そうすれば千歳さんの事は安心だろ?

ツネノリ君、君はメリシアさんと2人で幸せになればいい」

何!?千歳を守る?カーイさんが?

それよりも何をいっている?


「千歳を守るのは俺の役目だ!!アンタじゃない!!やらせるか!!いちいちいちいち上から目線で、兄弟子が何だ!王様が何だ!!千歳を守る事にアンタはお呼びじゃない!!」

剣速を上げる。ただ引き上げるんじゃない。的確に相手の嫌がるポイントを突くんだ。


「口では何とでも言える。戦いでモノを言うのは力だ!!理想を実現できるだけの力を身に着けてから理想を言え!!」

クソ、また剣速が上がる。


これ以上は追いつけるか?

いや、追いつく必要は無い。


要は勝てばいい。

勝負に卑怯も何もあるか。これも俺の力、俺の剣だ!!


「俺には力はある!俺の力を全て受けてみろ!!【アーティファクト】!!」

俺は「究極の腕輪」が無い段階での上限。12本の剣を生み出してカーイさんに向けて放つ。



だがその剣の全てはカーイさんに当たらなかった。

「勝負ありだ。ツネノリの勝ちだ」


俺のあの剣をザンネ先生は一瞬で全て撃ち落としていた。


「いい意思の力を感じたぞツネノリ」

そう言ってザンネ先生が俺を見る。


「勝つことに遠慮をするな。

お前は望んだわけでもなく十分な力を持っているために周りに遠慮をしてしまう癖がある。今までの失態もそこからくるものだ。

今もアーティファクト砲を撃つ事も出来たし、テツイの教えに従ってアーティファクトでカーイを追い詰める事も出来た」

そうだ。

別に持てる力の真剣勝負であれば遠慮をする必要は無いんだ。


「お前はカーイに言われてようやく本気を出せた。これからは遠慮なんかするんじゃない」

「はい」


俺はカーイさんの方を向いてお礼を言う。

「いやいや、今でも十分に強いんだ。この先は遠慮何てしないで全力で向かうと良いよ」

「ありがとうございます」


「ツネノリ、俺が相手をしてやる。今ならいい訓練が出来るだろう。かかってこい」

「よろしくお願いします!!」


カーイさんが離れていく。

そのタイミングでザンネ先生が「突剣で来い」思い切り相手をしてやる。


「…はい。【アーティファクト】!」

俺は突剣を出す。

そして更に火、水、雷、氷の突剣を12本精製する。



「正解だ。お前が時の力を使ってもまだ俺に追いつくことが出来ない。そうなれば勝つために何をするか?…遠慮なんかせずに剣の本数を増やすしかない」

「はい。全力で行きます!」


俺から前に進む。

そして属性の剣を先に出す。

前からだけではなく前後左右も組み合わせる。


「悪くない攻撃だ!」

その攻撃を悠々と回避したザンネ先生は俺に向かって剣を放ってくる。


「どうする?このまま剣を少し別方向に回して俺と乱打戦をするか?それとも…」

「くそっ!」


そう、このままでは剣の本数が足りない。

「【アーティファクト】!【アーティファクト】!

【アーティファクト】!【アーティファクト】!

【アーティファクト】!【アーティファクト】!

【アーティファクト】!【アーティファクト】!

【アーティファクト】!【アーティファクト】!」

とりあえず時のアーティファクトで剣の速度を限界まで引き上げる。


それで攻撃をしてみる。

「いいな!もっと来い!!」

悠々とザンネ先生が剣速についてくる。

そして背後からの剣も悠々と回避する。


駄目だ…真っ向勝負で打ち砕くしかない。


「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」

「真っ向勝負か!良いぞ!来い!!」


突剣対突剣。

だがザンネ先生は時の力を借りていない。

これでもしも援護に母さんやテツイ先生が居たら勝ち目がない。


!!?


「【アーティファクト】!」

「くっ!」


入った。一撃だがザンネ先生に火の攻撃が入った。

そうだ。折角の属性剣から攻撃を出して相手に隙を作る。


だがその後のザンネ先生は甘くなかった。

俺の攻撃に即座に対応をして延々と突きを放ってくる。

こうなると真っ向勝負で相手が倒れるのを待つしかない。


「…うっ!?」

勝負の時は突然来た…。


「まだあと一歩甘かったなツネノリ。体力の限界だ。少し休め…」

「はい…」


力の抜けた俺はあっという間に倒れてしまった。

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