第257話 これが新しい形だろう。

東の説明はサードガーデンに存在するスタッフをどこから調達してどうして行くのかと言う話で、それは俺の案に地球の神様と東の考えを上乗せしたものだった。


「プラススタッフ…、ガーデンや地球で不慮の死を遂げたものに生き返るまでの場所を提供する為の措置としてスタッフになってもらう」

「ああ、ジョマの希望通りの世界なら危険はついて回るが、上級国民としての生が約束されているよ」


「マイナススタッフ…、犯罪者や悪人が罰せられる為の措置…」

「これは地球の神と話し合って服役中の犯罪者や逃げている犯罪者も夢の中でサードに召喚をされて厳正に裁かれてもらうよ。

勿論、罪を背負ったまま死んだ人間も含まれる。

下級国民として生まれてもらって、人を殺したものは殺される危険が常について回る。

人を襲ったものは襲われる。

そうやって犯した罪と同じだけ苦しんでもらうよ」


「それなら東は人を選出する苦しみなんかは無いと言うことね」

「ああ、それにこれは良くできている。

上級国民と下級国民に分ければ下級国民は上級国民を守る事もあるだろう。

上級国民の死のリスクも軽減される」



俺達はコレを素晴らしいと思う。

だがジョマはどうだ?

納得を出来るのか?


「良かったわね北海さん!」

「千明様?」


「みんなあなたの為に考えてくれたのよ」

「え?」

キョトンとするジョマ。


「やだ、またスタッフの為だけに考えたって誤解したでしょう?」

「違うんですか?」


「全員の意見を擦り合わせて誰も嫌な思いをしないで済む世界ができる話なのよ?

悪い人達もサードで罪を償えるの。

無駄に良い人達が選ばれて殺されるわけじゃない。

それこそ北海さんの好きな世界でしょ?」

「……はい、そうかも知れません」

そう言うとジョマの空気が軽くなった気がした。


「よし、じゃあこの方法でスタッフを作ろう。ジョマは千歳と話して世界観を作ってくれないかい?僕は明日からセカンドの死者蘇生とサードの基盤造りに入るよ」

「ええ、やってみるわ。私は先にボウヌイの人達の埋葬をするわ」


「北海さん」

「はい?」


「千歳の事をお願いね。

あの子、どうしても考えが幼かったり、足りない部分があるから、それに何か無駄に背負い込もうとするの…」

そうだ、確かに千歳は14歳にしては出来る方なのかもしれない。

だが、まだまだ考えの甘い部分、感情で動いてしまう部分がある。

千明はそれが気になったのだろう。


「千明様、安心してください。私と東が千歳様を支えます。そして千歳様に私達が支えて貰います」

「そう言ってもらえると助かるわ」


「東、くれぐれも千歳をよろしく頼むぞ」

「わかっているよ。汚れ仕事は全部常継に振るから安心してくれ」


「わかってない!」

その声で皆が笑う。

これが新しい形だろう。


「今日はこんな所かな?千明、先に送るよ。千歳の身体も見えないようにしておくから帰ったとみんな思うはずだよ」

「はい。ツネジロウさんは大丈夫でしょうか?」


「ああ、思いの丈をツネジロウとしてぶつけたからね。今日大変なのはルルと千歳だよ。ノレル達もルルに怒っていたからね」

「マジか…」


「言ったら大変だよ常継」

「行く気を削ぐなよ東」


「ああ、もしもルルに神の手伝いをして欲しかったら自分で頼んでくれよ」

「分かっている」


そう言って俺はVRの装置を手に取る。

「じゃあ千明、行ってくる」

「はい。お気を付けて」


「ありがとう。千明も帰りは気を付けて」

「はい。身一つで来てしまったので東さんにお願いします」


「そうだね。常継が入ったらすぐに送るよ」

「はい、さっさと行ってくださいね副部長」


「くそ…やりにくい」

そう思いながら俺はガーデンに降りた。

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