第256話 絶対に文句を言わせない為に千明と千歳を呼んだな。

千明と千歳を交えたまま話し合いが進む。

やりにくい。


「さて、少し人事的な話もしてしまおう」

「東?」


「社長、昨日お話しした内容でもよろしいでしょうか?」

「これだけ大成功をした君達の考えを私は否定しないよ。

東くんと北海くんに任せる」


「ありがとうございます」

何を言って居る?


「伊加利副部長おめでとうございます」

「なに?」


「常継、君にファーストとセカンドの全権を委任するよ。出世だ」

「はぁ!?」


「お父さん!しゃんとして恥ずかしい」

「くっ」


「僕と北海さんは千歳さんとサードの開発に取り掛かるからセカンドやファーストに時間を割けない。

千歳さんからの意見でサードはセカンドの焼き直しではなく全く新しい世界を創造する事にした」

「4月の発売から逆算すると流石の東部長にも同時進行は厳しいのです」


…コイツの作り方はこっちの1時間を向こうの1年とかにして何百年の時間をかけて世界を作るんだ。

セカンドの焼き直しなら途中で保存したと言っていた世界の基礎を使えばいいのに…

千歳と意見を交わして?

まったく…


「だから常継、君にファーストとセカンドを任せたい。

ただ仕事を渡すだけじゃない。

キチンと君の仕事を評価してある。

給与面でも不満はないはずだよ」


「おめでとうお父さん」

「おめでとうございます。あなた」


…絶対に文句を言わせない為に千明と千歳を呼んだな。

ここら辺がほぼ当初の予定通りと書いた理由だ。

神の使いでも用意すればいいのに俺かよ。


「全力を尽くします」

「よろしく頼むよ伊加利くん」

社長はニコニコして居る。

この笑顔に弱いんだよな。


「じゃあ、この辺で終わりかな?」

社長がまとめに入る。


確かに概要は話した。

サードの仕様に関しては追々報告をすればいいから今話す事ではない。


「あの!」

千歳?


「千歳さん?どうしたの?」

「まだ話はあります!東さん!約束したでしょ?お父さんとか社長さんにキチンと報告するって!」


話?何のことだ?


「千歳…」

「千歳様…」


「東さん、約束したよね?私がサードガーデンに協力する為にキチンと自分の気持ちに素直になって認めるって…」


そう言って千歳は東の顔をじっと見つめる。

東が千歳から目を逸らしたりタジタジで困っていてコレはコレで小気味いい。


「千歳、言わなければダメかい?」

「うん」


「千歳様…、東部長のお気持ちもありますよ?」

「道子さんも東さんの気持ちを知っているし悪い気はしていないでしょ?それに東さんを待っていたら私がお婆ちゃんになっちゃうよ!」


千歳の奴…まさか…


「わかったよ千歳。社長、ご報告があります」

「まだ何かあるのかい?」


「はい。僕と北海くんは仕事だけでなくプライベートでもパートナーとしてお付き合いをさせていただく事になりました」


「なにぃ!?」

「あなた!」

「お父さんうるさい!」


「だってお前、東と北海だぞ?」

俺はつい興奮してしまった。

だがみんな俺をスルーするし口を開いた社長は…


「え?君達付き合ってなかったの?」

「はい?」


「そんなに息ぴったりだったのに?」

「え?」


「イベントの開始日にここで会った時は初めてを装って居たけど前々から会っているくらい顔見知りに見えたんだけどなぁ。

私の人を見る目も鈍ったかな?

でもまぁ、ここで言うくらいに本気だと言うのはわかったよ。

おめでとう。

仕事に私情を持ち込まなければ大歓迎だよ」


「ほら、お父さんもおめでとうでしょ!」

「あ…ああ、おめでとう東、おめでとう北海さん」


「ありがとう常継」

「ありがとうございます副部長」

東の目は面倒な事になったと言っているし、北海は満更ではない顔で照れて赤くなっている。


「10歳差だって上手くいくから気負わなくて平気だよ東くん」

「はぁ…、そうですかね」


あれ?東って俺より年下の天才プログラマーって設定で、今は40だったよな。

じゃあ北海は30か。

悪くない組み合わせだな。


「もし同棲を考えているのなら補助が出るから、遠慮なく言ってくれよ」

そう言ってもう終わりならと社長は鼻歌混じりに去っていく。



「千歳…」

「なに?東さん?」


「この逃げ場のない中で話を振るのは酷くないかい?」

「私はここまで求めたの。

私を半神半人にして第3の神にしたんだから、覚悟決めてもらうの。

本当なら結婚してジョマを東道子にするとこまで要求したかったのに。

それに東さんだってお父さんの逃げ場を塞いでファーストとセカンドを任せたじゃない」


後で詳しく聞いたら千歳は公私共に東とジョマをパートナーにさせる事を完全解決に加えていたらしい。


「東さんを支えられる神様はジョマくらいだし、ジョマを守れる神様も東さんくらいだから仕方ないの」

それを平然と言うとは恐ろしい娘だ。



開発室で改めて5人で話す。


「そう言えば千歳」

「何?お父さん」


「お前は俺には大事な事を後回しにすると言うか…」

「今の事?」


「それ以外もだ、夜中千明にサードと千歳の事を言ったら「千歳から聞きました」って言われたぞ」

「ああ、昨日お父さんがお風呂に入っている時にね」


「俺はタイミングを見た上で意を決して言ったんだぞ」

「それは常継の間が悪いからね」

「そうね。千明様が副部長にチャンネルを合わせてくれているだけで副部長のタイミングはイマイチなのよね」


「ぐっ…、居心地悪い」


「大丈夫だよお父さん。前に地球の神様とやった試験で私以外みんな本質の寝ている状態だったけどお父さんは何も変わっていなかったよ。

今みたいにみんなからガンガン言われていたから大丈夫」

「救いがないだろ!」



「それに何でここに千明と千歳が居るんだ?」

「それは私も驚いたんだよね。

お父さんが出て行ってすぐにジョマと東さんが迎えに来て、サードのために会社に来てくれって言われたの。

お母さんと慌てて用意したんだよ」


「お前らなぁ…」

俺はそう言って2人の神を睨む。


「ちゃんと時間は止めたよ」

「もしこの後に急ぎの用事があれば時間は止めて家までお送りしますわ」


ダメだ…、この2人は同じ方向を向くとルルと千歳みたいに火と油の関係になる気がする。


「千歳…、地球の神様は正しいのかもな。

お前が第3の神としてこの2人が暴走しないように頼んだぞ」

「おっけー」



そしてコレからの話、予定の話をした。

俺がファーストとセカンドの管理者になった事。

俺がやっていた調整役の勇者は本人さえ良ければツネノリとメリシアに頼む事にしようと言う話になった。

コレは世界の壁をどうする事も出来ない以上、2人でなるべく同じ場所にいられるようにする気遣いみたいなモノだった。


「千明も常継を助けてくれ」

「はい。今までのようにログインはズラしつつ別の視点から補助をしていきますね」



そしていよいよボウヌイの話になった。

「北海さん、いや…ジョマは完全解決をしても神の力で埋葬するのは嫌かい?」

「…わからない。東や千歳様がやれと言うなら私はやってもいい」

ん?ジョマの困惑が見て取れる。

どうしていいかわからない感じだな。


「なあ、東。お前はやらないのか?

ジョマが困っているだろう?」


「お父さんってさ、異性関係以外では鋭いよね」

「悪かったな。だが、多分ジョマは立場とか状況から困っているだろう?こう言う時こそパートナーのお前が引っ張ってやらないでどうするんだ?」


「確かにそういう考えもあるわけか…」


「じゃあ、とりあえずそこは後回しにしてボウヌイ自体をどうするか話そうよ」


「そうね。

埋葬はしなければならないし、建物も壊れたままと言うわけにもいかないわよね」


「では常継、君はどう思っている?」

「何かいやに俺に振るな。

俺はボウヌイの横に巨大な共同墓地を作ってスタッフと一緒にジョマが埋葬するべきだと思う。

そして東はルル達と蘇生を進めるんだ」


「でもそんな事をしたら…」

「いいのよ千歳様。副部長は間違っていない」

ジョマが少し困ったような辛そうな顔で言う。


「だが、そのスタッフにはジョマの略歴も伝える。

そしてゼロガーデンで皆が蘇生を目指している、蘇生される事を伝える」


「お父さん?」

「ガーデンの人間は、東に似たのかいい人ばかりだ。

そこまで聞いてジョマを悪く言う奴はいないさ。後は最初と最後にジョマが一言思う事をみんなに向かって言えばいい。

そしてもし埋葬の途中で神の力を使いたくなれば堂々と使えばいい」


「うん、それなら大丈夫だと思う。ジョマはどう?」

「はい…。ありがとう…ございます」


「じゃあ、東さんがセカンドに通達を出してよ。

ジョマの事、お父さんの事、このイベントで亡くなってしまった人達のこと。

それで復興を始めること。

生き返る順番は死んでしまった人順。

小さな子供は親と一緒に生き返らせるから多少の順番変更はある。

そう言うものを全部お願いね」

「わかったよ千歳」


俺はその姿を見ていて何となく地球の神様や東達が千歳を求めた理由が分かった気がした。


「さて次の話は、千歳は既に知っているし、今の千歳には行って欲しい場所があるからそっちに行ってもらおうかな」

「東?」

「東さん?」


「ゼロガーデンでツネジロウがオカンムリだよ千歳。

どうしても常継と一つになる前に今の気持ちを伝えたいと言っている。

珍しくルルにも怒っているよ。

行ってあげてくれないかな?」

「わ、それは大変だね。それでどうしよう?ログインした方がいい?次元移動かな?」


「練習よ千歳様。

ここに身体のコピーを残して本体はガーデン行き。こっちの身体には端末を着けておくから安心して」


「うっ…、やれるかな?」

そう言った千歳がやり方を教わって何とか分身を作ってガーデンに入って行った。


「さて、僕達はサードの話をしよう。

僕と地球の神様はサードのスタッフをプラススタッフ、マイナススタッフと呼ぶ事にしたよ」

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