エンディング一歩前の章○これからの話。

第255話 社長、よろしくお願いします。

俺は酒臭さがなんとか落ち着いて出社をした。

「おはよう常継。千歳の方法は見事だね。

神如き力で時間制御をして睡眠時間を確保して貰えたか」

「ああ、お陰で気にならないレベルだろ?」


「さて、社長がお待ちだ」

「その前に、ジョマは呼べば来ないかな?」


「あら呼んだ?」

「ああ、おはよう」

「おはようございます副部長」


ジョマは悪い表情なんて微塵もなく笑顔そのものだ。

「3回目だ。これでどうだ!」

俺はそう言ってジョマにアイスココアを渡す!


「どうだ!最初からもしかしてと思っていたが俺自身夏場に飲みたくないからと除外していた!」

「副部長……」


これはまさか…。


「ハズレです」

「んぎぎぎぎ…、マジかよ!?」


「でもだいぶ近づきましたよ」

「惜しかったな。常継」


「他には何と悩みました?」

「乳酸菌飲料だ」


「ハズレです。遠くなりましたね。あまり酸味があるのを自分からは飲みません」

「マジかよ。益々わからん」


「ふふ、気長に待ちますね」

「そうしてくれ」


「さ、社長のところに行こう」




「おはよう、3人とも!」

社長は朝からニコニコだ。

それもそうだろう。

開発室から会議室に来る間に閉会式の内容と反響を聞いた。


VRは更に予約殺到。

千歳の裏工作もあったがプレイヤー全員が大成功と思っていてSNS等で「ガーデン万歳!」となったらしい。

そして俺達の大暴れは映画の撮影も可能のデモンストレーションだった事にしてしまい、

更にセカンドガーデンの可能性と評判は天井知らずとなった。

ああ、後はイベント中に少ない社員で仕事を回した事になっていたのだが、それも社内に神の力を使ったこの2人の神様のせいで誰も不思議に思わなかったらしい。

俺は子供達の問題でそれどころでは無かった。


「イベント大成功おめでとう。

そしてありがとう」


「いえ、今回は北海さんと伊加利の活躍あればこそです」

「私の方こそ、東部長と伊加利副部長のお力があればこそです」


「閉会式で話たが、これから我が社は3つのガーデンを推進する事になったよね?」

「あ、社長…、伊加利は裏方の仕事を頼んでいたので閉会式を見ていないのでここでおさらいをしても良いでしょうか?」


「あ、そうなんだ。

じゃあ、すり合わせる為にも話そうか?」


そして社長の話を聞いて結局俺の朝は気が遠くなる所から始まった。


○ファーストガーデンのVR化

基本設定はできて居るが、宿の整備からスタッフの教育からやる事が増えた。

こちらを10月からのサービス開始にする事と責任者を俺にする事で既に社長と神2人の間で話が決まっていた。

○セカンドガーデンはVR化のみと言う話になる。

これはほぼ当初の予定通りだ。

ほぼと書いたのは後で理由を書く。

○サードガーデンの準備。

こちらも予定通りだが一点変更があった。


セカンドで今回やったイベントは基本的に行わないことになった。

基本的にと書いたのは例外的に大量発生する魔物を退治してまわるイベントくらいはやってもいいし、プレイヤーからの要望があればやってもいいかも知れないとなったからだ。

だがスタッフを守る事だけは譲れないので街中での戦闘、街を巻き込んでの戦闘は絶対に行わなくなった。



ほぼ当初の予定通りと書いたのだが、親の俺を差し置いてこの場で「伊加利 千歳」の名前が複数回出てきた事だ。

それもかなり重要な位置づけで…


そもそも特別枠で参加した千歳は千歳として社長に認識されてしまった。


「伊加利副部長にも内緒で奥様にお願いしてお嬢様に参加をお願いしておりました。

若い感性で今回のイベントを感じていただいて貴重なご意見を多数いただきました」


「伊加利は娘さんがイベントに居た事を知ったのは当日コロセウムでの事で、かなり驚いていました」


「え?あの18歳なのに14歳設定の子は伊加利くんの娘さんだったの?

娘さんは今年幾つ?」

「14歳です」


「え?過激な表現は平気だったの?」


「はい、そこを含めて意見を貰いました。

やはり残酷表現の有無はキチンと用意した方が良いとなりました。他にも多数の気になる意見を貰えました」

「VRの初心者枠からも残酷表現の有無は選びたいと言われました」


「成る程、貴重だね。

他のイベントに関しては?」

「はい、とても貴重な意見を頂けました」


「それは良かったね」

「はい。それで社長、お願いがあります」

「副部長のお嬢様、千歳様の感性は我々に足りないモノでした。

是非サードガーデンの為にアドバイザーとしてお迎えしたいのです」


「え?14歳だよね?」

「はい。本人と特別非常勤で伊加利の妻千明の許可は得ています。伊加利も先程話した時には学業を阻害せず彼女の意思を尊重するのであれば構わないと言ってくれました」


「でも、お給料とか勤務内容って…」

「それも話は済ませてあります。

月に一度から二度開発室に来て貰ってすり合わせる他は時間を見てテレビ電話などの方法でかかった時間に対して過不足なく支払わせていただきます」


「社長、お願いします、

私達には千歳様がどうしても必要なんです」


「北海くん?」


「3人で話し合った時の可能性は未知数でした。

僕達には伊加利千歳が必要なんです。

彼女抜きではサードガーデンの成功は夢のまた夢になります。

今のままではただのセカンドの焼き直しでしかありません。

これでは早々にガーデンはプレイヤー達に見限られてしまいます!」


…何この熱量。


「お願いします!」

「是非許可をください!」


「伊加利くん…」

「え?俺?」

「常継!社長に頭を下げるんだ!」

「副部長!あなたはサードガーデンを成功させたく無いのですか!?」


「えぇ…」

本当、何この熱量。

まあ千歳に給料が入る事は悪い事じゃ無い。

それにサードに堂々と関われると言うのも悪い話では無い。


「社長、よろしくお願いします」

「う〜ん…、伊加利くん、公私のケジメはキチンとつけて娘さんを甘やかさないでくれよ。

逆に娘さんをアドバイザーではなく娘としてキツく当たらないようにね」


「はい…」

「ありがとうございます!」

「私と東部長と千歳様で必ず素晴らしい世界にしてみせます!」


「伊加利くん、じゃあ今度娘さんを紹介してね」

「はい…」

何だか釈然としない。


「社長、実は…」

まだ何かあるのかよ?


「千歳様をお呼びしていまして」

「何!?」


そう言うとジョマが扉を開けて千明と千歳が一緒に会議室に入ってきた。


「千明…、千歳…」

「ほら千歳、ご挨拶でしょ?」


「はい。社長さんはじめまして。千歳と言います。

父と母がお世話になっています。

東さんと道子さんから一緒にサードガーデンを作って欲しいと言ってもらいました。

よろしくお願いします」


東を見て「早いね…」と言って驚いた社長は千歳を見て「千歳さん、はじめまして。

私こそいつもお父さんとお母さんにお世話になっています。

千歳さんは今回の特別枠はお父さん達の為にやってくれたの?」と聞いた。


「はい。

父と母は家ではどんな仕事をして居るのか詳しくは教えてはくれませんでした。

それを知った道子さ…北海さんから仕事を知れるチャンスを貰いました。

東さんには父の居ない間に紹介をしてもらいました」

千歳の奴、ここに来るまでに東達と口裏合わせをしたのか?

スラスラとテキトーな事が出てくるな。


「お父さん、怒ったよね?

大事な娘さんを使って試すような真似だもんね」

「はい。

イベント中の打ち合わせはセカンドで行いましたがいつも怒っていました。

危険に見舞われる度に東さんや北海さんに怒っていました。

お陰で父が私をどう思ってくれて居るかがわかりました」


そう言って笑う千歳が俺を見る。


「伊加利くん、利発な娘さんだ。奥さん似かな?」

「よく言われます」


「それでは千歳さん、サードガーデンの事を、東くんと北海くんの事をお願いしてもいいですか?」

「はい。私はまだ子供なのでお役に立てない事もあると思いますがやれるだけは頑張ります」


千歳は社長に気に入られたようだ。

その後は一年半して高校生になったら正式にアルバイトとして雇いますのでよろしくお願いします。と社長から言われていた。

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