第244話 私って乱暴者のダメな子じゃないかな?

「まったく、千明の奴」

「何だまたヤキモチかルル?今は俺が居るんだからいいだろ?」

お父さんは久しぶりにルルお母さんとゆっくりできて嬉しそうだ。


「むぅ、まあそうだが…」

ヤキモチを妬くルルお母さんに私は近寄る。


「ルルお母さん、ジョマからの優遇とご褒美だよ」


「そう言えば先程もそう申していたな。何だ?」

「へへへ、私が居る時だけで更に私の調子の良い日だけなんだけどね。目を瞑って」


「何?」

「いいから〜、お願い」


そう言うと素直に目を閉じるルルお母さん。

よし、次元移動並に大変そうだがやり方はジョマから教わったしイメージも見せて貰った。

ジョマはわざわざルルお母さんだけの為に新しい技を編み出してくれた。


「神如き力、完全解放!!」

「千歳!?」

「何を!?」

「完全解放?」


「大丈夫だよツネノリ、お父さんもルルお母さんも心配しないで」


「だが髪は真っ赤で…」

「バチバチ言ってるぞ?」


「平気、これかなり集中が必要だから邪魔しないで」

私は目を閉じて暗闇に広がる目の前にある光を見る。

この光はルルお母さんの魂。

ルルお母さんの魂は大きくて四つの色になっていてわかりやすい。

見せてくれたジョマの手振りを真似る。


「一つが二つ……二つを四つ!」

魂に手を当てて紫と青、赤と灰色に分ける。

そしてそれを更に分ける。


「出来た!」

「おいマジか?」

「え?ノレル母さん、ルノレ母さん、ノレノレ母さん?」


「いいよ、4人とも目を開けて!」


「何?4人…、うおっ!?ノレル!?ルノレ!?ノレノレ!!?」

ルルお母さんが驚いて後ずさる。


「へへへ、ジョマからの贈り物だよ。私が習ったから私がやってあげるね。でもこれちょっと大変だからいつもって訳にはいかないし、神殿くらいの距離なら離れても平気だけどあまりバラバラになれないし、更に時間制限があって今の私だと6時間くらいが限界なんだ。ごめんね」


「何故謝る?こんな素晴らしい事を大変な思いをしてやってくれるなんて、千歳は本当になんて素晴らしい子なんだ…ありがとう」

「ルルお母さん…」

ルルお母さんが私を抱きしめようとしてくれているのだが横から邪魔が入る。


「うおぉぉぉぉっ!!ありがとう千歳!母ちゃん嬉しいよ!」

「ノレノレお母さん!喜んでくれてありがとう!」

ノレノレお母さんは余程嬉しかったのかツネノリに抱き着いた後は皆の所に走っていってしまう。


「まったく、ノレノレの奴…。千歳、ありがとう」

ルルお母さんが再度抱き着こうとするのだけど…


「千歳ちゃん、本当に凄いね。私と同じ赤い髪なのに私より全然凄くてさ!ありがとう!!」

「ルノレお母さん。私なんてまだまだだよ。今度この前みたいに回復のアーティファクトを上手に使うやり方を教えてくれる?」


ルノレお母さんは「勿論だよ」と言ってくれた後、お父さんに抱き着いてからツネノリの所に行く。


「よし、千歳…今度こそ」そうルルお母さんは言ってくれたけど後ろから私を抱きしめる腕がそれを邪魔する。


「ルル、ルルはいつでも千歳と仲良くできるんだから今日は自重して」

「ノレル!…ああ、わかった。まったく…」


ブツブツ言うルルお母さんはお父さんの所に行く。

「良いじゃないかルル、俺もツネジロウ抜き、お前もノレル達抜きなんだ。本当に初めての2人きりになれる」

「まあツネツギがどうしてもと言うならそれでも良いぞ」

そう言って2人は部屋の隅でニコニコと話をしている。


私は振り返ってノレルお母さんの方を見る。

「ノレルお母さん」

「千歳」


「ツネノリの事はいいの?ツネノリがヤキモチ妬くかもよ?」

「最初に話もしたし抱きしめたからいいの。今はメリシアの手伝いをしている。

千歳…こんな凄いことをしてくれてありがとう。大変だったでしょ?

神の世界でもあんなに悔しい目に遭って沢山泣いて…。

辛かったわよね?でも本当に無事に帰ってきてくれて良かった」

そう言って強く抱きしめて頭を撫でてくれるノレルお母さん。


ん?神の世界?


「神の世界って?何でノレルお母さんが知っているの?あれはクロウが爆散した一瞬の出来事なのに…」


「神様よ、神様にお願いしたの。千歳の苦労と活躍を漏らすことなく知りたいって神殿の全員が頼んだの。そうしたら全部見せてくれたわ」


「え…嘘…」

「千歳?」


「あんなにわんわん泣いたのを皆に見られたの?恥ずかしい…」

「恥ずかしい事なんて何もないわ。千歳は本当に立派。私の自慢の娘よ」


「そうかな?」

ノレルお母さんに褒められると悪い気がしないのは不思議だ。

ノレルお母さんは私を抱きしめる腕を緩めずに話を続ける。


「ええ、あの気持ち悪い酒神も愚かな戦神も、軽薄な神を論破して返り討ちにした姿も素敵だった」


ん?


「後から来た戦神2人をキヨロスと圧倒した姿も、勿論あの万死に値する創造神崩れ2人に怒鳴った姿も全部素敵だったわ」


…あれ?


「千歳は煽るのも冷たい眼差しと厳しい言葉で追い詰めるのも上手で私は感動したわ」

「待って、ノレルお母さん、待って!!」


「何?あのキヨロスをキレさせた時も凄いと思った。ジチ以外の神殿に居た皆が真っ青になってドン引きしても私は誇らしかったわ」

「待って!私って乱暴者のダメな子じゃないかな?」


「平気よ。世界中がそう思っても私はずっと千歳の味方よ。伸び伸びと生きてね」

ノレルお母さんの優しさは底なしなんだけど聞いていると私は相当ヤバいことをしてきたんじゃないだろうか?


「何をいまさら…」

「ノレル様の言う通り、世界中が敵になっても私も東も千歳様の味方ですよ」


私の目の前に東さんとジョマが来た。


「東さん!ジョマ!!」


「来たよ千歳。無事に次元移動も次元転送もうまくいったね」

「うん」


「それに私が作ったルル様の魂を一時的に分割して4人別々にする技も成功して、本当に千歳様は最高です」

そう言って抱き着こうとしたジョマから私を離すノレルお母さん。


あれだ、子猫を守る母猫のような感じ。

その眼でジョマをじーっと見つめるノレルお母さん。


「…今日は諦めます」

ノレルお母さんの圧に負けたジョマが渋々そう言って諦める。


「ジョマ、今日は僕たち2人でこれからの話をしよう」

「そうね東」


おや?

こっちは何かいいことがあったのかな?

そう思っていると奥からジチさんが出てきた。


「もう!準備中だけど煩いよ!騒ぐなら手伝ってよ!!ってうわーーーー、ルル達が4人に分かれている!?」

そこにルノレお母さんが走って行ってジチさんに久しぶりと言っている。


「ノレルお母さん、私手伝わないと。一番年下だし」

「千歳がやるなら私もやる。一緒に準備をしましょう」


そう言って私は手伝い始める。


「おや、ノレルと千歳だ!」

「ジチさん!色々ありがとうございました!!」


「あらあら、嬉しいなぁ。お姉さんも千歳にありがとう!」

「ジチ」


「ノレルは大好きな千歳と一緒に居れて嬉しそうだね」

「ええ、何を手伝う?」


「じゃあ食べ物をテーブルに並べてよ。今日のご馳走は凄いよ!お姉さんの本気とメリシアのお父さんの本気ご飯だよ!」

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