第238話 何か絡んでくる連中って頭悪いんだよ。

「神様、トキタマは僕の肩にいてもいい?」

「ああ、構わないよ」


「じゃあトキタマ、久しぶりに僕の戦いに付き合ってよ」

「はいですー!」

そう言って肩に乗ったトキタマ君をニコニコと眺める。


「それで、僕の相手は誰?」

王様が周りを見ている。


「ヘイ!あんまり強そうじゃないゼ!ガッカリだぜ小娘!」

人脈の神がクネクネと動きながら王様をバカにしている。


「チトセ?コイツ何?」

「軽薄の神だって」


「なるほど、確かに」

「NO!オレは人脈の神!オレのフレンズは世界中に居るぜ!」


そうしていると戦神とパラディス君が王様の前に出てくる。

「お前がツワモノか?俺は戦神様の世界の勇者パラディスだ」


「チトセ、コイツが敵?」

「うん、その横に居るのが戦神、さっき私に秒殺されてたよ」


「されていない!ちょっと油断しただけだ」と情けない反論をする戦神を私は無視する。


「ふーん、あの力はどうだった?」

「バッチリ、遠慮しても回復されるまで動かなかったよ」


「へぇ、僕にもチャンスが来ないかな?」

「多分あると思うよ。何か絡んでくる連中って頭悪いんだよ。引き際とか無理そうなの」

本当に、しつこそうで困る。やりすぎて恨みを買うのも、やらなすぎて舐められるのも困る。ギリギリが難しい。


「聞いているのか!!?」

パラディス君が無視をされた事に怒っている。


「たいした余裕だなツワモノ。

だがどう見てもお前は歳だ。

あれか?昔は強かったと言う奴か?

俺もみくびられたものだ…。

戦神様、残念です」

ガッカリしながら戦神を見るパラディス君。先日国語で習った井の中の蛙と言う言葉を教えてあげたい。


「そうだな。さも人の身で神界に来たような口ぶりだったがどうせそれもハッタリだろう?

そこの男神と女神が隠れて力を行使したに違いない。

だが構わぬ。情けは無用だ殺してしまえ」

何か小馬鹿にされているのもわかるが何でだろう、そんなにムカつかない。

でも王様は煽るだけ煽ってくれるだろう。



「ふん、自分の尺度が全ての基準だと思っているんだね。情けない。トキタマ、こんな奴らと同じ世界でよく耐えられるね?」

「まあ、慣れちゃえばです。

面倒な時は鳥のフリをして無視しちゃいます」


「僕の城に住みなよ。みんなトキタマを大歓迎だよ」

「嬉しいですけど神様を1人にしたくないです」


「そっか…残念だけど今はいいや」

そう言って王様は戦神とパラディス君を見る。


「僕は僕の神様の世界から自分の力でここに来たよ。

信じなくてもいいさ、でもさ…これだけは言えるよ。

お前には出来ない。僕には出来た。

それだけだろ?」


煽る煽る。

いいぞ王様!もっとやれ!


パラディス君は顔を真っ赤にして睨んでいる。

でも私ですら怖くないからなぁ、きっと王様なんて前座の前座くらいにしか思ってないよ。


「戦神様!早く合図をください!」

「焦るな、これも卑劣な奴の作戦かも知れぬぞ?」


「おお、危うく術中にハマるところでした」

「ふふ、お前は最強の勇者だ。これくらいの事に惑わされてはならぬぞ?

小娘よ、合図はお前にくれてやる。好きな時に始めるが良い」


戦神はたいした余裕だな。

脳の病気で私に負けた事とか忘れているのかな?


「王様?」

「いつでもいいよ」


「じゃあはじめ」

その声でパラディス君が剣を抜く。

でも王様は動かない。

動かないどころか肩に居るトキタマ君をニコニコと撫でている。


「なぜ動かない!剣を抜いたらどうだ!?

我が剣「クライフォーザムーン」はお前如き簡単に殺してしまうのだぞ!」


「やれよ?何遠慮しているんだよ?

甘いな、まったく…勇者だなんて言って期待させておいてこれか…」

王様が心底バカにした表情でパラディス君を見てガッカリする。


「バカにしてぇぇ!!必殺剣!フライミートゥザムーン!!」

そう叫んで剣から銀色の光を放つのだがパラディス君の攻撃は成功しない。

王様は紫色の光の壁でいとも簡単に受け止める。


「…やり過ぎた。ムラサキさんじゃなくて「万能の鎧」で十分じゃないか」


「バカな!我が必殺剣を…」

そう言ったパラディス君は諦められずに何度も必殺技を使うが王様には届かない。



「神様、ここでの死はどうなるの?」

「死だよ」

王様はパラディス君を無視して東さんに話しかける。


「殺していいの?」

「出来たらやめてくれないかな?

僕は無駄な人死には好きじゃない」


「優しいなぁ神様は」

そう言って王様はパラディス君の方を見る。


「気は済んだ?

壊せそうなら待ってあげるけど無理なら攻撃するよ?」


「ふざけるな!尋常の立ち会いに情けは無用!

ならば我が最終絶技デッドエンドムー…」

哀れ、パラディス君は最後まで技名を言えずに王様に滅多打ちにされている。


「どうやら僕は一歩も動かないで終わりそうだ。

ふぅ…、君はこの剣も見えないの?

最強って言われて調子に乗ったんじゃないの?」

そう言いながら光の剣の柄でガンガンにパラディス君を殴り続ける。


「ぐっ…。卑き…っ、ひ…卑怯だぞ!」

殴られながら必死に卑怯を訴えるパラディス君。


「何が?」

王様は手を止めてそんなパラディス君を見る。

もうパラディス君は涙目で見ていられない。


「技名を言う間に攻撃をするとは何事だ!卑怯だぞ!」

「なにそれ?」


「俺の世界では技名を言う間はどんな敵も黙って見ているし、かわす避けるなどの男らしくない行動もしない!」

パラディス君は目を潤ませながらで王様を睨んでいる。


「そんなの知らないよ。バカじゃないの?

……じゃあ一瞬だけ遊んでやるよ。

僕の剣が何本か見えている?見えないかな?」

多分無理だ。

わかっていて王様は煽っている。


「…」

「早撃ちだよ。今から僕は真正面から剣を出す。

受け止められるかやってみなよ」


「よし、その勝負受けてやる。

俺が完全に受け止められたら我が絶技を受けて貰う」

「ふーん、やれるといいね」


「くっ、余裕ぶりやがって。さあ撃ってみろ!」


「じゃあ、【アーティファクト】」

怠そうに言う王様からはそこそこの速さで剣が飛び出す。


「見えた!」

嬉しそうに剣を構えるパラディス君。

だが哀れ。

受け止めた剣ごと吹き飛ばされる。


「ぐはっ!?」

そして王様は容赦ない。

12本の剣を全て出して吹き飛ばされたパラディス君を空中で滅多打ちしていく。


地面に近づく事なく光の剣でお手玉のようにパラディス君を打ち上げ続ける王様。

パラディス君、大地は恋しいかい?と言いたくなる。


「やめろぉぉぉ、パラディス君が死んでしまう!」

戦神が王様に殴りかかるが王様はヒラリとかわして蹴りを入れる。


「ぐぅっ!?」

「情けは無用だったんじゃないの?

僕を殺す時は情け無用で自分の勇者にはやめろ?

何だお前、イラつくな。

痛めつけてやる」


蹴られたお腹を抑えて蹲る戦神を見下ろしてそう言う王様は悪役にしか見えない。


「舐めるな人間が!

人間如きが神に敵うと思ったか!?

先程の小娘は神の力があった為に有効打になったが貴様如き人間が神に歯向かうなど言語道断!」


そう言って剣を抜く戦神。

「我が剣、シュレイカーのサビとなれ!」

変な汚い茶色の刀身が特徴的な剣だ。


「人間の攻撃は届かないと言っておきながら自分は攻撃するんだ。

一方的で卑怯だね」


「何とでも言え!勝てば官軍よ!!」

「そう、じゃあ僕が官軍だ」


そう言って剣を3本パラディス君に残して肉のお手玉を続けて、残りの9本を戦神に向ける。


王様が意地悪なのは9本中3本だけ少し速度を遅くしている。

そしてその3本をかわした戦神が嬉しそうに王様を見る。

「見えるぞ!貴様の放った3本の剣が!フハハハハ、人の身では良くやるがまだまだよ!万策尽きたか!?早くしないと死んでしまうぞ?」



「お父さん、哀れだからもう倒しちゃってください」

「うん。そうするよ【アーティファクト】!」


次の瞬間、残りの6本が滅多打ちを始める。

「ギャァァァーッ」と言う絶叫とともに戦神はボロ雑巾に逆戻りした。


「おまけだよ」

そう言ってボロ雑巾になったパラディス君も戦神の上に落とされる。



「ジョマ」

「言わないで千歳様」


「こんなバカの世界にまで手を出すなんて余程傷付いておかしくなっていたんだね」

「恥ずかしい。言わないでって言ったのに…自己嫌悪です」


ジョマは真っ赤になって俯いてしまった。

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